浮世絵の素材ー礬水の明礬② 製法について


今年に入り江戸時代の明礬の製法を知ることができました。和紙は摺る前の下準備としてドーサ液というもので滲み止めをします。この液は膠と明礬から作ります。これまでドーサに使う明礬は最初は市販のものを、次に天然石を砕いて使うようになったのですが、今年になって江戸時代の明礬の製法がわかり今回自製しました。

国内の明礬は古くから中国からの輸入によって賄われていましたが、江戸初期の1666年、現熊本県八代市出身の渡辺五郎右衛門という人が、長崎にいた中国人から製造法を学び、現別府市明礬地区にて本格的な製造が始まります(1670年頃)。約100年後の1760年代には同地区は全国のミョウバン生産の約7割を占めたそうです。明治以降、化学薬品製の台頭に伴い、その生産の需要は低下していきます。その対策として明礬製造の半製品である硫酸礬土というものが入浴剤として売り出されるようになりました。これが「湯の花」です。現代も別府では当時の製法で生産されています。(この技術は国の無形民俗文化財に指定されています。)
江戸時代の明礬は硫酸礬土(湯の花)とクロキという木の木灰で作られます。
以下手順です。
1、水1リットルに木灰100グラムを溶かし上澄みをあつめます。(今回はクロキが入手できなかったのでクヌギ・ナラの木灰を使いました。)

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2、水1リットルに湯の花170グラムを溶かし上澄みをあつめます。

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3、1と2でとれた液体を1:1の割合で混ぜて水分が無くなるまで加熱します。

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4、(1g=1mmlとして)その出来た固形物の1.7倍の木灰汁を入れ固形物が溶けるまで加熱します。

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5、その後常温に放置しとくと固まってくるので、ある程度固まったところで(この段階で一晩置いても水っぽい場合は再加熱し少し水分を飛ばします。)、平らに広げて乾かして完成です。

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ドーサ液を作る際は水900mmlに対し膠16g、明礬11gの割合で作ります。冬場は膠が固まりやすく効き目が強くなるので水の量を少し増やし薄めてやります。尚気温以外にも、湿度が低いほど、乾燥時に風に当たるほど、ドーサの効き目は強くなります。使用している膠は市販品で、和牛皮膠で薬品・添加剤不使用のものを使っています。膠については今後詳しく説明します。

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今回の明礬の製法は恒松栖(つねまつすみか)氏著「湯の花の研究~湯の花とハイノキで明礬をつくる~」から学びました。この場を借りてお礼申し上げます。

2019.6.18


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