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哲学ってなんだ(竹田青嗣)【書評#173】

竹田青嗣先生による子ども向けの哲学入門書。子ども向けといえども、扱っている題材が哲学なので読み進めるにつれて、どんどの難しくなる。正直、後半の議論はほとんど理解できていない。特に、竹田先生の専門の現象学は今なお発展途中の学問でもあり、難易度が高い。他の本でも現象学について勉強したことがあるが、からっきしわからない。

内容はちゃんとは理解できなかったが、竹田先生の人となりははじめて知ることが多かった。大学卒業後、フリーターを経験していたり、在日韓国人二世であることのアイデンティティに苦しんだり、子ども時代両親の仲が悪かったりなどかなり苦しい人生を送っていたらしい。しかし、それらの苦悩を哲学を通して克服していこうとする様はとても尊敬する。

 まず言いたかったことは、いきなり哲学書を読んでも理解できないのが普通だということ。だから、哲学に興味を持って読もうとしても、そのおそるべき難解、晦渋さにぶつかって、もう二度と哲学に近寄らないで終わってしまうというという恐れがあること。それでも哲学は、もし人が自分と自分の生きるということについて、切実にしっかり考えたいという気持ちをもっているなら、代えがたい貴重な宝庫だということである。

p.4

人間の「世界像」というものは必ず各人それぞれのものであり、したがってそれが「正しいか、正しくないか」が問題なのではなく、その世界像がほかならぬその人の生きるということにとって持っている「意味」こそが重要なのだ、ということを少しずつ感じ取っていた。現象学が教えるいちばん大事な核心もそういう問題にかかわっており、だからわたしはうまく現象学に「衝突」することができたのである。

p.19

(哲学の)最も重要だと思えるポイントを挙げるとつぎのようになる。
 (1)哲学は、世界の「真理」をつかむための思考法ではなく、誰もが納得できる「普遍的」な世界理解のあり方を"作り出す"ための方法である。
 (2)しかし哲学は、あくまで"自分で考える"ための方法である。
 (3)哲学はまた、最終的には、自分自身を了解し、自分と他者との関係を了解するための方法である。このかぎりで、自分の生が困難に陥ったときに役に立つ思考方法である。

pp.20-21

哲学の思考の基本方法(の中心点)
 (1)哲学の基本方法は、①物語ではなく「概念」を使う、②キーワードとして「原理」を提出する、③必ず一から再始発する、という形で要約される。
 (2)このことで哲学は、「真理」を探求する方法というより、認識の「普遍性」を作り出していく開かれた思考の方法となる。ここに哲学が科学の基礎方法であることの理由もある。
 (3)哲学には、概念を使用するという方法からくる、論理的な難問やパラドクスにつきまとわれるという固有の弱点がある。だからこの弱点をたえず意識し克服しつづけることで、はじめて哲学はその本質的思考を保ちつづけることができる。

p.66

 近代哲学は、「ほんとうの信仰とは何か」という問題を、「いかにして人間は自由たりうるか」という、より本質的な問題に書き換えた。
(…)
  市民社会の社会的「原理」のポイントをもう一度整理すると、二つのことに集約される。
 一つは政治的原理。社会の成員全員が自由な個人として対等の政治権限をもつこと。(…)
 もう一つは経済システムの原理。商品交換による自由競争を原則とし、私的所有を認めあうこと。

pp.94-95

 「リンゴが存在しているから、赤くて丸くて……が見える」という客観的事実を、「赤くて丸くて……が見えるから、リンゴの存在の確信が生じている」という「主観の確信」のあり方へと変換すること。これは、言い換えれば、われわれが持っているさまざまな「確信の条件」を確かめるような思考法なのである。現象学はあらゆることがらを、まずそんな風に自分の「意識」のうちの確信条件として考える。そしてこれが現象学的方法の要諦である。

p.106


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