朝、ゴミ箱に物を捨てる時にハッとする。

ごみの日やん！！？

普段の出発時間であれば問題ないのだが、金曜は家を出るのが遅い日。前日の夜に捨てるのを忘れてしまった。

急いでごみをまとめ、袋をぎゅっと締め、玄関を駆け出す。まだ収集の人が来てませんように。

2階の階段踊り場で、掃除のおばあちゃんと会う。

「おはようございます！」と急いで挨拶し、
おばあちゃんも微笑みながら私に道を空け、「おはようございます」と返してくれる。

玄関で、いつもおばあちゃんと立ち話をしているおじいちゃんと会う。

「おはようございます！」と元気に挨拶すると、おじいちゃんも頭をペコっとしながら「おはようございます」と返してくれる。

くるりと回って、玄関の外側のゴミ置き場を見る。

「セーフ」

思わず口に出してしまう。安堵。とりあえず先2、3日の家の匂いの平和は保たれたようだ。

ちょっと小恥ずかしい顔をしながら階段を上がっていき、家に戻る。

ばったり会った時は、挨拶をされて、挨拶を返していたので、今日は急いでいたのもあるが、自分から言えたのが少しだけ嬉しい。

残りの支度をして、結局バタバタしながら家を出る。

階段を駆け下りながら、今度は4階に上がっていくおばあちゃんと会う。

へへっとして、ペコっと頭を下げたら、おばあちゃんは「行ってらしゃい」と言う。通り過ぎた私は振り返って「行って来ます！」と返す。
向き直って、下りようとすると、「傘は持った？」と後ろから声がした。もう一度振り返り、背負った鞄をポンと叩きながら、「鞄に入ってます！」と笑う。「午後から降るらしいからね」とおばあちゃんは安心したように階段を上がっていく。「ありがとうございます」と言いながら今度こそ階段を降りる。

玄関でまたおじいちゃんに会う。
おじいちゃんはおばあちゃんと仲良しさん。おばあちゃんが降りて来るまでずっと待っているらしい。1階で話しているところを数回見かけたことがある。

「いってらっしゃい」とおじいさんは笑顔で言う。「いってきます」と笑い返す。


今日も「いってらしゃい」をもらえた。そして「いってきます」をかえせた。なんだかとてもとても嬉しい朝だった。

そう、なんだか、
雨粒がついている傘越しに、雲の中から少し顔を出している太陽を見ているような、
そんな素敵な気持ちだった。


2023.11.10  星期五  曇り時々小雨