甲野善紀さんの古武術に関する考えをまとめた本。
甲野先生は、現存している過去の文献から過去の武術がどのようなものだったのかを研究している。先生が構築した理論は、先生自身のこれまでの修行に裏付けがされて、実際、現在の身体用法では難しい動きもできるようになっている。
この本では、甲野先生の武道論の片鱗を見ることができた。
ただ、甲野先生の科学への考えにはあまり賛同できなかった。確かに、科学の発展によって、環境が破壊されたり、人口が増えすぎたりする問題があった。ただ、これらの問題もまた、科学によって解決できるのではないかと私は考える。
こちらの意見にはやや懐疑的である。昔は冷暖房がなくとも生きていけたかもしれないが、昔と今では暑さのレベルは全然違う。冷房がなければ熱中症で倒れる人はもっと増えるだろう。また、環境汚染で体が痛めつけられているとあるが、少なくとも日本において、健康被害が出るレベルの環境汚染はどんどん少なくなっている。加えて、体が弱くなっているとあるが、日本のスポーツ選手がどんどん海外でも活躍できるようになっていることを考えると、実際に体が弱くなっていると考えるのは疑問が残る。(ただ、甲野先生のいう身体の強さとスポーツのうまさは関係がないかもしれないが。)
科学が発展した結果、環境問題が発生したり、人が死ななくなって少子高齢化になったことが問題なのは理解できた。だが、これらのことと中学生がナイフを持って荒れたりすることや男性が女性化することがなぜつながるのかがよくわからなかった。加えて、男性の女性化がまるで悪いことのように言われているのも気になった。