サイン・コサイン・タンジェント、どこで使うの?

『橋下氏は乙武氏の提案を受け「大いにありだ。今の教員免許が必要な技量を測っているものなのかを問い直すことが必要だ。加えて、そのための教育や試験の中身はどうなんだということを見なければいけない。たとえば英語の先生の免許だっておかしいと思う。"This is a pen"なんて、日常生活で絶対使わない。最低限、学ばなきゃいけないことは見えてきていると思うので、それ意外のことは選択制でいいと思う。だって元素記号やサイン・コサイン・タンジェント、どこで使うの?使ったためしがない。勉強のできる人たちは"そういうのも教養だ"というが、今はインターネットで色々なことは調べられる」と指摘。』
https://abematimes.com/posts/5496054

…では、使ってみます。三角関数3つの中で比較的出番が少ないタンジェントを。
美術館の壁に大きな絵画を飾ることになりました。目線より高い位置に展示します。どのくらいの距離から見たらいちばんよく見えるでしょうか?
遠かったらもちろん見えにくい、近づいても見上げる状態になってやはり見えにくい。

y軸が壁、y軸上の線分ABのところに飾ってある絵画。
x軸が目線。点Pのところから見ます。
∠APB = θ とおきます。この角度θが最大になるような点Pの座標を求めます。
A(0,a) , B(0,b) , P(x,0) (0<a<b , x>0) と設定します。
θは鋭角なので、θが最大になるのは tanθ が最大になるときです。

∠BPO = β、∠APO = α とおくと θ = β - α です。
ここで、tanβ = b / x , tanα = a / x です。
tanの加法定理を用いて

tanθ = tan (β - α) = (tanβ - tanα) / (1 + tanβ * tanα)
= { (b - a) x } / (x^2 + ab)

この値を最小にする正の値 x を求めます。
微分でもよいですが…

tanθ = (b - a) / {x + (ab/x) }

と変形、相加平均と相乗平均の大小関係より

(1/2) * {x + (ab/x) } ≧ √{x * (ab/x)}
x + (ab/x) ≧ 2 √(ab)
(等号は x = √(ab) のとき成立)

よって tanθ を最大にする x の値は √(ab)となり、このとき角度θの大きさも最大になることがわかります。
たとえば a = 1 , b = 4 (目線より1メートル高い位置に高さ3メートルの絵画を飾る) とき、もっとも見やすい距離 x は2メートルと計算されます。

たとえば、車道に書いてある「止まれ」などの警告の文字。歩行者からみると縦長に見えますが、車を運転している高い目線から見たときに程よく収まるように描かれています。図を反時計まわりに90度回転させて、y軸を地面(車道)、x軸を運転者の目線とみなしてください。


…で、けっきょく、サイン・コサイン・タンジェントは必要なのかどうか。
べつに全員が知っている必要はないと思います。
必要になった際にそういう知識を手に入れられる環境と、その情報が正しいかどうかを判断できる能力があればいいと思います。
わからないところはお互いに尋ねて教えあったらいいじゃん。

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