夜10時前、散歩をしていたら、後ろの方から自転車が横を通り過ぎて行って、ナカタさんが乗っていた 。

ナカタさんが誰かと聞かれたら、

：ナカタさんは『海辺のカフカ』のナカタさんでございます。

：ナカタも、なぜこの方がナカタにお会いしたと言っているのかさっぱりわかりません。 ナカタは10時前に散歩をしておりません。自転車にも乗っておりません。

ナカタさんナカタさん、その人ね、黒い傘をさしていたの。雨が降っているわけでもないのに。思わずヒルかイワシかアジでも降って来るんじゃないかってドキドキしちゃった。

：そうですか。ヒルかイワシかアジが降って来るから、ナカタは傘をさしていたのであります。しかし、何が降って来るのかは、ナカタはその時にならないとわかりないのです。ナカタはうなぎが好きですから、うなぎが降ってきてくれましたら嬉しく思います。それで、何が降ってきたのでありましょうか。

いや、何も降っては来なかったよ。残念。

：降らないと「ざんねん」なのでしょうか。ナカタにはよくわかりませんが、うなぎが食べられないのは確かにざんねんであります。

そういえば、あの後、星野くんはやり遂げたよ。

：星野さんですか。星野さんがやりとげたというのは一体なんのことかナカタにはわかりませんが、星野さんには親切にしてもらいましたので、星野さんがやりとげたといいますと、ナカタも少し嬉しく思います。

ナカタさんは死んだの？

：それはナカタに聞かれますと少々困ってしまいます。ナカタはひどく疲れてしまい、とにかく眠りたかったのであります。そしたらナカタはしにましたので、しにましたとしか言いようがありません。

そうか。寂しいね。

：さびしいのでしょうか。申し訳ありませんが、ナカタは頭が悪いので、「さびしい」というのがわかりません。しかし■■さんがさびしいと言うのでしたら、さびしいのかもしれません。

今夜はうなぎが降るといいね、ナカタさん。

：はい。今夜はうなぎが降るといいと思います。


2023.11.7（火）夜10時前