見出し画像

【69】「誰も知らない小さな国」のちょっとレトロな装丁の話 2022.9.4

 私の好きな本の話をしていきたいとは前から思っていて、どれにしようかなと思っていましたが、その第一回がこの本になるとは思っていませんでした。
 でも先日図書館に行ったときに、佐藤さとるさんの、

1)「コロボックルの世界へ」
2)「コロボックルに出会うまで」

という2冊の本を見付けてしまったのでここで書いてしまうしかないということになりました。
*****************
 佐藤さとるさんの「誰も知らない小さな国」に出会ったのは私が小学校3-4年生の時に学校の図書館でだったと記憶しています。
 当時、僕はこのお話が好きで好きでたまらなくて、このお話が本当のことのように思えて、僕にもコロボックルが出てきてくれないかなと真剣に探したりしたものでした。
 今でもこの大きな椿の木に守られた泉のある三角平地は。目を閉じれば私自身の記憶であるかのように、ありありとその状景が目に浮かぶのです。

この2冊は、
1)が、コロボックルの世界のガイドブックで、全体を思い出しながら、なつかしく読みました。
2)はこのお話が世に出るまでの佐藤さんの自伝的小説で、奥様との運命的出会いの話とか、コロボックルのお話の前身となるお話とかが、すごく興味深くて面白い本でした。

 今回この二つの本を読んで初めて知ったことなのですが、「誰も知らない小さな国」は1959年に出版されていました。それは僕が3年生のときですので、僕が読んだのは、出版された年かその次の年という、ほんとうに直後と言ってよい時期ということになり、僕は、佐藤さんが有名になる前のほんとに最初期のファンだったことになります。
 そしてこのお話の主人公の「ぼく」が、この三角平地に初めて出会って魅せられてしまったのは小学校3年生の時ということになっていて、僕がこのお話によって三角平地に出会ったのと同じ年令だったのです。
 何か不思議な縁を勝手に感じています。

「誰も知らない小さな国」の内容自体についてはネタバレしてしまうのでここでは書かないことにしようと思います。
 ジャンルは童話ということになると思いますが、すぐそこにある不思議な世界を描く筆致は、とても真摯で細やかでリアルで、子供向けに止まらず、子供の心を持った大人であるなら絶対読んで面白い、年齢を超えた名作の一つだと思います。

 この本は童話として超有名で、図書館に行けば、この本とその続巻のシリーズが児童書コーナーには必ず置いてあると思いますので騙されたと思って手に取ってみてください。

 私自身も、もう一度、コロボックルシリーズを全部読み直してみたいと思いました。

 ところで私が昔読んだのは、最初に出版された時の下の写真のもので、多分今図書館にあるものは違った装丁のものになっていると思います。 

 この写真をみて、そうそうこれだったなあとなつかしく思い出しました。
 調べてみると、これは若菜珪という児童書の作画では大変有名な方が挿絵と装本を担当し、安野光雅さんがレイアウトを担当されたとありました。
 当時、若菜珪さん38歳、安野さんは33歳、佐藤さんは31歳でした。
 安野さんはいうまでもなく「旅の絵本」等で知られるあの安野さんで、「誰も知らない小さな国」の誕生の際に若かりし安野さんが関わっていたなんて初めて知り、嬉しくなってしまいました。

 今図書館に置かれている本は村上勉さんという方が挿絵を描いているものになっていると思います。
 村上さんは佐藤さとるさん自身が見つけ出し指名した方で、コロボックルの世界を細部まで描いて余すところがなく、このシリーズ以外にも佐藤さんの作品はほとんど全て挿絵を担当された方ですので勿論素晴らしいのですが、私個人としては最初に出会った上記写真のレトロな装丁の方に愛着を感じます。

 村上さんの場合は、佐藤さんの書く世界をすごく理解して具体的に描いていらっしゃって、文章で足りない部分を絵が補っているという風なので、佐藤さんの世界を紹介するうえで大きな役割を担い、それを十二分に果たしてきてその功績は大だと思っています。
 ただ、私なんかの場合は、明確に描かれ過ぎていることでイメージが固定されてしまい、自分の「小さな国」を想像する楽しみが無くなってしまう点がちょっと苦手だなと思ったりもします。
 といっても、私も、最初からこのバージョンに出会っていたら何の疑いも持たずに絵と文に引き込まれていったでしょうからこのコメントはあまり気にしないでください。
 
 コロボックル第2巻は1960年に出版され、これも若菜珪さんの挿絵になっています。

 村上さんは1965年22歳の時に「誰も知らない小さな国」の挿絵でデビューしたそうで、1969年に出版されたコロボックル第3巻では最初から村上さんの挿絵になっています。  
 1,2巻も村上さんの絵に変更され、これ以降佐藤さんの作品は村上さん、ということになっていったのでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?