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『serial experiments lain』ゲームではないと評価された怪作

メリー・クリスマス・イブ!

本日、世間はクリスマス・イブですね。
そう、クリスマスで人生を変えたゲームと言えば……
『リンダキューブ』(1995年)
『リンダキューブ アゲイン』(1997年)
『リンダキューブ 完全版』(1998年)
ですね!!!
双子の兄弟のサンタ服、好きな人には好きなシチュエーションではないでしょうか?


リンダキューブ

さて、私の文字通り人生を変えた、ターニングポイントとなったゲームについて語りたいと思います。

『serial experiments lain』

有名なゲームなので知っている方は多いのではないかと思います。
私がこのゲームを知ったのは、『きみとぼく』という雑誌のテレビCMで聞いた、爽やかな声の子安武人さんの宣伝でした。強烈に印象に残っています。かなり昔の記憶なので覚えている方は一言よろしくお願いいたします。

PS版『serial experiments lain』

serial experiments lainとは、書籍+イラスト雑誌連載、ゲーム、アニメが相互に補完しつつ同時進行するという、当時は珍しかった「マルチメディア企画」である。通称lain。
特にアニメ版の評判が高く、同作は実写やデジタル映像の組み合わせなど、現在のデジタルアニメーションに影響を与えた。中村隆太郎監督作での傑作のひとつではあるが、その構成の複雑さと極めて無機質に統一された表現手法は、非常に人を選ぶ。
また、アニメ版は国内以上に海外での人気が高く、現代でもgeekの間で時々引用されている。
「serial experiments lain」は直訳すると「lainについての一連の実験」。その通りの野心・実験作である。

https://dic.nicovideo.jp/a/serial%20experiments%20lain

アニメ版lain

『serial experiments lain』(以下、lain)は様々な意味での”実験作”でした。とりあえず、興味がある方はアニメ版lainを視聴してlainという空気感を感じて頂けると幸いです。
アニメ版lainはとても評価されたアニメです。難解なlainというゲームを、かなり分かりやすく描いてくれています。音楽も素晴らしく、オープニング、エンディング含め心に染み渡る曲です。音楽的な演出も素晴らしく、あるノイズの音が聞こえてきたときは電波を感じ取れた様に思えたほどです。
私は牧野慎一郎さんがアニメにワンカットだけ映っていた事に感動しました。

lainが出現したのは1998年、iMacが発売された年である。
現在ではあまり珍しくない「技術の発達により現実と仮想が曖昧になる」類の世界をモチーフにしているが、似たようなテーマを持ち、テレビで放映されて人気を博した「電脳コイル」や「攻殻機動隊」とは大きく異なる。また「Web上での事件を共有する世界」「メディアミックス」という類似点を持つ「.hack」ともひどく異なる。
まず「ネット世界を扱う」とあるものの、スタッフに専門的な知識を持つ人物、いわゆるハッカーやgeekが多いためか、遠慮解釈もなしに(当時の)ハッカー文化や、自作PCにまつわる設定・描写が取り込まれている。そして非常にSFチックな、しかし技術的には現実の自作PCをベースにした擬似PC「NAVI」と、現実のWebが進化したような仮想世界「ワイヤード(Wired)」にまつわる描写、そしてワイヤードやリアル上で狂奔する98年当時のハッカーらの"アナーキーぶり"がものすごく濃く描写され、異常なほど鋭い非現実感が演出されている。

https://dic.nicovideo.jp/a/serial%20experiments%20lain

上記の引用は主にアニメ版lainで描かれた、1998年当時のGeek文化のクオリティーの高さについて書かれています。
アニメの評価がかなり高い作品だと言うことは伝わったでしょうか?
ではゲーム版lainについて、語りたいと思います。


serial experiments lain - Layer 13 EGO

ゲーム版lain

私はこのゲームをプレイし、3回ほどコントローラーを投げ出しました。ネット上での口コミ通り快適なゲームとは言えない操作性、そもそもゲームなのかこれは? と何度も頭の中で迷いの言葉が反芻する中、購入に費やした金額を思い出しプレイを続けました。

ゲームを起動すると、目の前に現れた通称ペルソナLainがデータを再生してくれる。いくつか再生すると、データは「玲音」「柊子」の二人を中心とした日記、二人のカウンセリングの記録が中心となっていることがわかる。
二人のパーソナルなカウンセリングの会話記録や柊子視点の上司に対する報告書、柊子自身の日記、玲音の日記、合間合間に挟まるムービーデータ……それらを読み解いていくと、柊子は玲音のカウンセリングの主治医であり、玲音は強い幻覚症状を訴え、玲音の母親にカウンセリングに連れて行かれた経緯がわかる。そして、少しずつ二人の関係がカウンセラーと患者から変化していく。最後には……というゲーム内容です。

ゲーム版lainは”データを発掘して繋げて情報を読み解いていく事”をゲーム内で体験させるコンテンツだと思っています。このゲームを遊び終わって、どういうゲームかと問われると「ネットで情報収集することをゲームにした」という表現が一番しっくりするかなと思います。
ですので、データを集めきったと思ってゲームを片付けた後、公式ガイドを読んだ際、まだ未回収のデータがあると気づいたときのショックは大きかったです。そして、意図的に消されたデータの存在などを知ると、神の視点でプレイしていたはずの自分が急に誰かの陰謀に巻き込まれているのではないか、という感覚に襲われます。

このゲームを遊んで、みなさんがどう思ったか、どう感じたか、それぞれの人が感想を抱いていると思います。
ゲームが発売されて20年以上経った今現在でも活発にファン活動が行われ、2019年には二次創作ガイドラインが発表されました。やはり愛されている作品は未来永劫愛されていくのだなと思った発表です。

lainの中で提示された「存在」

lainの中では様々な技術が描かれています。人工知能や合成音声、ロボット開発、発達したネットワーク環境などが示唆されています。
そして、その技術を玲音が習得し利用していくと周囲を取り巻く環境が少しずつ変化していきます。離婚して出ていった父親、存在するかどうか怪しい親友、自殺した研修員など。様々な「存在」を考えさせられる内容が投げかけられてきます。
肉体を持った人間は存在しているだろう。優しかった専業主婦の母親は存在した、離婚した玲音の父親も家庭に居たときは確実に存在していた。柊子が会いに行った玲音の複数の友人は存在していたでしょう。
では、引っ越してしまった玲音の友人は? 玲音に情報を与えていた「ウサギさん」は? 柊子の彼氏は? 過去の自分は? 存在していると言えるのでしょうか……。
投げかけられた情報から、様々な結論が導き出され、答えはプレイヤーの数だけ存在すると思います。そして、このゲームをクリアした自分の中に確実に「Lain」という存在がインストールされたと理解できたでしょう。

lainは遍在する

serial experiments lain - Layer 13 EGO

どのように私に影響を与えたか

私の”記憶”の中に強くlainが存在したように、ネット上に多くのlainが”記録”されたように、lainはとても強く影響を与えてきました。lainという存在の熱量を抱えたまま、私は2018年、偶然にもとある記事の数ヶ月前にlainのイラストレーターである安倍吉俊さんに会う機会がありました。
その時、安倍さんに「君、イラストがオシャレだね」と一言いわれたことは、クリエイターとしての道を歩んでいこうと思ったきっかけのひとつです。あのときは本当にありがとうございました。今も元気にゲームを作っています。

↓ その数カ月後の4gamerさんの記事

lainの小ネタ:牧野慎一郎の出身大学はミスカトニック大学

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作中では牧野慎一郎は”ごく普通のサラリーマン”という紹介でしたが、玲音がハッキングしたデータによると「ミスカトニック大学・博士課程 橘総合研究所生物工学組織員」と書かれています。
ミスカトニック大学とは、H・P・ラヴクラフトなどのクトゥルフ神話に関連した様々な作品に登場する架空の大学です。牧野さんがミスカトニック大学出身であることはお遊び要素の側面が強いですが、このキャラクターの運命づけられた終わりに相応しい出身大学ではないかと思われます。上記の4gamerさんの記事でも答えてましたが、脚本家の小中千昭さんの趣味でしょう。『蔭洲升を覆う影』も丁寧にジャパナイズされたクトゥルフ映像作品でしたので、もし興味があれば見て欲しいです。
また、このハッキングから牧野さんが橘総合研究所の人間だということが玲音にバレていることも知れます。これがどういう意味なのかはこのゲームをプレイしてみてください。

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