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大学がくれる単位の正体[学生FD入門講座Ⅲ]

〇こんなことを聞いたことがありませんか?〇 

「諸君!」

「大学の授業というのは、予習・復習が前提である」

「1時間の講義に、1時間の予習と1時間の復習をして、初めて1単位なのである」

「だから、時間外にきちんと勉強しなさい」

 こんなこと、大学の先生に言われたことはないですか?

今回の記事は、簡単にいうとこれがどういうことかの解説です。

 
〇大学設置基準を見てみよう〇


最初に前提として、上記の予習・復習なんとかかんとかという発言の根拠は、昭和31年に出され、最近まで改定が続いている「文部科学省令第28号」にあるのです。

そこには、こんな風に書かれています。

「一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成する」

多くの大学では、90分の講義を15回受けると2単位という計算システムでカリキュラムが組まれていると思います。

さて、省令における「1時間」は、現実には45分と解釈されて運用されることが少なくありません。

つまり、90分という時間は「2時間」にあたります。

では、ここから計算です。

設置基準に従えば、2単位を得るには90時間の学修が必要のはずです。

しかし、「2時間(実際は90分)」の講義15回では30時間にしかなりません。

あと、60時間必要になります。

この60時間こそが、先生方のいう予習と復習の正体です。

〇ただ、私が思うに……〇


 ただ、私が思うに、大学設置基準をもって授業と同じ時間予習と復習をしなさいというのは、少々ずれて見えるのです。

第一に、「一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成する」という文言は、一見学生に勉強しろと言っているようで、これは学生の行動ではなく、単位のサイズを定めた文言であるためです(学修することを否定しているわけではないですよ?)。

学生の立場から言い換えれば、単位を設定する基準が大学にある以上、大学が求めるレベルを突破することができれば、学修時間は重要な意味を持たないという意味です。

確かに学修時間がある程度必要であることは自明です。

しかし、目的は学修時間を長くすることではなく、目指したレベルに個々の学生が達することだと思いませんでしょうか?

第二に、きちんと1単位45時間学修すると、食事と睡眠以外、ほとんどなにもできないほど忙しくなる場合があることです。

確かに現在、キャップ制(上限単位制)を設けて、これ以上は履修してはいけない!と縛りをかけて、時間外の学修を促している大学が増えていることも事実です。

ただし、そんな制度を設けることが現状ではかなり難しい大学もあります。

いい例が教育学部や医学部、保健学部といった資格を出すタイプの大学です。

このタイプの大学で1単位45時間を守ると、計算上、食事や睡眠まで持っていかれます(バイトやボランティアができないというレベルではありません)。

さらに、資格を出すタイプの大学ではなく、加えてもしキャップ制があったとしても、平日1日の授業が平均3時間未満の大学などあるでしょうか?

言いたいことはこうです。

よく、「学生の仕事は学ぶことである」と言います。

今回はこの、詠み人知らずの社会通念に則って考えてみます。

もし仮に学ぶことが仕事なら、労働基準法に準じてその時間は8時間未満であるべきです。

1日の学修を8時間未満に収めようと思えば、どうしても1日の講義の時間を3時間未満におさめる必要が出てきます。

なぜなら、仮に3時間講義を受けると、3倍の9時間が学修に取られるからです。

いずれにしても、現実的だと感じないのではないでしょうか?

(まあ、これは屁理屈ですし、私自身学生の本分は、まず勉強であることは100も承知です。)

第三に、この省令が結構古いということです。

修正に修正を重ねていますが、土台は昭和のものです。

今の時代に合わせて一度土台か作り直せばいいのに、と思ってしまいます。

〇まとめ〇


 さて、ここまでで、

1単位=予習15時間+講義15時間+復習15

となっている理由と、いくつかの”考え”を紹介させて頂きました。

若干批判的なことも申し上げたのですが、予習・復習が不要であると思っているわけではありません。

提案したいのは、〇〇時間に拘ることなく、今日の教育と学生生活にあった、最も学生が成長できる教育を見つけませんか?ということです。

昨今、さまざまな領域での進歩から、学生が学ぶべき事柄は拡大する一方です。

また、大学在学中に講義以外に価値ある取り組みを見つける学生も増えています。

そんな状況の中で、最も学生が育つカリキュラムとはなにか?

最も社会に納得して応援してもらえる教育スタイルとはどのようなものか?

このように考えて、教育を少しずつ見直していくとよいのではないでしょうか?

〇学生FDに関わる学生へ〇


 目先のマターだけに拘らず、「最も学生が育つ大学にするにはどうしたらよいか?」と考えてアイディアを出したり判断したりするとよいのではないでしょうか?

 

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