バリ島、なにもしない旅をする
「ひとりでバリ島なんか行って何するの?」
友人が言う。なにもしないをするためにバリに行く。僕は言う。笑う。
ちょうど一年前にスタートアップに転職して以来、金と時間の余白を見つけては旅に出る生活をしている。
今年は、カンボジア、ニューヨーク、シドニー、ベルギー、ロンドン、パリに行った。
遺産も都会も疲れた。移動が多くて体力はすり減るし、情報量が多すぎて精神力も使い果たしてしまう。
カンボジアのアンコールワット遺跡は大量の石が殴りかかってくるみたいだし、ニューヨークは美術館が脳を一瞬でCPU使用率100%にする。
今回のテーマは「なにもしない」にすることにした。
観光する予定もなにも立てない。ガイドブックは触りもしない。
ガイドブックこそ消耗の根源だ。不必要な情報で埋め尽くされている。それが高い価格を正当化するために必要な紙の厚みを出す。
バリ島、チャングー
場所はバリ島、チャングー。
ノマドリストというサイトがある。デジタルノマド向けの海外旅行ガイドで、Wi-Fiの速さとか物価とかノマドには必要不可欠な情報が見やすくまとまっている。
そのランキングで現在1位なのが、バリ島のチャングー。生活コスト、インターネット速度、楽しさなどから計算されるノマドスコアが1位らしい。
上位に入ってる他の場所は、たとえばタイのバンコクやチェンマイ、意外なところで言うとハンガリーのブダペスト、ドイツのベルリン。
バリには行ったことがないし、気候が快適そうで、インターネットもそれなりに速そう。
そう決めて、ANAに電話して2週間後のジェットをとる。Airbnbで宿を予約する。なんとなく5泊。
飛ぶ。ANAで羽田からクアラルンプール、マリンドエアでクアラルンプールからデンパサールへ。マリンドエアはLCCなのだけど、ANAと同じターミナルなので、乗り継ぎが楽。
デンパサールの空港でSIMを入手する。Grabでタクシー呼んで宿にGO。
たとえば、海に行く
海は裏切らない。
バリのビーチは特になにもしないのに向いています。波が高いので、血気盛んなサーファーでもない限り、長い時間海に入れない。
泳いだりできないから、持て余した時間をゆっくり過ごすしかない。
これがギリシャの島の穏やかな海だと、はしゃぎすぎ、泳ぎすぎる。翌日、足がバキバキの筋肉痛になる。
そのへんにビーチソファやパラソルがあり、白人たちが本を読んだりスマホを触ったりしている。そしてときどき瓶ビールを口につけたりする。
サーファーが波に挑んでは飲み込まれる姿を眺めるのも楽しい。
おっさんもなにをするわけでもなく、波の写真を撮ったりしている。
ビーチクラブという、強い海の家のような施設もある。ソファーを借りれて、そこで飲み食いしてダラダラしたり、プールに入ったりできる。DJがダンス音楽を流しているので、気分が乗ってきたら踊ったりする。
PARTY PLATFORMというのを借りて、派手にパーティーすることもできる。
ひとりで過ごすという感じではないし、けっこう値段も高いので、ハイネケン瓶を1本だけ頼んで、パソコンを開いていた。
夕方になると、夕日が落ちてくる。夕日は裏切らない。
日本で見る夕日の5倍くらい輝いてて、夕日ってこんな力強かったっけ、という気持ちになる。
それにしても、波が立派。自然のパワーを24時間100倍浴びてる感じ。こりゃ多神教なるわ。
たとえば、カフェに行く
良い感じのカフェがいくらでもあって、どこも質が高い。ラテが美味しい。
毎日朝ごはんを食べに行っていた。オムレツにチーズの味がちゃんと乗っている。
コーヒー1杯がだいたい200円か300円くらい。
多くがオーストラリアスタイルのコーヒー屋。エスプレッソマシンでなんでも錬成してしまう。豪快。
エスプレッソをお湯で薄めただけのものを、ロング・ブラックというカッコいい名前をつけて売っているのが、個人的にむかつく。
当然のように Wi-Fi も使えるので、作業をするのにも適している。空調が効いた部屋もある。
電源もたくさんあって気が利いている。スマホだってパソコンだってやりたい放題。
本を読むついでに、ナシゴレンを頼む。旨味がある。
ほかに、インドネシア料理で好きなのは、ソトアヤム。鶏のスープ。
たとえば、宿ですごす
今回はホテルじゃなくてウィークリーマンション的な所。金が無限にあったら高級リゾートとかヴィラとかに泊まりたいところだけど、住民税を払えなくなるからAirbnbで探した。
1泊3000円程度の安い部屋。豪華ではないけど、毎日清掃が入ってベッドメイクしてくれる。
洗濯も頼めて、綺麗に畳んだ状態で返してくれる。エアコンもばっちり効くし、ベッドも広いし、ちょうどいい。プールもある。
宿は、キリスト教系華僑の一家が回していて、おばちゃんが仕切っている。大阪のおばちゃんっぽくて事あるごとに話しかけてくる。
「あんたなんでひとりで来たんや?」「17才にしか見えへんで」「運転上手なったか?」といった具合。
通りの反対側は、ライス・フィールド、つまりは田んぼが広がっている。見ていると安らぐ。日本で田んぼ見てもなにも感じないのに不思議。
通り側は、バイクの轟音がマッドマックスみたいに響いてる。あまり気にしないことにする。
インターネットも問題ない。日本とSkypeで電話しても遅れなどはほとんど気にならなかった。
テラスでパソコンをしていると、犬が寄ってくる。かわいい。
世界各国の大抵の犬に蹴られたり威嚇されたりするんだけど、今回の犬は仲良くしてくれた。
どこにも行きたくない夜は、部屋から出ずにGrabアプリで配達を頼むのも良いです。日本でいうと、Uber Eats みたいな感じのやつ。
KFC的なフライドチキンを頼むと、配達料込で300円以下で届けてくれます。
使いすぎると堕落するようで、大量のビールを配達させて、宿の隣人は一度も部屋から出なかった。
たとえば、スクーターを借りる
困るのは、移動手段。他の国だと Uber や Grab などのタクシーアプリだけで楽に移動できる。
しかし、バリ島にはタクシーアプリが禁止されている区域があったりして事情がややこしい。
(客をとったドライバーは、警察ではなく、地元民にボコボコにされるらしい)
今回は自由を優先して、スクーターをレンタルした。1日500円くらい。
宿のおばちゃんに「17才なのにほんまに運転できるんか?」と煽られる。
言い返す。俺はこう見えて26才だし、ドライバーライセンスを持っている。大学だって卒業している(これは大嘘)。
これが消耗の始まりだった。田園風景のなかを飛ばすのが気持ちよくて、どうしても乗りすぎる。
遠くに行きたくなる。途中破滅的な渋滞に巻き込まれながら40分。
ヒンドゥー教の寺院を見る。海岸の崖の部分にある。
山のほうに行きたくなる。棚田を見に行く。
途中、破滅的な渋滞に巻き込まれながら1時間30分。
それでも、田んぼのなかスイスイ走るのは気持ち良い。
映画で言うと、イージーライダーみたいな気分。ボコボコにされる弁護士役ででてるジャック・ニコルソンが好き。
なにもしない旅のおわり
こういう風な感じで、なにもしないつもりが、若干なにかするような旅をした。
総じて満足で、もう一度行きたいと思ってる。観光しなかったおかげで、帰国後の疲れも少なかった。
気候は快適だったし、英語も通じるので、梅雨避けなどにも良さそう。
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