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【ゲーム感想文】『ユニコーンオーバーロード』~王道を問い直す、大傑作S・RPGの誕生~

 
評価:★★★★★

本日、PS5版『UNICORN OVERLOAD(ユニコーンオーバーロード)』をクリアーしました。
クリアーまでに要した時間は約100時間。シミュレーションRPG(S・RPG)としては長めのプレイ時間ですが、それでも全ての会話イベントやシナリオ分岐は追えていないので、とにかく大ボリュームの作品です。
しかもその100時間があっと言う間に思えるほどに没入感が高く、全てにおいてこのレベルに到達する作品は十年一度あるかないかと言っても過言ではないほどの大傑作でした。

本作を開発したのは、『ドラゴンズクラウン』や『十三機兵防衛圏』を手掛けたヴァニラウェア。
美麗で精細なドットアニメーションや拘りぬいたセンスと仕様で評判のデベロッパーですね。自分もここのゲームのファンであり、今度は本格的なS・RPGを作ると言う事で発表当時から期待していた作品でした。
それが実際に遊んでみたら、とんでもない時間泥棒かつS・RPG好きにはたまらないエッセンスが濃縮された満漢全席な大傑作に仕上がっており、他に積んでいるゲームがなければ、すぐにでも二周目を始めたくなるほどハマってしまいましたとさ。

そんな訳で本作の自己評価は、5点満点の「文句なしの傑作・名作」。
個人的な評価だけでなく、本作は今後のS・RPGを語る上では決して欠かせない一本であり、間違いなくこのジャンルを代表するタイトルのひとつとして語り継がれる作品になると信じています。
『ユニコーンオーバーロード』は良いぞ!!



S・RPGにおける“王道“とは


本作について語る前に少し、シミュレーションRPG(S・RPG)の歴史について簡単に触れたいと思います。
S・RPGの元祖については諸説あるかと思いますが、ジャンルとしての名称も踏まえて今も昔もS・RPGの代表作と言えば、ファミコンの『ファイアーエムブレム』(FE)でしょうね。
シミュレーションゲームの駒(ユニット)に個別のキャラクターと成長要素を与え、戦場におけるドラマと壮大な戦記物としてのストーリーを両立させた本作はS・RPGと言うジャンルを確立させたでけでなく、今も続く大人気シリーズになりました。

FEのヒットを皮切りに無数のS・RPGが生まれましたが、その中でもスーパーファミコンの『伝説のオウガバトル』、『タクティクスオウガ』はFEが描いた戦記物に政治性を加え、ゲームとしては自由なユニット編成と戦場の三次元化によって、S・RPGが持つ魅力を更に広げてくれました。
この二本は直接的な続編こそ望めませんでしたが、その遺伝子は様々なゲームに今も引き継がれています。

他にもキャラクターゲームとしての方向性を開拓した『スーパーロボット大戦』や『サクラ大戦』、シューティング要素を加えて新たなフォーマットを生み出した『戦場のヴァルキュリア』や『XCOM』など挙げればキリが無いのですが……そうしてジャンル自体が発展・拡張していくなかで、FEやオウガバトルサーガのようなファンタジー世界の戦記物は、いつしか「王道」と呼ばれるようになります。

『ユニコーンオーバーロード』は間違いなくFEとオウガバトルサーガを強くリスペクトし、ゲームとしてもそのエッセンスを継承していることから王道的な作品だと称されています。
もちろん本作が王道的な作品である事は間違いないのですが、では何故FEとオウガバトルサーガが「王道」と目されるようになったのか。
今まではただ何となく言われてきたS・RPGにおける「王道」について、物語だけでなくゲームシステムの面からも徹底的に「王道とは何か」を問い直し、その答えをゲームとして一から再構築したのが本作『ユニコーンオーバーロード』の持つ魅力であり意義なのだと考えます。

ではその王道とは何かと言うと、大きく分けて以下の二つ。
・無数の英雄たちの物語である。
・奪われたものを取り戻す戦いである。
これらを踏まえて、次からは本作の魅力について語っていきます。


王道とは、英雄たちの物語である


戦闘シーンの一風景

画像は本作の戦闘シーンの一部ですが、ファンタジーにはお馴染みの剣士や騎士に加え、手前には天使で奥には獣人とグリフォンに乗った騎士など、本作の職業や人種(?)は多種多様。
画面には映ってませんが、もちろんエルフもいるよ! 衣装がみんなドスケベだから載せられないわけじゃないよ!
まぁそれ自体は別段珍しい事ではありませんが、本作は2~5人のキャラクターを一つの部隊(ユニット)として運用し、その編成は非常に自由で多彩。物語でも活躍するネームドキャラだけでなく、自分で名前やカラーリングを決めたモブキャラだけでもユニットが組めますし、一部のユニークキャラを除いては能力的にも差はないのは嬉しい仕様ですね。

なるべく性質の近いユニットを集めて長所を伸ばすのが、シミュレーションゲームの定番だったりしますが、本作はユニットを性能ごとに特化させるよりも、様々なキャラクターやスキルを組み合わせる事でシナジーを発生させるほうが強い仕様になっています。
その為、見た目は雑多で統一感に欠けていても、戦闘では思わぬ強さや働きを発揮して勝ったり負けたりするのは当たり前。
本作の戦闘はオートバトルで、一旦戦闘が始まればプレイヤーは何もできない(ただし戦闘前に結果は分かる)ので、肝である部隊の編成をあーでもないこーでもないと考えるのが本作の面白さの一つであり、時間泥棒的な「沼」なんですよね。

主人公であるアレインや最初の仲間たちは人間で職業もオーソドックスなのですが、それだけでは強大な敵に歯が立たないので、手あたり次第に仲間を集めて軍勢を強化していきます。
その為、仲間になるキャラクターは一癖も二癖もある連中ばかりで、戦いに挑む目的や信念もバラバラ。けれども一人一人が育て上げれば獅子奮迅の活躍を見せる英雄でもあり、様々な英雄たちが共に手を取り合う事で、強大な敵や危機を退ける姿は、古来より人々の心をつかんで離さない物語の「王道」でもあります。
S・RPGはキャラクター一人一人を立てながら、戦争と云う大きな局面を概略的に体験できるジャンルであり、本作は様々な英雄たちが共に戦う事を物語だけでなくゲームシステムでも「是」としている事から、より「王道」だと感じるのかもしれません。
つか折角ファンタジー世界で戦争するなら、異種族や幻想生物と肩を並べて戦いたいもんな!

もちろん戦闘シーンだけでなく、本作は好感度を稼ぐ事でキャラクター同士の会話イベントが発生したり、主人公のアレインと特定のキャラクターとの疑似的な結婚(?)イベントもあったりと、個々のキャラクターを立てる要素もバッチリそろっているので、ゲームを進める度に次から次に魅力的なキャラが増えて育成が追い付かなくなるんですよね……(遠い目

王道とは、奪われたものを取り戻す戦いである


人〇売買されかけるエルフの皆さん(納得)

最低なキャプションはともかく、前述した様に英雄たちが共に手を取って戦う姿を描くためには、多種多様な人物たちに共通する目的が必要です。
しかも物語であるからには読み手をハラハラドキドキさせて、勝利の際にはカタルシスを与えなければいけません。その為に古来から用意されてきた舞台こそ、奪われたものを取り戻す戦いの物語なのです。

本作の物語はゼノイラ帝国という軍事独裁国家により一つの大陸ごと奪われた時点から始まり、主人公を始めとして多くのキャラクターが帝国の支配によって様々なものを奪われ、その地に生きる人達は圧政に喘いでいます。
ゲーム的にも主人公たちは四方八方を敵に囲まれた状態から、一つまた一つと町や人々を解放していき、その過程で様々な英雄たちと手を取り合っていきます。
初代FEも同じように亡国の王子が強大な敵から世界を取り戻していきますが、そうした貴種流離譚は昔からの王道であるが故に、近年はストレートに描かれる事が少なくなってきました。

しかし本作は敢えてその貴種流離譚をストレートに描き、仲間になる英雄たちは本質的には「善」であり、敵は徹底的に「悪」として振る舞うので、物語を読み進めるのに余計なストレスがかかりません。
もちろんそれは物語を単純な勧善懲悪の構図にはめ込むのではなく、本作は人間の弱さや愚かさを描きながらも、善を成す事は決して間違いではないとする世界観を貫いています。
だから敵でも許したり言葉をかければちゃんと仲間になってくれますし、逆に敢えて善くない選択を重ねれば、ゲームとしても手痛い報いが返ってくる仕様になっています。
まぁ中にはそれが逆に良いと言う変態…もとい性癖の人もいるので、そう言う人のためのイベントも用意されていますよとだけ。


本作は広大なフィールドを自由に移動して、買い物や探索やアイテム収集を行う事ができますが、序盤は四方を敵に囲まれていて散策できる範囲も狭いので、敵を倒して町を解放していく度に世界がどんどん広がっていきます。
前述した「奪われたものを取り戻す」カタルシスがゲームシステムとしても体感できました。
また本作は行き先や攻略の順序を自由に選択できるので(もちろん推奨ルートはある)、自分の戦術次第で物語に左右される事なく自由に戦場を選べるのも今風で良かったですね。


でも王道ばかりじゃないんだよ


ここまで「王道」という言葉から本作を語ってきましたが、それはあくまでこのゲームの魅力の一部であって、FEやオウガバトルサーガにはない本作ならではの魅力だって沢山あります。
その一つが、ヴァニラウェア恒例の飯テロシーンこと「ヴァニラ飯」!

特定の都市にある宿屋でお金を払う事で食べられる料理は、一緒に食べたキャラクター同士の好感度を上げる効果があります。
上の画像はあくまでその一部ですが、恐ろしいのは単なる一枚絵ではなく立ち昇る湯気や鍋の中の肉や野菜が美味しそうにアニメーションで動いて、しかも食べかけの差分が複数存在するんですよね……
一体何がここまでさせるんじゃ……
各キャラクターにはそれぞれ専用のボイスもあり、和気藹々とテーブルを囲む様子が想像できるのもまた「美味しい」ですね。


そしてこれまたヴァニラウェア恒例の、ドット絵の極致たるアニメーションの美しさ。
自分はPS5版を4Kディスプレイでプレイしましたが、原寸大のスクショでも厚塗りの絵がそのまま動いている様な精細さで、やっぱりこの会社何かがおかしいよ!(※誉め言葉

イベントシーンは戦闘シーンでも使われている絵がそのまま動くので、キャラクターの細かい仕草や芝居も見られますし、メニュー画面から何時でも各ユニットのアニメーションが見られるので大変捗る…もとい助かりました。


あとこのゲーム、異様に獣人の解像度が高かったり、種類がかつてないほど豊富なんです……何故。
この他にももっと存在するのですが、あの実に艶めかしいキツネとかフクロウ見ていると、その筋の匠がいるとしか思えないんですけど……


みんな、ユニコーンオーバーロードしようぜ!


さて長々と書き連ねてきましたが、とにかく本作はS・RPG好きなら嫌いになる理由が見当たらないほどに完成度が高く、王道の懐かしさと新たな時代を拓く独創性を兼ね備えた大傑作です。
難易度もそれほど高くないので、コツコツとレベル上げしながら仲間や装備を揃えて行けば途中で詰まる事もないくらい間口の広い作品に仕上がっていました。

既に50万本を売り上げるヒットを飛ばしており、他のヴァニラウェア作品のように口コミで長く売れ続けていくとは思いますが、それでもこのレベルの大傑作ならばもっともっと売れてもおかしくない。
S・RPGというジャンルが好きな人、無数の英雄たちが活焼する戦記物が好きな人、試行錯誤しながら最適な組み合わせを探すデッキ構成が好きな人、ぜひとも本作を遊んでもらって、頼んでもないのに「好きな編成発表ドラゴン」と化したり、エッッなファンアートが溢れてくれなきゃ俺の気が済まないんだよ!

だからみんな、ユニコーンオーバーロードしようぜ!


おまけ


好きな編成発表ドラゴンが、好きな編成を発表します。


好きなキャラクターで固めたら、大抵どんな敵にも対応できてしまったアレインと正妻候補の皆さん(もちろん前衛の男もそう)
スカーレットは回復から魔法攻撃、前衛への攻撃バフとマルチに動き、ロザリンデは物理と魔法の両属性に加えて咄嗟の回復役もこなしてくれる。
メリザンドは中盤で火力不足に悩まされたけど、後半からはクリティカルの火力が上がり、重装系の敵だろうとゴリゴリ削ってくれるように。
前衛の二人は範囲攻撃も単体攻撃も火力高くてしかも打たれ強いので、中盤から最後までずーっとエースとして活躍してくれました。


多分みんなよくやる「開幕ノーチャージドラゴンダイブ」の自家版。
前衛の一人が飛行ユニットの行動速度を上げ、ヒルダがチャージしたらもう一人の前衛が白猫耳フードで即チャージ完了。
そこに必中、改心、攻撃バフをかけてヒルダがドーンしたあと、残りの二人の行動速度を上げて、グリフォンルーラーの二人で追撃するという編成。
後半はこれで敵を喰いまくったのだけど、フクロウ姐さんやシャーマン系のバフ解除を喰らうと全て台無しになってしまったり。
まぁそれでも割と何とかしてくれた。


初期に何も考えずに騎兵と盾持ちで固めてみたら、最初から最後までずーっと大活躍してくれた切り込み隊長たち。
後半からはデバフ対策や、中央にドルイドを配置してデバフを撒く必要があったけれど、特にあれこれ考えなくても騎兵はシンプルに強いから有難い。


最後に発表するのは、後半で余ってしまったキャラクターで適当に組んだら、打たれ弱いが予想外の火力を叩き出して敵兵を喰いまくった暴力系女子チーム(マテ
アーマリアは高火力を活用するまでにやられてしまう事が多かったけれど、その間にセルフバフをかけた二人のブレイカーが敵を一層してくれるという感じ。
何よりクロエがサポート役として優秀で、本作は一見地味に見えるユニットがちゃんと強いのが素晴らしい。


さらにおまけ


ところで本作『ユニコーンオーバーロード』は、とってもKENZENな女の子がいっぱい登場する神ゲーなんですよ(ニッコリ



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