日本語教育推進議員連盟の総会に出席して

日本社会における外国人の状況

2017年末現在、日本に在留する外国人は2,561,848人となっており,初めて人口比2%を超えました。2018年の成人式後,東京23区の新成人は8人に1人が外国人,新宿区の新成人は45.8%が外国人だというニュースが流れました。在留する外国人の内訳を見てみると,永住者・特別永住者を合わせて1,079,013人で,全体の4割以上を占めています。また,毎年約1万人の外国人が日本に帰化しており,直近10年では100,040人が外国人から日本人になりました。日本社会は人口減少局面に突入し,生産と消費を担う人を何らかの形で確保しなければなりません。いろいろな議論がありますが,外国人の受け入れ,移民の受け入れを議論する時期にきているのは明らかです。そのような状況を踏まえ,日本政府は外国人の受け入れに関して様々な制度の拡充を行なっています。

日本語教育に関する昨今の政治的な動き

政府の基本方針は毎年6月に発表されます。2017年は6月9日に「未来投資戦略」が発表されましたが,この中に初めて「日本語教育の拡充」という文言が盛り込まれました。2018年の未来投資戦略ももうすぐ発表される予定で準備が進んでいます。この中にも,改めて外国人に対する日本語教育について盛り込まれるのではないかと言われています。政府の動きとは別に,超党派の議員による動きも出てきています。2016年11月には、超党派の議員連盟「日本語教育推進議員連盟」が発足し、「日本語教育推進基本法(仮称)」の議員立法を目指した議論が行われてきています。昨日(2018年5月29日)には、第10回総会が行われ、基本法の政策要綱について議論がなされました。政策要綱は今後条文化され,秋の国会での成立を目指して作業が進んでいく予定になっています。

「日本語教育推進基本法(仮称)」とは

基本法の役割は,日本語教育の目的や国・自治体等の責任を明確化し,各省庁が具体的な日本語教育政策を作っていく際の指針となるものです。今後,具体的な政策,法律,制度などが作られていくための基盤となるものです。
今回の基本法では,「外国人との共生を通じて多様な文化を尊重した活力のある共生社会の実現」が目的に盛り込まれています。外国人が言語としての日本語を学ぶことだけをターゲットにしているわけではありませんし,外国人のためのものでもありません。この社会を今後どうするかという議論を始めるための法律だと言ってもよいのではないかと思います。
基本的な施策としては,以下の5つが挙げられています。
1)国内における日本語教育の普及推進
2)海外における日本語教育の普及促進
3)日本語教育の質の保証
4)日本語教育に係る調査研究等
5)地方公共団体の施策
これらが,今後の具体的施策の元になる項目です。

課題〜日本語の教育,国家,人々の権利

このような法律ができることは,日本語教育の取り組みが社会的に位置付けられるという意味で,非常に貴重なことだと思います。日本語教育は外国人のためだけにあるのではありません。この社会にいる人たちのコミュニケーション不全を回避し,対話的で互いを尊重するよりよい社会を構築することを目指すために必要不可欠なものです。
一方で大きな課題もあります。過去には,日本語教育が皇民化教育に利用されました。現在の日本語教育は,その反省の上に成り立っています。また,人には自分らしく生きるために自分の言葉を選択する権利もあります。このような課題を念頭に置きつつ,具体的に日本語の教育をどうしていくか,今後の議論が必要です。
課題については過去に別のところに書いていますのでこちらをご覧ください。
日本語教育学会からも僕の報告がアップされていますので合わせてご覧ください。
ああ,今日も堅くなってしまいました…。

うまくいくまでやり続ければ失敗なんてありえない/今日も笑って過ごそう


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