見出し画像

アニガサキ2期に1期ほど惹かれない訳〜高咲侑のことを考えながら〜

こんなタイトルにしておいてなんだけれど、つまらないだとかネガティブな意味では決してないのだということは前置きしておきたい。正確にいうと惹かれないというよりは1期に感じていたものはもう味わえないのだなぁ、ということを2期3話が終わった直後にまざまざと感じたのだ。

今更前置きするまでも無いが、高咲侑はスクスタの"あなた"を基礎として生まれたアニメオリジナルキャラクターだ。アニメのみの視聴者だと、「侑ちゃんが1番好き」という人もいるくらいで、ここまで人気が出るとは私も予想外だった。
アニメ一期が終わった頃書いたnoteを読み返したら「何でグッズないの!?」と半ギレ気味の私の文章が書き殴られていたが、今では当然のように侑のグッズが売られ寝そべりも展開している。可愛いね。

アニメ1期において音楽をやりたいという夢を見つけた侑。普通科から音楽科への転科試験を受けるところで1期の物語は幕を閉じた。
2期では音楽科に無事転科出来たようだが、赤点気味で同好会での活動も重なり大変な毎日を送る中、香港からショウ・ランジュが転入してきて…。まぁあらすじはそんなに問題では無い。


アニガサキ2期は現在3話が終わったところだが、今のところとても良い。波乱だったスクスタ2nd seasonすら包括してやろうという気概に溢れている。元々のストーリーの云々を置いといてもランジュのようなキャラクターは扱い方を間違えると大変なことになりがちだが、そのフォローは非常に行き届いていた。
だが、何か、アニガサキ1期の時に感じていた何かを感じれない。つまらないなどということは決してないのだが、何なのだろうこのモヤっとしたものは。
ということを考えながらアニメ1期のオフィシャルブックを読み返していたところこんな文章に行き着いた

ー侑はファンの代表という位置づけだったわけですね。
「そうですね。なので当初は侑のバックボーンはあまり描かないでほしいと伝えていました。もし侑の過去に強いドラマがあったりすると、視聴者と乖離してしまいます。侑には視聴者が同じ目線で没入できる人物であってほしかったんです」
〜P94:監督:河村智之インタビュー〜
ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会TVアニメオフィシャルBOOKより

なるほど。確かにあれだけ強烈なキャラであるわりに侑のバックボーンは歩夢の幼なじみであること以外驚くほど不確かだ。誕生日すら不明である。
そしてその不透明な分、観ている私=侑として機能し、彼女を通しては私は虹ヶ咲9人の物語を観る。実際そのように感じていた。
少なくとも1期は。

2期にそれ、つまり高咲侑のことを視聴者と同じ目線として没入できる人物と感じられるか?ということを考えると、少なくとも私はNOだ。それは何故だろうか?

それは1期に感じていた、何千、何万という数の"あなた"の現し身である侑を通してあなたの1人である私は物語を観るという作品の構造があったからだ。
しかし、ファン代表高咲侑という存在と、1人の高咲侑として独自の存在をどう確立させるのか、させないのか、という彼女がどこへ辿り着くのかという問題。
そしてあなたでありながら私の手を離れてしまう不安とも、焦りともつかない(正直地雷を踏み抜かれてしまうのではないか、という一種の傲慢な)あの感覚。
まるで押し倒した時の歩夢のようだ。
私はラブライブ!というコンテンツにずいぶん長いこといる。その長い時間のなかで「10人目のあなた」という言葉について考えたことは1度や2度ではない。そんな人間が10人目のあなたという具現化である高咲侑という存在に何も思わないはずが無い。

しかし逆にその私というあなたと、高咲侑というあなた、という紙一重のヒリヒリする感覚こそ、私がアニガサキにおいてもっとも惹かれていたものだったのだ。2期では侑があなたというところから一歩を踏み出して行ったことでそれが無くなって(少なくとも前面に押し出されることはなくなった。今のところは)これまでほど侑と1人のキャラクターとして観ることが出来る様なったことで没入できなくなったのかもしれない
正直ムキになっていたとも言えるかもしれないが、しがらみがなくなりある意味フラットな目線で2期を味わっているのかもしれない

侑にこれまでほど没入できなくなったのは、それだけではないのかもしれない。
虹ヶ咲の9人が(虹ヶ咲に限らずほかのグループも)アニメ化までに様々な活動を通してキャラクターとして確立されていったように侑もまた1期という時間や、素顔のフォトエッセイ、矢野妃菜喜さんの活動の成果もあり、バックボーンを描かなかった高咲侑という人間にバックボーンが産まれたからだということに気づいた。そして、高咲侑の人間としての解像度が上がり、彼女個人が好きになっていけばいくほどその反面
侑≒あなた=私という図式の≒の幅が広がっていく。それがいいことなのか悪いことなのかは私はわからないが。

何度も書くが決してアニガサキ2期は面白い。ランジュ、ミア、栞子の追加メンバーのフォローも行き届いているし、話の流れにも無駄がなく、非常に上手い。小ネタの回収も丁寧でさりげない。1期に積み立てられた信頼を裏切らずに展開されている

2期の侑はもはやあなたの現し身ではない。確立した高咲侑として存在している。あなたから巣立っていった彼女には安心感もある。だからと言ってあなたであることを捨てたわけでもない。まさかの「NEO SKY, NEO MAP!」のピアノverがエンディングに来るなどとは思いもよらなかった。さすがに拍手を投げずにはいられない。

高咲侑として確立した彼女がどこへ向かうのかの関心は尽きない。しかしあの1期に感じたあの感覚はきっともう味わえないし、今後もラブライブ!というコンテンツであんな体験をすることは無いだろう。というのも、また思ったことだ。

この記事が参加している募集

アニメ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?