映画「ナポレオン」(12/1公開)

ナポレオンには2つの愛したものがある。フランスとジョゼフィーヌだ。

「戦争の天才」ナポレオンはその51年の生涯で"61"の戦闘を指揮する。23歳で将軍、30歳でフランス支配者になり、またたくまにヨーロッパの支配者に登り詰める。1793年から1815年までに彼の率いた戦闘では300万人以上が戦死。周辺諸国から「悪魔」「食人鬼」と恐れられた彼だが、映画の中では、彼の残虐さは描かれず、まっすぐな愛国心や人間的な脆さなどピュアな部分が強調される。戦闘中でも不安げな表情を見せるし、ハンカチで涙を拭うシーンが何度もある。特に妻のジョゼフィーヌに対してはすぐ感情的になる。

ジョゼフィーヌは相当に官能的な女性だったらしい。未亡人で二人の子持ち(最初の旦那はフランス革命中に処刑)。ナポレオンよりも6歳年上。誰もが結婚したがる条件では無いが、それでも彼女はナポレオンを魅了した。結婚して間もない頃、ナポレオンがエジプトに遠征していた時に妻の不倫が彼の耳に入る。戦争を放り投げて(他の人間を指揮官に任命)フランスに戻る。彼は最初ジョゼフィーヌに厳しい態度を取るが、徐々にペースを握られて最終的に「わたしはあなたがいないと、ただの男です」と言わされる。ナポレオンは生涯にわたって彼女に執着した。

タイミングだけを見れば、ジェゼフィーヌはナポレオンにとって「勝利の女神」でもあった。彼女の不妊を理由に離婚したのが1810年。それまで連戦連勝のフランス軍だったが、1812年の「ロシア戦役」では、60万の兵を連れてモスクワに侵攻するも敗北。退却してパリに戻れたのは4万人以下だった。その後、彼女は肺炎で亡くなる。フランスへの愛国心を支えに挑んだワーテルローの戦い(ベルギー/1815年)でも再び敗北。ナポレオンのカリスマは地に落ちた。

51歳のとき、幽閉先のセントヘルナ島で孤独な死を迎えたナポレオン。彼の最後の言葉は「フランス、陸軍、ジョゼフィーヌ」だった

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