季語×グラデーション〜秋の章〜【後編】
つづき
秋の章後編です。
前編がまだの方はこちらのリンクからどうぞ。
朝晩はやっと寒さも感じるようになりましたが、日中の気温は30度を平気で超えてくるし、まだ夏が居残っているのか、秋が夏を恋しく思っているのか、どっちつかずな状態ですね。いつ決着がつくのか、誰か教えてくれませんか。
エアコンの効いた部屋にいながら、ポチポチと文章を打っております。
6.赤蜻蛉(あかとんぼ)
夏の季語の「海月」が「そう来たか!?」と思った季語No.1だと話しましたが、秋の季語のソレはコレですね(指示語厨)。
だってまさか「赤蜻蛉」が来るなんて思わないじゃないですか?って、赤蜻蛉に失礼な発言から始まってすみません。
季語×グラデーション企画がスタートして、最初に選んだ季語は「白帝」でしたが、一番最初に作ったグラデーションはこの「赤蜻蛉」でした。
当初はまだやり方とかも定まってなくて、ミニ額サイズにグラデーション作ろうかって話で進めてたんですよね。
そう、5×5cmサイズ。
そしたらもうね、結構な広範囲でね。必要なインクの量もハンパないし、ムラもできるしで、サイズ変更しない?って提案する時に作った画像がこちらです。LINEcameraの猫スタンプかわいい。
「赤蜻蛉」のグラデーションは私の天邪鬼さが最大限に発揮されたんじゃないかなと思います。と、いうより、そう見えたらいいなと思って色を選びました。おどろおどろしいって言ってもらえたのちょっと嬉しかった(笑)
童謡にもある夕焼け小焼けによく映える朱色もイメージにはあったんですが、蜻蛉特有のあの大きな瞳の黒さにフォーカス当ててみました。
7.不知火(しらぬい)
「不知火」って名前のキャラクターいたよねっていうのが最初に思ったこと。
「陽炎ノスタルジア」ってタイトルの漫画なんですけど、月刊誌を買って読んでただけなので内容も覚えてないのに、この「不知火」って名前だけは強烈に残ってました。すごい名前考えるな〜って関心したというか、漢字とか日本語の面白さを感じて記憶に残ったんだと思う。
学がないことを積極的に晒していくと、実際に不知火って現象があるのだと知らなかったんです。しかもこの現象については、未だに正体がわかってないっていうんだからまた面白いですよね。
人間は、未解明な余白にロマンを感じるんだと思う。生きている間に絶対に体験することのできない「死」という空想や、幽霊とか怪奇現象とか、不気味で不思議で、解明できないからこその面白さがあって、その余白を好き勝手に埋めることができる。浅はかだって、誰かの二次創作だって関係ない。逸話も寓話も噂話もぜんぶ綯い交ぜにして自分だけの解釈を作る、もしくは宗教にしてしまう。それは“ロマン”だからこそ真実よりも面白い。人って創り物が大好きなんだと思います。
自然現象でも人間の仕業でもないなんて、「怪火」は一体誰の解釈だったんでしょうね。
グラデーションに使用した色の話をすると、私が暗闇の中で灯る明かりを表現するときに使う組み合わせにしました。
これは、以前コピック会議アカウントに投稿した提灯やランプの表現について私なり塗ってみたやつです。大体同じ色を使ってます。
鬼灯を描いたときのイラスト。これも黒の部分がT系なだけで、あとは同じ色です。好きなんですよね…この組み合わせ。発光している感じを出せるのがYG0000の強みだと思います。
「不知火」は夜のイメージも含んでいたので、私の中の夜色であるBV29と、紫を強めるためのV28を使いました。スキャンだと色が分かりにくいのが残念ですが、炎が燃え上がっているような表現にできてよかったです。
8.残菊(ざんぎく)
1年に渡って作り上げた四季折々の40個のグラデーションの中で、たぶん、確実に一番のお気に入り。
添えた言葉も自分なりの皮肉を込めることができた気がして、以降、これを超えるグラデーションは作れなかったなと思っています。
「残菊」は、菊の節句とされる重陽の節句(陰暦九月九日)を過ぎて咲いている菊の花のことを指します。
簡単に言うと、「いつまで咲いてるの?」っていう徒花です。
…まあ、これはわりと歪んだ言い方ですけど、残り物だなんて言われるくらいなんだから、あながち間違いではないと思う。それほど大きく時期を逸脱して咲いているわけでもなく、ただ、当日に間に合わなかったという理由だけがレッテルで、貴方の美しさに影が落ちる。何色だっていいんだよ。だって、もう価値なんてないんだから。
Y17への私の信頼度ってすごく高くて、「Golden Yellow」という名に相応しいほどに華やかな色です。この色さえ使っとけば大体綺麗。コピック絵描きさんにはおすすめしたい一色です。
そして、私にとっての濃い赤は一貫してR59なのですが、当時なぜR39を選んだのかは正直覚えていません(ぇ)。「赤蜻蛉」でR59を使ったからかな。
R39は9番にしては明るめの色ですが、ツンとしていて清潔感があります。品行方正な赤色って感じ(あくまで個人の感想です)
このグラデーションでは初めて違った角度から塗ってみたんですが、それも含めてお気に入りポイントになりました。
話はかわりますが、私、菊っていう漢字の読み方が好きです。
菊は訓読みしかない日本の国字だそうで、「○菊」って書いたときに「○○ぎく」と濁点が付くところがすごい好きなんですけどこの感覚は伝わるのだろうか…。字面が好きなわけじゃないので、あんまり創作キャラの名前とかに使ったりはしないんですけど、なんか、残虐的な発音で好き(黙ろうか)
9.夜長(よなが)
今回は夜のテーマなのにBV29を使ってないですね。でもね、B99もすごくいい色なんですよ。B系からBV系を経てV系へ繋ぐグラデーションを作っているのはなんだか王道みたいな感じしますね。V91もいい仕事してくれたと思います。
夜が長くなると、夜行性の私たちはつい時間を忘れて夜に長居してしまう。お月様の光すら霞むくらいの蛍光灯が私たちの居場所です。夜の色が何色かだなんてもう考えもしない。ただ少しずつ寂しさが身近になって、夏が死んでいくことを横目で見ている。
気温が下がってくるのを肌で感じると私はすごく嬉しくなってしまいます。夏が嫌いだからです。
昨日の夜が何色だったのかさえ思い出せないでいるからきっと、また、夏が来ることに嫌気がさすんでしょうね。
10.石榴(ざくろ)
有名な話で、石榴が人肉の味に似ているという逸話があります。そういう、いかにも創作に使えそうなネタももちろん好きなんですけど、今回はギリシャ神話のハデス様の話をピックアップしました。好きなんですよね、ヨモツヘグイの話。
というより、ハデスってギリシャ神話の中でもそんなに目立った行動してない神様なのに、ここで人(神)攫いですか!?っていう人権無視みたいなこと平気でやってのけて、あまつさえ冥府の食べ物を与えて絶対に手放さないぜって根気見せてくるのなんか陰キャっぽくて「おおう…」ってなる。
連れ去られちゃったペルセポネは冥府で石榴の実を12粒のうち4粒食べてしまい、1年のうち3分の1の期間は冥府で過ごさなければいけなくなってしまったという。そこから、ペルセポネの母こと豊作の女神さまがそのことを憂いて、娘に会えない期間だけ地上に実りをもたらすことを止めるようになった。これが冬の始まりになったようです。そんで、娘が帰ってくる時期は喜びのあまり春になった、と。
知るかそんなもんって感じしますけど、四季の始まりに神様の身勝手さが相まって、私はこの話大好きです(笑)
石榴のことを調べていくうちに、「粒の多い林檎」が名前の由来になっていることも知り、林檎というしばしば神話で取り沙汰されている果実との繋がりに軽率にエモいとか思ってしまうあたり自分のにわかさを痛感します。
この石榴に使った赤はR89は、「Dark Red」の名前を持つ深みのある渋い赤色です。石榴のイメージとしてRV系もあったのであえて鮮やかなRV69を混ぜたんですが、ちょっと分かりにくかったかも…。
林檎のグラデーションを作るとしたら、BG90はYR30とかになっていたでしょうね。
おわりに
季語×グラデーション〜秋の章〜のご紹介いかがだったでしょうか。もう1年も前のことなのに覚えていることもあれば、やっぱり忘れてるところもあって、色々考えながら書いていたらまた長くなりました(笑)
企画の第一弾だったからね、何だかんだ言っても特別です。
今後、春と冬を記事にするかは未定です。しない、と言い切れる気持ち8割くらいではいるので、グラデーションの紹介は今回で一旦終了かなと思います。夏と秋、どちらも読んでくださった方がいましたら、お付き合い本当にありがとうございました。
また別の記事でお会いできたら幸いです。
それでは。
2021.10.10 契 憂