振り返り

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『永遠と横道世之介 上・下』感想

どれだけささやかなものであれ、手元にある幸せがずっと続けばいいのに、という願いは誰しも共感する。世之介の予感は正しい。ドーミーの設備は高額の更新費用を必要とするし、上司である南郷の華やかな時代はあっという間に過ぎてしまう。そして哀しいことに、愛する人の命も等しく有限性のループに絡め取られている。 父親・母親は世之介のビッグチャンスよりも、それで多忙になることで健康を損ねないかのほうが心配だ。ドーミーで祝宴をひらく予定の世之介にとっては物足りない気もするが、長崎から上京してカ

    • いい加減にやる

      「これは関西人やったら皆そうやからな、知らんけど」という雄弁な言葉を添えて脱線を繰り返す。福岡・博多は特に誘惑の多い街だったのかもしれない。「九州に"まともに"来るのは初めて」という彼は十年来の友人である。 歩けば焼き鳥・餃子・もつ鍋と、いわゆる博多グルメがずらりと並ぶ。九州にしか展開していないチェーン店や、ここぞとばかりに軒を連ねる飲食店に心が躍る。 飲み歩きが最たる目的だから、ラーメン屋の開店する時間ぐらいに集合する。人気店といえば聞こえはいいが、ここまで行列に耐えら

    『永遠と横道世之介 上・下』感想