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馬齢

 恥の多い生涯とまではいえないが、適当に生きてきてしまったなー、と思う。年齢はただの数字で、人間の厚みは経験がつくるのだと実感するこの頃である。馬齢を重ねるというが、かつて牧場でアルバイトしていた自分は、あの馬よりも立派に生きているのか?と思うと長い首をかしげていたのであった。

 今までの人生で出会った中で、最も長齢の人間は101歳である。施設で出会ったその方は、年齢を感じさせない元気さと健気さをもつ人であった。というか、出会った高齢者の多くは、自分の歳が曖昧だったりした。年齢はただの数字で、人間の若さは精神がつくるものだと実感したものであった。

 年輪を刻むというが、今までの人生で出会った中で、最も長齢の生き物は2000歳である。屋久島で見た高齢の杉は、整備中で根のあちこちに損傷が見え、生きながらえさせようとする介入が見て取れた。長く生きることに価値はあるのか?と思うと、首は縦にも横にも、動かない。

 後悔のない人生を!とまではいえないが、愉快に生きていたいなと思う。かつて牧場でアルバイトをしたように、好奇心をもって経験を重ねていきたい。あちこちに損傷があろうと、馬鹿みたいだったなー、と笑って亡くなりたいものである。

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