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伊藤詩織さんと山口敬之さんの裁判が終結。「裁判所は伊藤さんの記者能力を低く評価」

二審の判決が確定 



2022年7月7月、最高裁第一小法廷(山口厚裁判長)は伊藤詩織さん(33)と山口敬之さん(56)の双方から出されていた上告を退け、二審の東京高等裁判所の判決が確定しました。

双方に支払いを命じる判決

同年1月25日に東京高等裁判所は被控訴人の伊藤さんの訴え「山口敬之さんが同意なく性行為に及んだ」事を認定して治療費含む332万円の賠償、控訴人である山口さんの訴え「行為は同意があり、伊藤さんの訴えは虚偽である」とした名誉毀損、営業毀損などの訴えは「デートレイプドラッグ」を用いた、とする箇所のみ「真実相当性がない」として伊藤さんに55万円の支払いを命じていました。

世の中を騒がせた「性被害裁判」は双方に賠償金の支払いを命じる形で終結しました。


無理矢理ホテルに引きずり込まれた、は否定された?

二審の判決文では、山口さんが伊藤さんを酩酊状態のままホテルに宿泊させたのはやむ得ないとして、伊藤さんの不利益ではないとしています。つまり判決文は山口さんが伊藤さんを宿泊先に連れていった事情を認め、なおかつ、伊藤さんが山口さんに自宅が原宿だと告げていることを否定しています。(※山口敬之氏のメルマガ「日本メルマガ」の1月28日号に判決文が掲載されていますので、興味がある方は購読をお勧めします。一回千円で裁判所までいかなくとも、判決文が読めるというのはかなりお得な情報ですよ。)

裁判所は二人の嘘を指摘している

判決文p.50には中々興味深いことが書いてあります。
伊藤さんは山口さんに原宿に住んでいる事を告げていた(だから山口さんは伊藤さんをタクシーで恵比寿から原宿まで送り届ければよかった、ホテルまで連れて行く必要はなかった)と主張するも、それを裏付ける証拠は存在しないし、山口さんも原宿に伊藤さんが住んでいた事は知らなかったとこれを否定しているので、伊藤さんの主張を取り入れることはできないとしています。なので裁判所は山口さんが伊藤さんを自身が宿泊するホテルまで介抱のために連れて行ったのは仕方ないと判断しています。

すると、伊藤さんが山口さんに原宿の住所を知られたので引越しを余儀なくされた(『BlackBox 』p.158)というのも、信憑性がなくなります。事件後、原宿の超高級マンション「コープオリンピア」から引っ越した事情はなんだったのでしょうか。ちなみにですが、伊藤さんの事件当時の雇用形態はロイターのインターン、無給の見習いでした。以下、『BlackBox 』を『BB』と表記します。

デートレイプドラッグは「真実と信ずるについて相当の理由があるということはできない」と55万円の支払い

判決文p.88にはデートレイプドラッグを山口さんから服用させられた、と『BB』で主張したことに関して、「真実と信ずるについて相当の理由があるということはできない」と彼女の主張を切り捨てました。要は彼女の思い込みであるというような結論がつけられています。

山口さんの供述、主張は変遷が見られるとして一審は山口さんのみに、支払いを命じましたが、二審で裁判所は伊藤さんの「嘘」についても慎重に判決文の中で浮かび上がらせ、はっきりと指摘しています。

再三、このブログでも書いていますが、事件当夜の居酒屋「とよかつ」では「伊藤さんが自分から飲んだ」等の証言があり、私が「とよかつ」の女将に直接話を聞いたところ、「伊藤さんが山口さんに仕掛けていたのは周りも気がついていたの」や「香水もきついのつけて来てね…」と『BB』に書いていたこととは、真逆の話がいくらでも出てきます。(録音あり)

ま、伊藤さんは伊藤さんで「勝負」を挑んできたのかな、と思わせる女将の証言でした。(だからと言って、何をされてもいいとは思いませんが、実際、現場を歩くと、伊藤さんの印象は変わっていきます)

なので、居酒屋についたら「二人だったので少々驚いた」という大勢で就職の話をするための飲み会だと思っていた、というような伊藤さんの主張は首をかしげるものです。伊藤さんは就職のために山口さんに「売り込み」をかけたんだな、と言うのが私の取材の印象です。(ちなみに、「とよかつ」の串焼きはかなり大きめです。スーパーなどのパック売りの串焼きの二倍はあります。これを伊藤さんは5本食べた、と証言していますから、女性ならお腹いっぱいでしょう。空きっ腹にお酒を飲まされたとかの主張は通らないと思います。ですし、食べたから吐いたんです。)

資料1「とよかつ 女将聴取書」(1件目の飲食店)
資料2「喜一 聴取書」    (2件目の飲食店)

この裁判、デートレイプドラッグを盛られた、という話を抜くと、お互いの欲望が交差した単なる酔っ払いの揉め事になります。いやいや、逮捕状を握りつぶされた、社会的な事件だと、あなたはそう思うかもしれない。しかし、以上のような状態で、刑事事件になり得るのでしょうか。ドラッグも証拠がない。

山口さんが無理矢理に飲ませたわけでもない。あくまでも裁判所の認定として、山口さんが伊藤さんを路上に放置できず、宿泊先のホテルに連れていった事情を認めているので、「ホテルの完全密室の室内にいた男女に何が起きたか」しか追及できなくります。しかも双方の主張に食い違いがある。この事件はどちらも録音も映像も残していない。

新潮の偏向報道

これで山口さんをレイプ犯として立件できるのでしょうか。逮捕状(出たのか定かではない)の執行停止を指示した中村格氏(当時の警視庁刑事部長)の判断ですが、中村氏は『週刊新潮』の取材に対して、政権からの指示で捜査方針を変えた事や、警視庁が独自判断して山口さんを逮捕しないようにした事は一切否定しています。ところが、なぜか一部のメディアは「中村格氏が政権に忖度して逮捕状の握りつぶしを認めた!」と報道しています。(新潮社は山口さんから訴えられて係争中)

これはひどい偏向報道です。そんな陰謀を警察が本当に行なっていたのなら、警視庁の刑事部長たるものが、軽々しく立ち話で週刊誌の記者に真相を話しますか。警察の重大な秘密をバラすわけですよね。ちょっと、そこをよく考えてみてください。当時の中村格氏の身分を考えると、この週刊新潮のスクープ自体が不自然なんです。

そもそも、伊藤さん自身、『BB』p.154に捜査員A氏が警視庁捜査一課に相談、報告をしていると書いてありますから、刑事事件の捜査に問題が生じたら、警視庁の刑事部長である中村格氏が捜査指揮を出すのは当たり前ですよね。

警視庁(東京都主管轄)→刑事部→捜査一課→高輪署刑事課(所轄)という指揮系統を考えて見てください。

伊藤さんはちゃんと警視庁捜査一課が「主管轄」だと『BB』に書いています。だから誰が高輪署の逮捕を止めたか?という問いは警視庁の刑事部のトップである刑事部長の中村格氏、だというのは、誰でも簡単にわかるはずなんです。(ちなみに、警視庁の最高責任者は東京都知事です)

しかしこの辺りのページを読んでいるとあたかも警察内部で大きな不正が進行してるようなイメージ操作があります。(誰が逮捕状を止めたのか?大きな謎!みたいな)『BB』には警察組織の成り立ちを理解していない人は簡単に引っかかってしまうトリックが隠されています。現場の刑事らは最初から中村格氏の指示を仰ぎながら職務を遂行してい他のです。山口氏の逮捕を誰が止めたか?最初からわかってるのに大きな謎みたいなことを伊藤さんは書いています。

真実に蓋はない

真実に蓋はできない。 私は事実を曲げる人が一番嫌いです。
伊藤さんはこんな風に裁判が終わるまで声をあげ続けました。そんな中、裁判所が伊藤さんの不法行為を認めたことはどう思うのでしょうか。証拠関係がなくても「私の思う真実は常に正しい」と主張するのなら記者、というか社会人としての資質を疑います。「本当かどうか」わからないことは言いふらしたり、まして書籍にして販売してはいけないと言う当たり前の社会常識が欠如しているからです。

判決文はデートレイプドラッグに関して「使用されたと思ったことが真実だと(どんな風に)思い至ったのかは明らかでない」として不法行為が成立するとしています。(判決文p.88)

真実に蓋はできないのではななく、真実に蓋がないので、伊藤さんの不法行為も明らかになったのです。裁判所がそれを証明しました。

伊藤さんはこの裁判を募金で行なっています。公益性があるからと。確かに酔った女性をホテルに連れていって性行為をしたら、賠償金が発生する、という判例は残りました。
これは多分、かなりいいこと...とは私は思います。
でもその山口さんが犯罪者であるかのような、伊藤さんが一方的な被害者であるかのような内容を大々的に宣伝して、公益性を唄い裁判の募金を集めたのですから、伊藤さんは一部敗訴したことについて、説明責任が発生していると思います。

裁判所は伊藤さんの能力を低く評価。

また、判決文p.91にも面白いことが書いてありました。伊藤さんは今まで世界60カ国以上取材に行き、経験豊富なジャーナリストだという触れ込みでした。

しかし、裁判所は山口さんに高額の賠償金を命じましたが、伊藤さんにも記者としての能力に厳しい評価を下しているのです。

判決文p.91には伊藤さんが「ジャーナリストを目指していたとはいえ、さほどの知識や経験を有していたとは認められない」「一般人と比べて犯罪捜査等に関する知識を豊富に有していたとは認められないし(以下略)」なとど書いてあります。

「一般人と比べて犯罪捜査等に関する知識を豊富に有していたとは認められない」

つまり、伊藤さんは事件当時、警察の知識や犯罪捜査に関して、知識は一般人以下だと指摘しているのです。なので、山口さんがTBSの大物記者であることを理由に被害届を拒まれた等の記述は事実と認めることはできない〜というような事を書いています。

「真実はここにある」「圧倒的ノンフィクション」と帯書きされた伊藤さんの本は「犯罪捜査に関しては一般人以下の知識の、ジャーナリストを目指してるとはいえ、知識や経験を豊富に有していたとは認められない、女性が当時の体験をもとに書いた本」と、裁判所が認定したことになります。私の読書感想もあながちハズレではなかった。(伊藤詩織さんのブラックボックスを読んで

この事件で準強姦の立証の困難さを指摘する裁判官

判決文91p.には、「伊藤さんが高輪署は被害届を拒んでいた旨の記載があるが元々準強姦被疑事件は、立証に困難が伴う」とあり、準強姦事件の立件は難しい事を指摘、また伊藤さんが強度に酩酊し、共に夜を過ごした経緯を示して「これがより立証の困難さを伺わせる。」とこの事件の性質を分析しています。

同項「被控訴人において強度に酩酊し」と伊藤さんの状態を「自ら飲んだ酔っぱらい」だとして、「二人が同じ部屋で夜を過ごした間に起きた出来事」であるので、準強姦事件の立証は難しい、だから高輪署は当初、被害届の受理を拒んでいたのだ、と当たり前のことを書いています。

そうですよね、夜道で襲われたり、自分のマンションに忍び込んで来られたり、というような強姦事件とは質が異なります。刃物を突きつけられてホテルに連れて行かれたわけでもない。伊藤さん自らタクシーに乗り込み、二人で並んで歩いて部屋に入った。

高輪署の捜査員が当初、「よくある話」と伊藤さんの被害届を受け取らなかったのは、上記の理由からでしょう。それを伊藤さんはあたかも、相手がマスコミの大物であるから、とか安倍総理に近い人物であるからだとか、私はそいういう権力に告発を阻まれた性被害者だ、との物語を『BB』の中で作り上げていったのです。

高裁がこの事件は刑事事件として立証が難しいと指摘しているのですから、「マスコミ大物相手に訴えるとあなたの努力が水の泡になる」と高輪警察が権力に忖度して被害届を拒んだ、という『BB』の記述は本当なのでしょうか。録音があれば出して欲しいですし、出せなければ、創作を強く疑います。

『BB』p.79相手は有名で地位もある人だし、あなたも同じ業界で働いているんでしょ。この先この業界で働けなくなるかもしれない。今まで努力してきた君の人生が水の泡になる。

口の軽い男たち

判決文から読み取るこの事件の概要は、強度に飲みすぎた伊藤さんが山口さんの宿泊するホテルに行き、そこで性行為が行われたが、それは伊藤さんにとって同意ではなかったので、賠償金が発生した。そして伊藤さんが山口さんから意識を失わせる目的で「デートレイプドラッグ」を服用させられた、という記述は「真実相当性がない」として山口さんへ賠償金を払うよう命じた。伊藤さんは当時、犯罪捜査に関する知識が無かったので、警察が忖度した等の誤解が多い。というものです。つまり、無知ゆえの誤解なので、伊藤さんの公表行為に不法行為は認められない...など。

この事件、上記したように、デートレイプドラッグがなければ、単なる酔っ払いの揉め事です。これで準強姦容疑で逮捕状が執行されて山口さんが逮捕拘留されていたら、警視庁としてまずいことに...

中村格氏は新潮の取材に対して「事件の中身を見ていただければ...」(私の判断は間違っていない)と答えていましたから、それが全てだと思います。中村氏は政権に忖度して逮捕状の執行を停止したのではなく、国賠回避の為に組織防衛として捜査指揮したのだと思います。

しかし、ですよ、厳密に言えば、新潮社は警視庁記者クラブ所属ではないのですから、本来なら取材に答えなくてもいい事をペラペラと喋った中村氏も見識を疑います。これで山口さんへの疑いは決定的になった。逮捕予定を被害者に漏らすA捜査員といい、口の軽い男が多くなった...そんな感想を個人的に持ちました。(中村氏は安倍晋三氏銃撃事件の対応を見ても、仕事のできない人なんじゃないか、と思うようになりました)


中村格氏は事件の真相を話すべき

伊藤さんと山口さんの裁判は終結しました。あとはそれぞれに相手の違う名誉毀損裁判がいくつか進行しています。この裁判が終わってみて、残るのは双方への「本当のことを言っていないのではないか」という不信感、それから「性被害の逮捕状を警察幹部が握りつぶした」という警察官への不名誉な噂です。

これをこのまま放っておくと、警察に優秀な人材が集まらなくなる、警察官の志望者が減る、警察官が誇りを持って仕事ができなくなる、社会不安が増す、などの弊害が生まれ、多くの禍根を残すと思われます。

中村氏はこの後の去就が注目されていますが、私は安倍元総理銃撃事件の責任を取って潔く辞任し、あとは一般人としてこの事件の真相を明らかにしていただきたい、と切に望みます。

             

               了

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