がんが怖い。

「こうめちゃんね、がんが怖いの」
 
それはこうめちゃんが一年生の時。私の膝の上でポツリとつぶやいた言葉です。小学校一年生がこういう事を言うのには少し早いと思うのですが、これには理由があります。
 
実は、私、Umeはがんサバイバーです。手術を2回受けています。こうめちゃんは大人の話が聞こえたのか、こうめちゃんのお母さんも手術の付き添いに来てくれたからか、きっと私ががんだと知っていたのです。もしかしたら、こうめちゃんのお母さんが、誤魔化さずにちゃんと伝えたのかも知れません。
 
それを聞いた時、どうしたら良いのか、分からなくなりました。

こうめちゃんは、きっとがんが何か、はっきりわかっているわけではないと思います。ただ、きっと怖いものだというイメージがあるのでしょう。Umeちゃんが死んでしまったかもしれないもの。きっとまだ『死』と言う感覚すら掴んでいない子どもには難しい話だと思います。
 
こうめちゃんは、とっても怖がりです。
石橋を叩いて渡らないタイプ。ただ、安全だと分かるとどんどん進んで行く子でもあります。時には、叩いても渡りたくない橋を負けず嫌い根性で渡れる子でもあります。
 
だから、しっかり教えてあげたかった。石橋は安全だよと。この世界は、そんなに怖いところじゃないよ、と。
 
「こうめちゃん、今、楽しいこといっぱいある?」
 
その答えは、イエスでした。
 
「そしたらね、楽しいことをすっごい楽しむの。そうしたら、体も心も元気になるから、がんにはならないよ」
 
「Umeちゃんはね、頑張りすぎて楽しくない時があったんだ。だからがんになったんだけど、ちゃんと治ったでしょう? こうやってこうめちゃん抱っこしてると元気になるから、きっともうがんは戻ってこないよ」
 
こうめちゃんは、何を思ったのかわかりません。でも納得するようにしばらく私の膝の上に滞在し、言われた事を飲み込んでから元気に遊びに行きました。
 
この世は、子どもには理解できない色んなことで溢れていて、それは時に恐怖を呼び起こすかも知れない。でも、この世にはたくさんの素晴らしいことがあって、光で満ち溢れている。子どもがそんな希望を持って生きていける世の中が続くといいなと、心から思います。