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あんときのデジカメ 真冬の讃岐の小確幸 with Pentax Optio A30

(はじめに)「小さいけれども、確かな幸福」を村上春樹さんは小確幸と名付けました。僕の真冬のそれは水仙の花です。厳しい寒さの中でその姿を見ると少しホッとします。今回は2007年製のペンタックスのコンパクトデジタルカメラでスケッチしてみました。ほとんどマクロ撮影ばかりです。

デジタルカメラの2つのアドバンテージ

 フィルムカメラとデジタルカメラを比べるのは、モノとして酷な断絶があることは承知しているのですが、便利になったことが2つあると考えています。

 その一つは容易に高倍率のズームレンズが使えるようになったことで、これは以前、紹介したとおりです。例えば、広角端28mmで15倍ズームレンズだと、420mmの高望遠レンズになります。普段目にすることのない世界へと私たちを引き連れていってくれることに感動すら覚えるものです。

 そして、もうひとつは、マクロ撮影がだいたい標準装備で容易に使えるようになったことです。

 望遠にせよマクロ撮影にせよ、フィルムカメラを使用していたとき……もちろん、そしてそれはどういうカメラを使用するのかという問題とワンセットですが一般論として……は、専用のレンズというものが必要で、これが割と高価なものです。なかなか手を出しにくいというのが現実であったということです。デジタルカメラを使うようになって、そのハードルが下がったことには感謝しております。

 例えば、バルナックライカなんかをつかっていると、望遠レンズだとだいたい200mmがマックスで、マクロ撮影は標準レンズで最短撮影距離がだいたい90cmでした。、接撮影用のアダプター、例えば、NOOKYなんかをつかっても40cmです。それが最短5cmぐらいまで近寄ることができ、普段、注目することのし難い世界へと容易にできることは、デジタルカメラを使うことの醍醐味かも知れません。

真冬の小確幸としての「水仙」の花

生活の中に個人的な「小確幸」(小さいけれども、確かな幸福)を見出すためには、多かれ少なかれ自己規制みたいなものが必要とされる。たとえば我慢して激しく運動した後に飲むきりきり冷えたビールみたいなもので、「うーん、そうだ、これだ」と一人で目を閉じて思わずつぶやいてしまうような感興、それがなんといっても「小確幸」の醍醐味である。そしてそういった「小確幸」のない人生なんて、かすかすの砂漠のようなものにすぎないと僕は思うのだけれど。
(出典)村上春樹『村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた』新潮文庫、平成十一年、126頁。

 「小確幸」という言葉がありますが、これは辞書には掲っていません。なぜなら、作家村上春樹さんの造語だからです。『うずまき猫のみつけかた』というエッセイ集に出てきますが、まあ、言ってみれば、あんまりガツガツ生きていかなくても、暮らしのなかには、小さいながらも確かな幸福を感じる瞬間というものがあり、それをキャッチすることができれば、それなりに生きていける、なんとかなるというものです。

 ただし、そのためには一種のストイシズムも要求されますが、そのことで「(小さいけれども、確かな幸福)」は浮かび上がってくるというものです。

 ちょうど、讃岐でも真冬が到来しました。この季節、僕はあいも変わらずロードバイクで往復30km近くを通勤しておりますが、そのストイックな生活の繰り返しのなかで、浮かび上がってくる僕の「小確幸」というものがあります。それは、真冬に咲き誇る冬花との出会いです。

 そのひとつが水仙です。

 松の飾りもとれたあたりから、道端で咲き始める黄白の水仙の花々は、真冬の寒さをものともせず、その淡い姿を僕たちに見せてくれます。

 まあ、「それが何?」と言われてしまえば、それまでですが、その姿を見るにつけ、「まあ、僕もちょっと頑張ってみようか」などと思ってしまいます。


ペンタックス絶頂期の何でもありのコンパクトデジタル

 さて、今回、そうした水仙の様子をスケッチするのに利用したのが、ペンタックスのOptio A30 になります。現在でこそペンタックスはリコー傘下となり、わずかにそのブランド名を残すことになりましたが、00年代からデジタルカメラ業界を牽引してきたブランドであり、その絶頂の時期に製造されたのが本機になります。

 OptioといえばSシリーズに代表される最小コンパクトデジタルカメラ、あるいは入門機の色彩が強いのですが、異彩を放つのがこのAシリーズです。コンパクトな筐体ながら高画素かつ大型センサー、そしてセンサーシフト式手ぶれ補正にマニュアル撮影機能などてんこ盛りです。

 では、簡単にスペックを紹介します。センサーは1/1.8型有効1000万画素CCD、発売された2007年製としては非常に意欲的な試みです。大型センサーという意味では、高級コンデジラインですが、薄型ボディにうまくまとめていることに驚きます。レンズは、35mmフィルムカメラ換算で38-114mmで、この時期のカメラとしては広角が広角になっていないという瑕疵は否めませんがそれでも広角端がf2.8と明るく、全域でクリアかつナチュラルな写りです。

 全体として、「デジタル一眼レフと同等の有効1000万画素」というフレコミは大げさとは思いつつ、ハイエンドラインでもなくエントリークラスでもない不思議なカメラですが、成功している作品ではないかと考えています。

 とにかく機能として全部コミコミながら、ユーザーインターフェースとして使いやすいという一点がこのカメラを他とは違うカメラと足らしめているというのが使用感です。いいカメラでも操作系として使いづらいカメラはやはり及び腰になります。その意味で、非常に成功したカメラではないでしょうか。

 ということで、今回は、讃岐の小確幸として水仙の様子をスケッチしましたが、ほとんどがマクロ撮影になりました。Optioはマクロに強いのも醍醐味ですね。

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 ということで撮影データ。プログラム撮影、ISO100、ホワイトバランスオート、露出補正なし。画像は3648×2736(FINE)で保存。撮影は2020年1月22日~29日。撮影場所は香川県善通寺市、丸亀市。

 今回の撮影ポタリングでの小休止は、近所のうどんやさんの「こんぴら街道」です(2019年に移転したため、住所は、香川県善通寺市大麻町1296-1)。ここは、お蕎麦をオーダーすることもできるので、僕的には重宝しております。これもひとつの「小確幸」ですかね。


氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。