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轍(わだち)

僕を掴んで
抱きしめた君の
あまりに細い指

その次の水曜日
この地上を去った

あの時のあなたは
最期の別れを
全身にこめて僕を
抱きしめたんだろ

君のいなくなった部屋
カーテンは音も無く
窓の光を容易に迎え入れ
忘れもののような
植物たちは
重い息をする

何故…

運命や
宿命が
人の命を左右して
僕たちが
終わりを迎えなければならなかったの?

だけど僕には
止めることができず
君は力尽きて
消えてしまった

不治の病を
恨んでみても
血を吐いて
つらい思いをする君も
つら過ぎて

ただ僕が
その時
完全に無力で
役に立てずに
立ち尽くすしか無かったことも

最期の日
じゃあ 行ってくるねって
笑う君を
受け止めることしかできずに
終わらなければ
終わらなかったことも…

神様
いつかもう一度
彼女に
会うことが出来る日
僕は
死なない体を分つ
完全さを
要求します
そうすることに必要な
どんな条件も のんで



遠い時
時間という隔たりが
僕の心の
轍になり
悲しみの
苦しみの
逃げ場や
やり場の無い
迷路の

どうしても
新しい道を
見出せずにいる
バカな僕の
愚かな心は
君を慕ってる


誰か
もっと強力な車輪と
跡形も無くなる
雹(ひょう)を降らせてくれないか


この道は
孤独な道

またそんな冬が来る



2023/12/15teo


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