子どもと関わる仕事をしていた。
　同僚が「好きな音楽はなんですか？」と子どもから聞かれたらしく、うらやましかった。
私なんて「好きな『サザエさん』のキャラは誰ですか？」くらいしか聞かれなかったからな。
ちなみに早川さんって答えました。ハヤカワって名前がいいよね。私はヴォネガットが好き！

　しかしいざ本当に「好きな音楽はなんですか？」と聞かれるとこまる。非常にこまるんだ。
『サザエさん』のキャラなんて申し訳ないけど思い入れないからどうとでも答えられる。だからこそあえてのガチで「早川さん」とか言ってしまえるんだ。
　好きな音楽だと嘘をつけないというか、つきたくない。
自分に正直でいたい。自分にとって音楽が大切だからこそ、なんと答えるのだろうかと途方に暮れてしまった。

　懐メロも良いね。私は歌うのが好きだから、誰でも口ずさめる流行歌というものがあった時代の歌は、それ自体がコミュニケーションのハブになる。
　でも子ども相手だからなあ。
アニソンやアイドルの歌もキャッチーで大好きだ。あれは決して子供騙しじゃない。
というか、子どものほうが抜き差しならない真剣さでジャッジしてくるから騙せない。琴線に触れなければすぐに「飽きた」とか「ヒマ」とか言うんだから。大人みたいに忖度して付き合いで一緒に音楽を聞くなんてしてくれないのよ。
その道のプロが忖度抜きのジャッジをする相手に向けて万策を講じて作ったものが、面白くないわけがない。
　音楽が好きな一方で、私は言葉が好きだ。どうしても歌詞を聞いてしまう。
ヒップホップではセルフボーストのような、私小説的なリリックに惹かれる。でも昔から尾崎豊的なロックとか、四畳半フォークも極めて私小説的で好きだった。
　楽器としては金管楽器の音が好きだ。トランペットやトロンボーンの音を聞くと無条件に新陳代謝が良くなる気がする。もぐりの吹奏楽部員だったからかな。

　好きな音楽なんて、とても一言じゃ言い表せない。