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理想のマネージャ- ブレイク&ムートン


キャリコン試験では、組織の中のリーダーシップ論も出題されます。

リーダーシップ論は古くはプラトンの「国家」で語られる哲人王にはじまったと言われていますが、出題の可能性が高いのは1960年以降の二元論。

今回のコラムでは、R.R.ブレイク & J.S.ムートンの「マネジリアル・グリッド理論」(1964年)と、それによく似た三隅二不二(みすみ じゅうじ)の「PM理論」(1966年)を比較紹介します。

マネジメント

こういうマトリックスって、軸選びのセンスが命ですよね。

どちらも、①(生産性や目標達成に焦点をあてる)組織アジェンダと、②(部下の関心や成長に焦点をあてる)人間アジェンダを使っています。

一般的には右上(9.9型あるいはPM型)のタイプが一番良いという直観的な結論も同じです。

違いは、マネジリアル・グリッドは各軸を9段階で評価しているのに対してPM理論は4象限という点、そして軸のXYが逆っていうところ。わたしはこれを記憶するために、図で黄色くハイライトしている5つの型に自分の過去一緒に仕事をした人たちの中から、典型的な顔ぶれを選んで当てはめた絵を描いて覚えました。(割とうまく描けたので、絶対に公開できない。)

タイミング的に、三隅氏はマネジリアル・グリッドにヒントを得てPM理論を作っただろと思うんだけど、軸は合わせてほしかったな~…。

国内の人事研修ではシンプルなPM理論のほうが手軽に使われているようです。ネットでも無料のアセスメントツールが色々出ているので、興味のある人は自分のタイプを見てみると良いでしょう。

けれど、個人的にハイライトしたいのは、診断ツールではなく組織改善に主眼を置いた動的ツールとして開発されたマネジリアル・グリッドです。

ブレイク氏とムートン女史は、テキサス大学で師弟関係にありました。二人は、後にコンサル会社National Training Laboratories(NTL)の同僚となり、このマネジリアル・グリッドを共同開発しました。NTLの焦点がアセスメントだったため、組織改善に重点を置きたかった二人はそこで組織と袂を分かち、別の会社を立ち上げてマネジリアル・グリッドを広めたのです。

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前述のとおり9.9型が一般的に最も組織の生産性を高める理想形であるとしつつも、その時の組織課題や部下のタイプによって、接し方を柔軟にシフトできるマネージャが最終的には良いというのが、その論旨です。

たとえば、なぜその仕事をするかの理屈が腹落ちしたら爆速で動く若い頃の私みたいなタイプの部下には9.1型が機能するし、逆に、理屈よりも気持ちを分かってもらうことが大事だというタイプの部下には1.9型のほうが良い。

あるいは、組織が難局にある緊急事態では専制君主的な9.1型に近い方がブレなく迅速に結果を出せるということもあるけれど、部下が高い専門性を持って自律的に動く組織のゼネラル・マネージャに求められる資質は、同じ状況でも、おそらく違う。

「優れたリーダーには共通の行動があるはず」という仮説から研究が進んだ行動理論ですが、個人的には、望ましいリーダーシップというのは時と場とメンバーの個性に応じて変わるので、公式はないと思います。

私が会社員として生きてきた2000年~2010年前半というのは、ふりかえってみると、山一の倒産を皮切りに金融業界の統廃合が一気に加速し、外資系コンサルなんかの人気が出て日本企業が自信を無くしていく裏で、世界的な情報インフラを提供するITジャイアンツが台頭し、いわゆる第四次産業革命が進行してきた時代でした。私はそんななかでたまたま世界的に旬な企業に就職して、アチーブメント・タイプ(成果・達成重視型)になることに疑問を抱かず、すくすく唯我独尊に育ったのです。が、3年前に会社勤めを辞めて以降は、堰を切ったように真逆の方向の学びを深めつつあります。

現在は日本企業とのお付き合いのほうが多いですが、1990年代以降ずっと従来の在り方(護送船団方式・年功序列・終身雇用制度)を否定され達成型組織への移行を求められてきて、その変化を消化もしないうちに、今度は「ESG!SDGs!」という外圧に晒されて新たな方向転換を迫られる、日本企業は、もう、へとへとで御気の毒な気もします。

今は「GAFAに学べ」的な本が売れる時代ですが、私はそのシャドウも肌身に感じてきたので、そもそも日本企業はそれと同じにはなれない、なんでもかんでも真似しようではなく、内的なリソースにもっと目を向けて独自の進化を模索したほうがいいのにと思うこともあります。

ただ、働き方改革をお題目として捉えずにその本質に着目するなら、

「部下の(あるいはほかの人の)幸せを搾取しなければ自分は幸せになれない」と考えるのではなく「部下(および社会の皆が)が幸せになれば自分はもっと幸せになる」と知って、多種多様な個性の部下と柔軟に対話し、共に成長できるようなタイプのリーダーが増えればいいのに、と思います。

単一民族国家で同調圧力の高い国と言われる日本ですが、実際はそこに住む人の数だけ多様な考え方や価値観があります。

”女性”活躍推進とか言うだけではない本来のダイバーシティの意味に気づき、それを尊重できる人がリーダーになっていってほしいと思います。

そういう思考の足掛かりになるという意味で、マネジリアル・グリッド理論はPM理論よりもこねくりまわしがいのあるスキームだなあと思いました。

どなたさまも、ハッピーなライフキャリアを。

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