アルゴリズム




東京には何でもあるらしい

夜、東京駅に降り立つとまず目に入るのは
暗く、明るいビル群だ

本当にこのビル一つ一つの灯りとともに
人がいるのだろうか

何か精巧なプラモデルを見ているかのような
錯覚を覚えるほどの完璧なビル群は
夜の光を増幅して
幽かな離散性を感じさせる

このビルの灯りは
メモリに格納されたデータのようだ

対称的なビルの中から零れ落ちる
非対称な灯りは
人が人である所以を表現しているように感じる
彼らの居場所は、そこなのか?

建物の間から吹き抜く風から、
生き物の香りがしない
動的な狂気はとてつもなく極小化されている

利益が上がる
利益が上がらない
まさに1,0の離散性が
静的な狂気を抱えて、
生き物のいない
ディストピアに聳え立っている

数秒単位でコントロールされた
電車が私たちを駅へ運ぶ

もしここが東京でなければ
ここまで同じような容貌の
疲弊した人間を見ることはできないだろう

一人一人が、
何に向かって何を追いかけて生きているのか
まるでわからない

哲学的ゾンビの陰から見え隠れする
虚しさが
人生のレールを敷く

東京には何でもあるらしい
彼らは口を揃えていう

まるでアルゴリズムのように





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