【読感】言語の本質

私の本紹介は読書感想文ですので、タイトルの頭に【読感】とつけることにします。

『言語の本質』中公新書 今井むつみ、秋田喜美 著

オノマトペの研究から人間の言葉とはどういうものなのだろうかを探求した本です。

オノマトペとは『ゲラゲラ』とか『もぐもぐ』とか『ふわふわ』とかのコトバです。オノマトペの世界中の言語による違いや赤ちゃんがオノマトペから言葉を学んでいく過程から、人間がコトバを学ぶ基盤となっている記号設地問題いわゆる事物と記号(言葉)がつながっていることを人間の五感で感じ取れることが重要なことが述べられます。

言語学では、事物と記号は恣意的なつながりでしかなく、世界の言語で、音だけ聞いても事物と言葉の繋がりは連想できないそうです。日本語の机と英語のデスクとは音からは全く机を連想することができませんし、つくえとデスクは音として関連性はないです。

しかし、オノマトペには事物と言葉とのつながりが連想できることが多く、例えば動物の鳴き声を模写でオノマトペで表すと、犬はワンワンで犬の鳴き声から自然とワンワンは犬だと連想できます。

オノマトペと抽象的な直接指し示す物事と結びつかないオノマトペ以外の言語とは、性質が違うところと同じところがあり、著者らはオノマトペの言語性を追求して、言語の本質に迫っていきます。アイコン性とかで。

また、人間の赤ちゃんがどのように言葉の記号の複雑な体系を学んでいくかという発達心理学的な考察からも、オノマトペが基盤となっていることの重要性を述べます。幼児のコトバを習得する過程での試行錯誤での間違いは、人間の種としての高度な推論(アブダクション)と密接に関わっていて、それが動物との大きな違いを示しているとの説は非常に面白いですね。

最近、鳥類も高度な言語を駆使しているとの研究も読んだのですが、人間の論理的には過度なまでの推論好きの特性、これは脳の研究でも視覚は脳が補完していて、これが目の錯覚につながっているという理論とも関係していて、物事の因果を過度に追求する人間の性質が生存競争で有利に働き、科学を発展させてきたともいえると思いました。

面白い実験や考察が多く全ては紹介しきれませんが、赤ちゃんのコトバを学ぶ過程や日本語のオノマトペの豊かさ、コトバを学ぶ記号接地問題が、数学を学ぶことを含め、物事を学ぶこと一般に通じるのではないかなと私は思えます。

難しい概念とかを使ってなくて、わかりやすい平易な言葉で、本質を議論していて著者らには共感します。この本を読んでいると、赤ちゃんのコトバを覚える過程での、間違いとかが、高度な推論に基づくものなんだなと感動しながら、子育てできると思うので、子育て世代に読んでほしいですね。

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