季語×グラデーション〜夏の章〜【前編】
はじめに
今回は、Twitterのコピック会議アカウントでやっていた企画「コピック会議四季譚(しきたん)」季語×グラデーション〜夏の章〜について書いていこうと思います。
この企画は、コピック会議アカウントの管理人である2人が5つずつ季語を選んで、合計10個の季語をイメージして、コピックでグラデーションを作る企画です。去年の秋にスタートしたこの企画も、今年の夏のグラデーションで最後になりました。
グラデーションを作った時の思い入れとか、色々感じたこととかがあるので、記事にまとめたいと思います。完成したグラデーションとあわせて見ていただけると嬉しいです。
それではまず、10個の季語のうちの5つを前編としてご紹介します。この5つは私が選んだ季語です。
1.朱夏(しゅか)
五行説を当てた季語は、四季を通してのシリーズみたいになりました。色と季節を掛け合わせた言葉なので、すべて「色」を絡めたイメージでグラデーションや文章を考えています。
“真っ赤なブルーだ”
YUIの「Summer Song」という楽曲のワンフレーズ。青なのか赤なのかわからない独特の表現がとても不思議で、この曲を初めて聴いた当時はどういう意味なのかもわからないまま、強烈に残る印象だけが私の心を惹いたのを覚えています。
今になって考えると、夕焼けの海かなとか、色々と解釈できることもあるけど、未だに不思議さと強烈さを感じさせる大好きなフレーズです。
この朱夏のグラデーションでは「真っ赤なブルー」が表現したくて、私が思う朱色のR05、夏の青空を連想させる「Sky」の色名を持つB24をセレクトしました。
……セレクトしました、は良いけど、グラデーションにするのが予想以上に難しくて、めちゃくちゃ塗り直しました。え…?何テイク目…?
迫りくるインク切れの恐怖とも闘いながら、赤も青も殺さないまま、「真っ赤なブルー」を表現するために四苦八苦。R系とB系を重ねると途端に黒っぽくなってしまうし、中間色に紫を入れるべきかなと思いながら、紫に意識を持っていかれるのは嫌だなって気持ちもあって、最初はまったくの赤と青だけでグラデーションしようと奮闘してました。
でも、いよいよ立ち行かなくなったので、諦めてBV13を追加。折衷案。それでも何度か塗り直して、途中で投げ出しそうになりながら、なんかもう最後は意地でしたね、意地。たぶん、過去最多の塗り直し回数になったと思います。それだけ思い入れもできたし、結果的にはかなりお気に入りのグラデーションになりました。
“真っ赤なブルーだ”!
2.青嵐(あおあらし)
吹けよ青嵐 何もかも捨ててしまえ
悲しみも夢も全て 飛ばしてゆけ又三郎
こちらも、楽曲からインスピレーションを受けた季語です。たぶん、ヨルシカの「又三郎」を聴いていなければ、私の中で「青嵐」はヒットしなかったと思う。だって、字面がお洒落じゃないじゃないですか(個人の感想です)
ヨルシカの「又三郎」では、「青嵐」はヒーローのような存在として表現されています。つまらない日常を吹き飛ばしてくれるほどに酷い嵐を呼んでほしいんだ、そう主人公が願っているところに吹いてくれるような強い風。
最初は、私もそういうヒーローとか、ポジティブな印象の言葉を添えようと思っていたんですが、いつの間にか悪役になりたがってました。どうして。
台風やハリケーンに名前がついて、まるで悪役のように取り沙汰されてる。そんな存在感があるわけでもなく、ただ木々の葉や貴方の髪を攫うだけしかできない風は、だから「青い」なんて表現されるのかも知れないですね。
ヒーローって、特別にしかなれないからね。
色のイメージとしては、爽やかさや鮮やかさを表現したかったので、彩度ゴリゴリのB18とG17を選びました。端的ですけど「青」=B18、「嵐」=G17って感じ。
まあ、この2色も中々に相性が悪いと言いますか、素直なグラデーションにはなってくれなくて、両方の色を活かすグラデーションを作るってことがいかに難しいかを痛感しました。これも意地で塗りきりましたね。
3.白夜(びゃくや)
サモンナイトエクステーゼのOPの「白夜」という楽曲がずっと大好きです、と言いたかっただけで今回は楽曲からのインスピレーションはありません。「白夜」という字面だけのイメージでグラデーションをつくりました。中二病心をくすぐる、素晴らしい言葉ですよね、「白夜」。
私の中で「白」は、黒よりももっと悪を表すに相応しいと思う色です。すべてを塗り潰してなかったことにする、不透明度100%でしか表現できない色。
世界が夜だよって言っているのに、白で塗り潰してしまったのは誰なんだろう。夜という概念も、貴方を救ってくれるはずの夜明けも嘘にしてしまう、酷い白々しさ。
4.昼寝(ひるね)
エモくないですか?
年中無休で昼に寝ることを「昼寝」って言うと思ってたし、そういう意味で使ってたし、たぶんそれで合っているのに、実は夏の季語だったなんてめちゃくちゃエモくないです?夏の衰弱から逃れるために、夏にとる仮眠のことだって説明を読んだ時に「人間って生き物だな〜!!」って感動した。
星が空にぶら下がってると言われていた時代からおやつの時間は3時と決まっていて、そこには科学的根拠も何もないままで、人間が本能的に得てきた見えない知恵を、見えない袋に溜め込んで賢くなっていくような、そんな人間味を感じました。
昔の人が言っていたことを、現代人が解き明かして、確かに正しいことだったんだって言っているみたいな話、すごい好きなんですよね。
グラデーションに添えた文章は、某詩人の詩をオマージュしたものでした。
あなたが死にかけているときに
あなたについて考えないでいいですか
あなたから遠く遠くはなれて
生きている恋人のことを考えても
それがあなたを考えることにつながる
とそう信じてもいいですか
それほど強くなっていいですか
あなたのおかげで
お昼寝の間、優しくブランケットをかけてくれた人のことを思い出すんでしょう。そうして私も、誰かへ優しさをあげられる人になっていく。あなたのおかげで。
5.空蝉(うつせみ)
「蝉」という漢字だけが許せない。いや、ほんとうに。
「うつせみ」って響きも、実は生身の人間をさしていた言葉だって事実も、抜け殻の虚しさも意味も全部が心に刺さってくるのに、「蝉」という漢字だけが引っかかって最後まで選ぶかどうか迷った季語です。この1文字が強烈すぎて、茶色のグラデーションにするしかなかったじゃないですか。
とは言え、蓋を開けてみれば色の組み合わせもグラデーションも結構好きな感じになってしまいました。人生って何が起こるかわからないね。
T1が間に入ったことでものすごい調和が生まれたと思う。さすがT1先輩。E77の焦げ茶色がT1でじわじわ溶けていくのが最高に良かったです。濃い色を薄い色で溶かすように作るグラデーションはやっぱり良いですね、好きです。コピックならではの滲ませ方のように思います。
そこに、虚しさと言えばこの色!な、BG70が加わることで頭の中でイメージしていた以上のグラデーションができました。
君だけが好きな時間が確かにあったのに、それはもう化石になることもなく、ただ、ただ、空っぽの抜け殻。ひとつの夏さえも超えられない命の残骸。
おわりに(後編へ)
季語×グラデーション〜夏の章〜の前編、いかがだったでしょうか。結構語れてしまうなっていう驚きがすごかった。
「夏」という概念が大好きです。
「夏」という季節が一番嫌いです。
後編はまた後日。それでは。