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伊藤詩織さんと山口敬之氏の控訴審判決文を読んで。判決は伊藤氏には「諸刃の剣」か。

双方上告。泥沼裁判か、棄却か。


2022年1月25日に降された伊藤詩織さん(32)と山口敬之氏(55)の控訴審判決。前述したように、双方に支払いが命じられました。

これを不服とした伊藤さんが今月4日に上告、山口氏も7日に上告、性暴力を巡っての裁判は双方上告審となりました。(上告は高裁の判決を不服として最高裁に訴え出る事)東京地裁(一審)に続き、東京高裁の控訴審(二審)そして東京最高裁判所(三審)と三審制の順序を踏み、二人の争いは最終ステージに移りました。

伊藤さんは「山口氏にデートレイプドラッグを盛られた、(確証は得られなかった)胸に血が滲むほどの被害(具体的な描写はなし)、膝に損傷を受ける(カルテの時系列に難あり)など、相当の被害を受けた」と著書『BlackBox』で告発していますが、デートレイプドラッグを盛られた可能性を書いた部分を高等裁判所は山口氏の名誉を毀損したとして55万円の支払いを命じました。伊藤氏はそれを不服として上告しました。

一方で山口氏は控訴審判決の「伊藤さんと同意がないのに行為に及んだ事と山口氏の行為で受けた伊藤さんの怪我の治療費など合わせて332万円の支払い」を命じられたことを不服としての上告です。最高裁で双方が棄却されたら高裁の判決で確定します。

最高裁弁論の可能性は

最高裁は法律審で事実関係をめぐっては新たに審理されないという意見を見かけますが、最近、最高裁弁論が開かれたケースがあります。乳腺医である男性医師が術後の女性患者にわいせつな行為を働いたとして逮捕起訴された事件です。二審で懲役2年の有罪判決が出され、医師側が上告していました。『乳腺外科医の準強制わいせつ事件で最高裁弁論、弁護側改めて無罪主張「検察の主張は大胆」』 この記事には

最高裁は2審の判断を変更する場合に弁論を開くことが多いため、男性に懲役2年の逆転有罪判決を言い渡した2審・東京高裁判決が見直される可能性がある。

とありますので、二審がひっくり返る可能性もあります。山口さんの支援者はまだまだ望みがありますし、伊藤さんもドラッグ疑惑記載の賠償命令が取り消される可能性もあり得るという訳です。

判決文を読むと時系列がくっきりと浮かび上がる。

🔸判決文は山口敬之さんの「日本メルマガ」2022年1月28日号に掲載されいますので、興味ある方は是非購読なさってください。自宅でゆっくり判決文が読めるというのは、なかなか出来ない事だと思いますので。ひと月千円分でバックナンバーも読めますので、これはお得な情報だと思います。

伊藤詩織さんの山口氏とのトラブル、性被害の実態を描いた『BlackBox』の特徴はとにかく時系列が分かり辛い。「いつ」「どこで」「だれが」「何を」「なぜ」「どのように」というような「5W1H」の読者に情報を提供する際の文章のセオリー、マナーが全くなってないんですね。

この本の帯には『レイプされたジャーナリスト』の『圧倒的ノンフィクション!』と書いてあるので、ノンフィクションだと思うのですが、読みきっても彼女が結局何をされたのか、全くわからない。(あくまでも著者の疑惑を読者に提供する本、というイメージですね)

しかし、判決文には二人がどのような行動を行ったか、二人がどうやりとりし、どう事件化していったか、如実にわかるようになっています。私は判決文を読んで初めて事件の全容が理解できました。

判決文内容は、メルマガの著作権の一部であるため、引用や転載ができませんが(自分で裁判所に行き、自分で謄写すればOKです)それでも、この裁判のおおまかな動きを分かりやすく伝える事が出来るかも知れませんので、あくまで私の主観ですが大雑把な感想を書いてみました。

証拠なき賠償命令・裁判官の道徳観に支配されている

簡単に言うと、女性が性被害を本で告発したんだからそれは本当だろう、録音や写真がなくてもメールで本人に訴え、友人にも話したんだから本当だろう、と言う恐ろしいものです。山口氏が就職を斡旋する立場で起きたとの大観があります。そうすると、山口氏の立場は弱い。メールで残っている内容からはそう推認できるからです。

私が全文読んで感じたのは「裁判官は強い道徳観に支配されて、山口氏に対する処罰感情が尋常ではない」ということです。伊藤さんと山口さんが合意だった可能性を示す産婦人科医が書いたカルテも「それは事実だけど伊藤さんが混乱してたんだよね?だから間違った時間を言っちゃったの!ん〜伊藤さんかわいそうね〜」みたいな感じでした。(思った事実を書きました)

問責判決文

婚約不履行や不倫の賠償裁判ではないのになぁ...と。伊藤さんと山口氏の間で何が起こったのか。どちらが嘘を言って相手を貶めているのか?

そういうシンプルな争いかと、思っていましたが判決文を読むと、「お前は不道徳だからけしからん」という「押しの強さ」で判決文が書かれていました。

事件の真相解明ではなく、裁判官の倫理観による独自の解釈で判決文が構成されていました。(これは憲法違反ではないか、という箇所が多数確認できます、民事は民事訴訟法に則って証拠と共に審理されるべきですが、この裁判官たちは山口氏を自身の倫理観で私刑にしている、と思いました)


K検事の録音を裁判官たちはどう見たか

高裁で伊藤さん側から最後に出された検察官K氏とのやりとりの録音には「証拠がないから不起訴にするしかない」というものや、成田空港で山口氏を待ち構える刑事たちに逮捕中止命令が下りた、というのは創作なのではないか、と思わせるものがあります。(つまり、検事が証拠関係で難しいとされる事件の逮捕状を、高輪署は伊藤さんの証言のみで取ったことになります)

しかし裁判官たちはそれよりもK氏の「あなたの夢に付け込んで(山口氏はけしからん)」という言葉を重要視したようです。(私たちもそう思います)という頷きが見えてくる。

この裁判は『BlackBox』を教本にしているんだなぁ、と残念な気持ちになりました。そう、誰かと揉めたら出版権を持ってる方が一方的にメールを送って証拠を残し、それを元に「だと思うが〜あなたはどう思うだろうか」とか「確証は得られないが疑惑は残った」とか本に書いて人の名誉を毀損して悪人扱いしても裁判で勝てるし、例え賠償命令が出ても55万。

書籍を売った方の勝ちになります。しかも伊藤さんは大々的な記者会見を開き、世論喚起して裁判費用も募金していますから、裁判費用も0円です。

「政権に忖度されて握りつぶされた事件」という額縁がある

事件当時、警視庁の刑事部長である中村格氏が既に出ていた山口氏への逮捕状を握りつぶした、成田空港で高輪署の刑事たちが逮捕を阻まれたと、そういう噂話が流布しています。この山口氏と伊藤さんの事件にはそういう額縁がついています。何度訂正しても、もう完全に事実だと思い込んでいる人たちがいるんですね。薬漬けと同じです。

なのでこの裁判で山口氏に有利な判決を出すと自動的に「ついに司法も政権に忖度するようになった!日本の司法は終わりだ!」みたいな批評が必ずついて回ります。

私が裁判官なら死んでも山口氏に有利な判決を出したくないですね。「権力者の番犬裁判官」なんて張り紙を裁判所の正門に名前付きで張り出されそうですからね。 

そういうところで、もうこの裁判はガチガチに公正じゃないんですよ。審判の女神は目隠しの横から世論をそっと見ている。

民事と刑事では反転する「タクシー運転手の証言」

それで、すごく驚いたのが、刑事事件では意識がある証拠とされたタクシー運転手の証言伊藤さんが「近くの駅で降ろしてください」と言ったと言うが、民事では不同意の証拠として裁判官が指摘しています。

民事と刑事では同じ証拠でも判定が逆さまになるのだな、と判決文を読んで司法の仕組みの複雑さを理解しました。(ただし、このタクシー運転手の証言は信ぴょう性に欠けるよ、とも書いてあります)

この判決文から学ぶ事とは。できれば、一般人は事件事故に巻き込まれないように、普段から気をつけたいものです。相手に凄腕の弁護士がついたら、いつの間にか自分が極悪人になって、司法ではなく、社会から制裁を受ける日が来るかもしれません。

「諸刃の剣」プライバシー侵害の免責

伊藤さんの主張はほぼ事実で、だから山口氏の名誉が毀損されていると、そう裁判官たちは考えているようで、いささか乱暴だな、と思いました。山口氏は同意だったと主張しているんですから。それを一切無視している。

それから、伊藤氏の公表行為による山口氏のプライバシー侵害の被害はデートレイプドラッグの公表行為を除いて他の部分は「全体として社会一般の正当な関心ごと」であるから免責される、というものです、が。

これを認めてしまうとですよ、今度は伊藤氏にも同じことを当てはめることができます。すなわち、彼女はタイムズ紙の「世界に影響を与える100人」に選ばれた有名人であり、彼女の一挙手一投足が社会の関心事といえます。彼女の暴かれたくない過去など(それがあるかわかりませんが)これからどんなに追及されてもそれが事実の摘示なら「全体として社会一般の正当な関心ごと」であるとしてプライバシー侵害の被害は認められない、ということになります。

この判決、彼女にとっては「諸刃の剣」になるのではないかな、と判決文を読み終わってから思いました。

伊藤氏の隠された履歴書の謎

ところで、裁判所で閲覧制限前に乙号証(山口氏側が地裁で出した証拠書類)で出された伊藤さんの履歴書を見た人から情報提供があり、それをtwittterで公開したところ、話題になりましたので、伊藤さんの履歴の一部を書き出しておきます。大学は入学から2年で卒業になってますし、『BlackBox』の(33Pから34P)にかけて書かれた行動時系列がちょっとずつ合わないんですよ。スペインに語学留学したというのも怪しい。(履歴には書かれていませんでした)

履歴の時系列〜                                                                                                       🔷2010年短大卒業                                                                                           🔷2010年7月ベルリン自由大学国際関係について学ぶ                          🔷2013年1月マリーモント・マンハッタン大学入学                              🔷2014年1月ロレンツォ・メディチ一学期留            

🔷2015年5月マリーモント・マンハッタン大学(卒業予定)です。

さらに伊藤さんが働いていたピアノバーについても情報提供ありましたので、いずれまた...(イタリア・フィレンツェ留学について、「ロレンツォ・メディチ」を大学、と表記してしまいましたが、Twitterでガットネーロさんから御指摘ありましたが、「ロレンツォ・メディチ」は大学ではなかったです。こちらで訂正します)






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