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「あなたと話したい」3.返事

昨年後半の、とても幸せな日々について。


(↓こちらを先にどうぞ。)


3.返事

年内最後の放送は、「レギュラーコーナーの総集編をやります」と予告されていた。

夜、ご飯とお風呂をすませ、部屋に小さなライトをひとつ付けると、ソファーにはぁ〜っと寝ころんだ。
流れはじめたラジオ放送。彼の声はいつもに増して優しくて、ぽぅっと微熱を灯しているみたいだった。

「夢は うかうかしてると 夢は 叶うから」

流れた曲の歌詞が、ツン、と私をつつく。

彼のフラットな語り口が好きだった。なにかについて語るとき、必要以上に言葉を膨らますことも、足りないままで放置することもしない。いつも、世の中を一歩引いたところから眺めていて、なるべくあらゆる人に伝わるように、誰かを傷つけることがないように、そんな気持ちで選ばれた言葉だと分かった。やわらかな中に芯がある、ふくよかな声がいちばん好きだった。

その時、思いもよらないことが起きた。
彼の声が、私の名前を呼んだのだ。

わっ。
びっくりして、声が出なかった。けれど、心のどこかで、やっぱりちゃんと届いた、そう思う私もいた。

彼はゆっくりとていねいに、私の手紙を読んだ。手紙は、「長いよ!」と自分でもつっこみを入れたくなるほど長かったけれど、彼はひとつもこぼさずに、私の言葉をたどった。彼の声で聞いても、私の言葉は私でしかなく、幼くて、まっすぐで、空想が好きな子どもの顔をしていた。

そして私に、思い切り真正面から返事をした。自分を慕うファンへ向ける、まなざしについて。どんな気持ちで歌っているのか。それらは思いつきではなく、いつもそう思っている、というものだった。
くもりのない彼の心を、これ以上ないほどたくさん受けとって、私はほくほくした気持ちで満たされた。幸せで、幸せで、ほんとうに幸せだった。

私と、私と同じ彼を慕うたくさんの人々に向けられた声の、あたたかさと優しさよ。彼を交えた全員がつながって、ひとつの共同体をなしている。その感覚を味わいながら、私はただただ、気持ちがよかった。

(↑ラジオ冒頭で流れた楽曲はこちら)


(↓つづきはこちら)

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