消えた怪談

かたや、テレビの特番で芸人崩れが海外ロケをしながら「ゾルタクスなんちゃら」「なんちゃらメイソン」などといった脅威を語り、いかにも俺は人類に対して警鐘を鳴らしてますよと言いたげな話。

かたや「人面犬」「ターボババア」「死体洗いのバイト」などといった、怖くもどこか可笑しい奇怪な噂話。

「都市伝説」と聞いて真っ先に思い浮かぶのはどちらだろうか。私は断然、後者だ。

テレビ越しの芸能人から一方的に聞かされる、台本通りで既に完成された小難しい話よりも「友達の友達から聴いたんだけど…」などといった前置きから口頭で伝わり、人から人へ伝播されていく中で尾ヒレが付いたりディティールが変わったりしていく変な話の方が「都市伝説」と呼ぶに相応しいと思う。

しかし時代の変化によって所謂「やりすぎの方の都市伝説」が台頭し「純粋な都市伝説」は急速に廃れた。そりゃそうだ、今「マク●ナルドのハンバーガーってミミズでできてるんだぜ」などと言っても「そんなわけあるかい」で終わる。現代のような情報化社会において、もはやそういった類の話は「古い」のだ。
Googleの検索バーに「都市伝説」と打ち込んでも同様で、出てくるのはやはりテレビ番組の方ばかりだ。こうした「コンテンツの上書き」によって、インターネット上から完全に消失した怪談も少なくないと思う。
私が今から書く話も、恐らくその内の一つだ。

二十数年前、まだ人類がガラケーをポチポチしながら、docomoならiモード、auならEZWebでインターネットを閲覧していた頃。
小さな都市伝説まとめ掲示板で目にしたその怪談は、私に強烈な印象を与えた。その原文をもう一度読み返そうと定期的に関連ワードで検索をかけているが、今日まで見つけられていない。

なので私が、恐縮ながらその怪談をここへ書き残しておこうと思う。

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