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月を見上げて



帰りのバス。
携帯から顔をあげたとき、ふと視界の右端に、ここ最近探し求めていたものと思しき弯曲が映り、急いで目でそれを探す。

建物の間からチラチラ見える、綺麗な三日月。
思わず目が輝く。

確か最後に月に会ったのは、満月になる前日。
なぜかその日以降あまり見かけることもなく、時折夜空を見上げ、寂しそうな星と目をぱちくりさせるだけの日々が続いた。

見ない間にすっかり痩せた三日月。カーブがなんとも美しい。
しかも今日の月は黄金色よりに映える。明るさも一段と高い。白銀に煌めくときもあれば、蒼涼な光を放つときもある。今日は高貴な黄金色。

なぜ、これほど月を執拗に追い求めているのかは、自分でもわからない。
わからないけれど、烏滸がましい、厚かましいことを承知の上で、李白、夏目漱石(諸説あり)などの先人たちが証明してくれていると思う。
人というのは月を追い求める生き物なんだということを。

月は媒介。

人は、月を見上げて、月を通して何かを思う。
と、月を見上げながら思う。


2023.11.17  星期五  大雨のち曇り(月があれだけ輝きを放っていたので、多分夜は快晴)

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