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2024.03.22 09:14

入籍してから半月ほどが経ったが一緒にまだ住んでいないからかそれほど結婚したという実感は生まれていない。彼女と家で「僕ら結婚したんだよね」と結婚以前と以後で特に変わらないこの感じを言葉で確認しあったりしていた。

閏日である2.29に区役所に行って窓口に行って僕らは夫婦になった。窓口ではおじさんが対応してくれて眉間にシワをせながら自分たちが想像した感じのおめでとうございますの感じでは全くなかった。ところどころでおじさんの行動に僕らは引っかかる箇所があったが僕らはその場で目を合わせることも言葉を交わすわけでもなかったが、同じ気持ちであることに僕は救われたりしていた。

データ上に反映されるまで1時間ほど待つ必要があったので僕らは近くの喫茶店で朝ごはんを食べた。コーヒーにホットサンドとハーフサイズのワッフルを食べてなぜ閏日あるのかを想像していた。僕は農作物を再現性高く効率的に収穫するために時間、日にちという概念が必要ではないのかと仮説を立てたり、星の位置が移動していることに気づいて観測し続けたらわかったのでは?とか想像していた。最終的にはchatGTPに聞いて、ほー、などとわかったことにした。

「いまは調べたら大体のことが分かるけど、昔はまだわからないことがたくさんあって楽しそうだね」と彼女がいったのがずっと僕の脳の片隅にいる。

その日の夜はゆうすけさんのところを予約してお酒とご飯を食べた。いつものようにお刺身と好きな小鉢を数点頼んだら、お祝いで鯛の舟盛りを用意していただいていた。町の人に住んでいるたくさんの人たちからいろんな形でおめでとうをもらって僕らもこれは違う形でお返ししたいなと思う。

七年勤めた仕事は一応今月で終わることになる。辞めることに実感を帯びてきたが焦りや不安などが確定申告の文字を見ることで色濃く自分を覆う。数ヶ月は休憩して、ゆるりと何かを探していきたいと思いつつも単発バイトなど眺めていると3時間働いて3000円しかもらえない現実にまたしんどくなったりする。大学時代を合わすと10年以上なにかをもとめてデザインをしていてこれを手放して何か違うことをするのは率直になんか悲しいなと思っている。思い描いていた未来はもうこないことはわかっている。でも本当に手放したいのか僕にもまだわからない。もう少し仕事に関しては慎重に考えたい。

引き継ぎの人とミーティングしていたが、自分の中にあるもやもやがまた出てきて昨日一日はなにか気分が重かった。何にもやもやしているのかわからないのが一番良くないとわかってはいるが、もう今の仕事関連に関して自分の魂すり減らすの勿体無いと思う。ここに関わる人とその家族が幸せになることを心から願う。普通などそれぞれの概念でしかないが普通に生きていけるように願う。

今年は瀬戸内海ではいかなごが収穫されないようで少し残念に思う。引越ししてから毎年作って親や祖母に送ったり、おにぎりにして防波堤で食べていたので今年は何か違うものでまた食べようよなどと話し合ったりしていた。この時期なるとスーパーに積み上がるザラメやあの赤色のパックに丸大豆の醤油などは在庫オーバーになってどうなるんだろうか、発注した人毎年のことだから気を利かせて注文したのに気まずいだろうなとか、なぜか店員側の気持ちになる。

庭の乙女椿が一気に咲き出した。侘助はもう終わり頃だが乙女椿はまだかまだかと蕾のままでずっと溜め込んでいる様子だった。数日あったかい日が来た時に一気に咲き出した。早速ぼとりとガクごと落ちたがこれはこれでいい。花びらが赤いまま数日地面を絨毯のように覆う。実家の玄関の門の横に植っていた椿を毎日愛でていだことを思い出す。

裏の家の解体工事が始まって、地響きでストレスが溜まる。洗濯も干せないし土日は雨予報で本当に困る。ワイヤレスイヤホンの上からヘッドホンを被り、音から逃げる。1週間もしないうちに家は解体されて、日当たりの悪かった食卓に見たことのない光が差し込んでいた。お昼ご飯を食べる時に、この光見たことない、とその光に気づいたのは不思議な感覚だった。冬は寒かったが夏には少し涼しいのがうちの家のいいところだったのだが、どうなるのか季節が来てから確かめたい。

そんなことを考えている。

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