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歌川国芳ー讃岐院眷属をして為朝をすくふ図①


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讃岐院眷属をして為朝をすくふ図(通称ワニザメ)の版木が全て彫り上がりました。

一枚27×40×2.5㎝の山桜ベニヤ16枚の両面使用です。
去年の冬から始めて、途中で春画の仕事を挟みながら、実質5カ月位かかりました。この作品は三枚一組なので単純に普段の3倍の彫り時間がかかります。そういうこともあってか、ここ数日テストプリントをしているのですが、絵が立ち現れて来たことに大きな興奮を覚えています。
これから摺り上げたテストプリントを確認しながら微妙な線の修正をしていきます。

線の修正は自分の場合、最低でも輪郭の主版で3回、色板で2回、摺っては彫りを繰り返しながら、行いますが、これは本当にきりのない作業です。

版木の彫刻に関して、オリジナルと同じ線が復刻においても再現されていると思ってる人は多いんじゃないでしょうか?

そのような例はまず無いと思います。

それは意図的な場合もあり、例えば彫師の中には原画より綺麗な線を目指すべきだと考える人もいますし、早く仕上げるために目立たない線を省略して彫るという例もあります。
彫師の浮世絵の彫りにおいては、必ずしも厳密な意味で原画と同じ線が意識されているわけではありません。

只そういった彫師それぞれの考えに関係なく、細かい線を隅から隅まで全て原画と同じに彫るというのは、そもそもが不可能に近いくらい難しいことです。

「原画と同じ線を彫るなんて無理だ。」と言う名人彫師の話も聞いたことがあります。

何にせよ自分が目指しているのは再現なので、素材や色彩だけでなく、線においても(欠けや歪みに至るまで)原画が忠実に再現できるよう努力を続けて行きます。

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↓これまでの記録写真です。時系列順

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↑鱗の模様はなかなか大変でした。3枚ともですね。

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↑広い部分はノミを使います。輪郭の主版より色板の方が浚い取る面積が広く大変です。1日中やるとだいぶ腕が疲れます。力仕事です。

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版面の角を削り傾斜をつけると輪郭の当たりが弱くなります。板ぼかしと言われる技法です。波部分の全てにこの細工がしてあり骨の折れる所でした。↓下写真は原画です。

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一つの絵につき4~5枚の版木が両面使用されます。浮世絵は図柄問わずだいたいそうです。

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