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【ネタバレ】護られなかった者たちへ

かなり切なく、そして考えさせられた本をご紹介します。

「護られなかった者たちへ」は中山七里作で2021年に映画化された社会派ミステリーです。

仙台市内で拘束された上に飢え苦しませて餓死させる他殺体が発見されたことから連続殺人劇が始まります。

被害者達は善人として名が知られており、どの人に聞いても悪評がなく、無惨な殺され方をされる謂れもないため、事件は混迷に入ります。
しかし、被害者達がある地方で生活保護を担当していたことから、その共通点として、本作の主人公とも言える利根に辿り着きます。

ここまでくるとわかる通り、「護られなかった者たち」というのは生活保護を受けている方々で、被害者達は一公務員でした。

公務員であるが故にシステマチックに動かざるを得なく、加えて生活保護の審査は厳格にするようお達しもあったことから、書類不備等は弾く必要があります。
そして弾かれてしまった人は寄るべもなく、飢えてしまうのでした。
そういった恨みを買ったための凶行ということで刑事達は利根を追うことになります。

また、物語は刑事である苫篠と容疑者となった利根の2つの視点から描かれます。

過去、利根はある老婆と疑似家族として過ごしてきましたが、老婆が生活保護の審査を落とされ、そして餓死したことに憤慨し、福祉事務所で暴行騒ぎを起こしてしまいます。
その際に関わったのが今の被害者達になりますが、そのために刑務所暮らしになってしまいます。

この老婆との関わり合いが物語の中で長く語られていきますが、結末を知った上で語られる温かな話はより切なくなってしまいます。

そして、利根の半生を読んでいくにつれて、小さなモヤっとした違和感を感じていくことになると思います。
そのまま読み進めていくと、流石は「どんでん返しの帝王」と言われた中山七里先生と言わざるを得ない結末が待っております。
(個人的にはどんでん返しがあって、またどんでん返しがあった印象です。)

ミステリーの技巧と社会風刺を見事に混ぜたすごく重い物語でした。
生活保護という重いテーマのためにこれを記事にするのはある種の恐怖はありましたが、あまりにも痛切な物語に思わず筆をとってしまいました。
これから読まれる方は心して読んでください。


最後に、私はまだ劇場版を見ていませんが、表紙の清原果耶さんに「んっ?」となってます。
劇場版ではどうなっているのでしょうか?
これは見ないといけませんね。

護られなかった者達へ
中山七里

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