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【映画感想文】アキ・カウリスマキ「枯れ葉」

アキ・カウリスマキ監督作品「枯れ葉」を観賞して。


感情の揺れ幅の、小さな映画だと思って観ていた。
ラストシーン、アンサの「ウィンク」までは。

(あらすじ)
北欧の街ヘルシンキ。アンサは理不尽な理由で仕事を失い、ホラッパは酒に溺れながらも、どうにか工事現場で働いている。ある夜、カラオケバーで出会った2人は、互いの名前も知らぬまま惹かれ合う。だが、不運な偶然と現実の過酷さが、彼らをささやかな幸福から遠ざける。果たして2人は、無事に再会を果たし、想いを通い合わせることができるのか……?

アンサはフィンランド・ヘルシンキで働く独身女性。
頬の両脇にくっきりと彫られたラインに、重ねてきた時間が読み取れる。
決して豊かとはいえない家計状況(いや、生きることがやっとというくらい苦しい)、家族との別離とその原因、ラジオからは今まさに隣国で起こる戦争の惨状が流れ続ける。
それでも彼女は取り巻く環境にめげることなく、ささやかな楽しみを見つけながら日々を過ごしている。

出会い、好意を持ったホラッパは誰よりも自分がかわいい「クズ男」で、酒とタバコに逃げることしかできない。好きになったアンサのために変わることもできない。

わたしがアンサなら「こんな人に付き合ってる暇なんてないのよ、彼の問題に労力をかけるのがもったいない」とか言って、とっくに見切りを付けただろうなと思う。
(わたしの場合、愛を信じすぎて自分がぼろぼろになったという経験をしているから、なのだけれど…)

けれど彼女は、彼を見捨てない。
根気強く、愛す。
盲目的でも、さびしい女としてでもなく、自分を尊重し、彼の強さを信じる大きな女の愛し方で。

そして最後の場面、ホラッパを迎える彼女のウィンク(そのチャーミングさがたまらなかった!)を見たとき、私はやっと気づいたのだった。
彼女もまた、彼を希望だと感じていたことに。
彼女が抱えてきた、彼女だけの孤独に。

そのあとはもう、じわじわと押し寄せる感動に、涙をこぼさないよう必死だった。何度も指で、目頭をおさえた。
ああなんて優しくて、あたたかな映画なんだろう。
明かされたワンコの名前に、この映画のすべてが込められている気がした。

最初から最後まで漂う”おかしみ”で、重たさは全くない。
愛って実は、こんなに軽やかなものなのかもしれないと思う。
いや、ちょっと違うかな。そもそも愛の重さとは、何だろう。

1パーセントでも、100パーセントでも、愛と言えるように。愛を感じられるように。
そんなわたしでいられたら、いい。

(↑枯れ葉で思い出すのは、この曲のこの演奏だなぁ)

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