雲丹の研究
皆さんは、雲丹がお好きだろうか。
間髪入れずに「好き!」という人もいれば、「うーん、嫌いではないよ」くらいな人もいるであろう。
感覚的には、好きな人の方が多そうな雲丹であるが、非常に個体差があり、ハイ・ボラティリティなガチャ感のある食材に思える。
鮨屋では大将が雰囲気を和らげるために「これ、乗せるだけですからw」と自虐で茶化してくれることもあるように、「何を仕入れるか」という素材でほぼ決まってしまうものである。
雲丹は鮨屋や和食屋、フレンチにもあるし、イタリアンだとカッペリーニに乗って出てくることもある。
個人的には雲丹は生で食べるのが一番美味しくて、中途半端な価格帯の和食屋にたまにある「雲丹の炊き込みご飯」は美味しいと思った記憶がない。
生で出せない雲丹は、クオリティが微妙なので、温めて誤魔化そうとか、そういう魂胆すら感じるようになった。
客単価3万円以上の高級鮨屋だからといって、雲丹が美味しいとは限らない。コース3.3万円支払って、衝撃的に不味い雲丹を食べたこともある。
鮨ネタで雲丹は鮪に次いで高額な場合も多く、鮪や雲丹にどの程度原価をかけるかで原価率は結構変動しそうである。中途半端な鮪や雲丹を使って、高額なコースに仕立て上げている鮨屋はぼったくりな可能性が高いとすら言える。客単価2万円前後で鮪や雲丹がイマイチなら、まだ納得できる。
雲丹のクオリティは鮨屋の経営姿勢が垣間見えるとすら感じており、不味くて安い雲丹で客単価3万円以上の鮨屋は、リピーターは捨てて、(主にインバウンドの)一見客を焼畑的に刈り取ろうという魂胆すら感じる。
雲丹は、高級店だから美味しい。とは限らないのだ。
雲丹の3つの種類
怨念の籠った前置きが長くなった。雲丹の研究、である。
雲丹が好き!という割には、雲丹の種類を大して把握してない人も多いのではないだろうか。
かくいう私も、近年まではさほど気にしていなかった。ここ数年で、夏に赤雲丹を食べる機会が何度かあり、普通の雲丹より全然美味いな!と感じたので、夏(6〜9月)は特に飲食店で雲丹があると産地を聞くようになった。
雲丹の種類だが、大きく分けて3つといえる。
大抵のウニはムラサキかバフンであり、ムラサキは白っぽく少し大きめ、バフンは赤みが強めで小さめである。キタムラサキはムラサキより大きい。エゾバフンはバフンより大きい。
赤雲丹は後述する。
もちろん北海道以外でも雲丹は取れる。下記が漁獲量ランキング県のトップ10だが、北海道のシェアが50%以上で圧倒的。次に東北地方、九州が多い。
北海道の雲丹産地解説
雲丹の生息地としては我が故郷・北海道が有名だが、私は内陸の出身なので関係ないw
これが筆者自作の北海道・雲丹マップである。
雲丹はどんな餌を食べるかで味が決まるという説があり、良質な利尻昆布を食べて育つ利尻・礼文の雲丹は有名だが、昨今はそんなに量が取れていないと聞いたこともある。
同じく日本海側では夏は積丹・小樽・余市の雲丹も有名であり、聞くところによると積丹は海も「積丹ブルー」という名称があるほど綺麗な青色で、積丹の雲丹が美味い説があるが、食べたことはない。
この辺では5月末から雲丹漁が解禁され、実際に2023年5月に小樽に雲丹丼を食べに行ってきたが、さほど美味しくなかった。
札幌の鮨屋でヒアリングしたところ、「あの店は商売上手ですからね」的なコメントをされており、クオリティの低さを暗喩されていた。
また、漁解禁直後はさほどまだクオリティが高くないと聞く。
仮説として、産地に行けば新鮮で美味しい雲丹が食べられるわけではなく、信頼性の高い業者から仕入れた方が美味しいのではないか。と思った。
積丹の雲丹は食べてみたいですけどね。余市は雲丹ノ蔵というお店が有名なようで、そちらもそのうち行ってみたい。
日本海側の雲丹は夏が漁期であり、厳密には6〜8月。オホーツク海側は1月から6月と言われており、主には羅臼産が多いように思う。振り返ると、冬に鮨屋で登場する雲丹は「羅臼です」と言われることが多かったような気がする。羅臼はエリアを拡大すると、根室近辺までとなる。
ちなみに、羅臼は道民でも馴染みがある人の方が少ない地名であり、雲丹好きじゃない道外の人が聞いても、場所を当てることは難しそうである。
太平洋側の函館は記事で見ただけですが特殊で、漁期が2回ある?らしい。6〜8月の夏と、11〜2月の冬。
雲丹の4大ブランド
雲丹を語る上で、外せないのが「どの加工業者が良いのか」という話。
特に鮨屋ではカウンターで木箱から雲丹を取り出す様子が見えるので、その木箱に貼られたタグというかシールでどこの雲丹かがわかりますし、大将によっては「雲丹です」ではなく「はだての雲丹です」と修飾してくれる。
私の感覚的な知名度として、はだて>橘>他2つで、はだてが断トツで耳にします。さほど雲丹ラバーじゃなくとも、はだての名前は聞き覚えがあるはず。この青いシール?に見覚えあるはず。
大千もムラサキウニが強そう。
立派な大きさです。
こちらは橘。緑のシールが特徴的。
東沢はそんなに聞かないので割愛。
知名度や頻出度では小川商店(北海道洞爺湖エリア)の小川のうにもよく見かけますが、4大ブランドとは称されていないようです。小川はバフンが強い印象があります。
マニアックな分析だが、1gあたりの単価で比較するとこうなる。
もちろん、商品や時期によって価格差はあるだろうが、ムラサキの方がバフンより単価が高いというのは、過去に多くの鮨屋で食べてきた経験から、納得できる。
筆者が食べた下記のキタムラサキウニは(ほぼ?)原価出しで7,000円とのこと。
こちらはバフンウニでたしか3,500〜4,000円。
鮨屋の視点で考えると、中目黒の某ウニバーサルスタジオ以外は雲丹を売りにしているお店はさほど聞かない。
実際に「乗せるだけ(合わせる海苔を考えたりはするが)」なので、力量を発揮しづらいし、仕入れ価格も高いので、雲丹にすごく力を入れることは避けようと考える心理は理解できる。
なので、エゾバフンウニではなく、バフンウニにして、コースの終盤。穴子の前あたりで「一応、ウニもお出ししますよ」的にこっそり配置されるケースも少なくないように思われる。
冒頭で述べた通り、雲丹はボラティリティが高いので、中途半端な雲丹は不味い。苦い。ナンジャコリャ感ある。そんな代物を出すくらいなら、潔く雲丹はコースから外してほしい。
本当にいい鮨屋なら、「追加で雲丹ありますか?」と聞いて、仕入れた雲丹がイマイチだったら、正直にそのことを告げてくれる気がする。いや、雲丹がコースに含まれてないこと自体が、ほとんどないことではありますが。
ムラサキとバフンを主戦場とした、主に北海道中心に展開される4ブランド(+小川)の話は、以上。
赤雲丹って知ってる?
ようやく本稿のメインディッシュとなる赤雲丹について。
実は赤雲丹を知らないグルメ好きな人も少なくない。私自身も認識したのはここ数年である。
赤雲丹は主には夏の西日本で漁獲され、西日本で消費されることが多いらしく、関東のレストランで食べる機会はそう多くないのかもしれない。
ネットや鮨屋にヒアリングして調べたところ、赤雲丹も形は数パターンあり(主に2種類か?)産地はこんな感じ。
由良の赤雲丹は「逆手雲丹」とも呼ばれており、箱詰めにされる時に普通の雲丹とは計上が逆。アイキャッチ画像にした雲丹は由良の赤雲丹であり、筆者が自分で購入して雲丹丼にして食べた。
元麻布の某鮨屋で今年食べた由良の赤雲丹の握りはこちら。
推測するに、上記の雲丹を2つくらい乗せる感じだろうか。食べる時に数えなかったがw 由良の赤雲丹の80gを目視で数えると、16個くらい入っていたので、2個使うと2,000円くらいな感じ。キタムラサキウニ7,000円には負けますがw 赤雲丹一貫2,000〜3,000円の原価と考えると、リアリティある。
あくまで個人的な感想ですが、赤雲丹の方がムラサキやバフンより上品で強い甘みを感じます。ムラサキは振り返るととにかく冷えてるな!というのが多かった気がする。冷やすことが推奨されてるのかは知らない。
他のサイトにも、北海道の雲丹(ムラサキやバフン)は大味で、赤雲丹は繊細というか甘味が強く、芳醇。的な表現を見かけました。
8月に横浜の鮨屋で食べた唐津の赤雲丹はこちら。
赤雲丹の産地でよく耳にするのは唐津や天草です。
こちらのサイトが詳しいので、より深く知りたい方はこちらへ。
食べたことないのですが、横浜の鮨屋の大将によると(個人の好みですが)赤雲丹は萩が一番良いとのことです。安定的に市場に出回っていないようなので、レア感ある。
ちなみに私がECで買った由良の赤雲丹の賞味期限は「当日」であり、やはり雲丹は足が速いため、山地の近くで消費するのが良さそうです。
関西の和食屋などでは見かける機会も多いらしく、昨年は写真NGの京都の某食べログゴールド店にて赤雲丹をいただき、すごい美味しかった記憶があります。
とはいえ、都内でも多くはないですが赤雲丹を扱うお店はあります。ナマモノなので旬な時期ならいつもあるわけではなさそうですが。
写真下手すぎですがw 2022年8月に日本橋某店で食べた赤雲丹。
六本木一丁目某店で2023年7月に食べた雲丹。赤雲丹だった気がするけど、違ったらすいませんw いずれにせよ美味しかった。
一応最後にg単価比較を。私が買ったのは16,200円で80gだったのでさほど単価が高くなかったですが、他のより高級なものだとg単価300円を超えてきます。大千のムラサキの単価が高すぎたのかw 平均すると赤雲丹の方がムラサキよりg単価は高そうです。
唐津や天草、萩は価格が出てこず…
良い赤雲丹は、多くのムサラキやバフンのような大味さではなく、繊細で芳醇な甘味があるので、雲丹嫌いだった人でも少し価値観が変わるはずです。
都内では扱う店は少なそうですが、機会があれば意識して食べてみてください。関西の高級割烹でも夏に使用される機会はありそう。
雲丹をなぜ不味いと感じるのか
雲丹、不味いな!と思った経験は多くの人に一度はあるのではないかと思います。
よく言われるのが、(型崩れしないように、保存のために)ミョウバンを使っているからだと。
ミョウバンの量が多すぎたり、ミョウバンが雲丹の苦味を引き出す説があり、「ミョウバンを使っているからダメ」と一概にはいえないそうです。濃度の調整が難しかったり、型崩れしないために使いすぎてしまうこともあるそうです。板雲丹(箱に入ってる映えるやつ)は見栄えが良くないと微妙なこともあり、ミョウバンの匙加減は難しそう。(出典:こちら)
塩水雲丹という手法もあり、ミョウバン不使用なのですが、粒の形が崩れてしまうリスクも高く、映え的には難易度が相当高いです。
ミョウバンか塩水かというのもありますが、個体差自体もそれなりにあるように思えますし、鮮度もあると思います。
かなり、ガチャ感が高いわけですが、個人的には高級店ではない居酒屋とか和食屋での謎の雲丹炊き込みご飯とか、そういうものはオーダーしないようにしています。単価がさほど高くないお店の雲丹の仕入れ価格が高いわけがないと思うからです。
私は鮮度とか怖くて都内の回転寿司屋に行ったことがないですが、回転寿司とか居酒屋で雲丹を食べただけで、「雲丹不味いなあ」と思ってしまった人は、「安い店の雲丹が美味いわけねえだろ」と主張したいですね。ミョウバンが濃い(≒保存期間も長い)安い雲丹を仕入れているはずであろう。と。
雲丹食べ放題!とか雲丹だらけ!なお店とかあったら、ちょっと危険を感じますね。
高級食材はクオリティがピンキリであり、蟹にも雲丹と同じようなことは言えそうだと思います。安い店の蟹が美味いわけねえだろ。という。(注釈:「蟹臭い」という蟹は、足が折れて水が入った腐敗臭で臭いらしい。と、鳥取の蟹屋さんに教えていただきました)
冷製料理を彩る雲丹たち
最後に、今シーズン食べた、冷製料理を彩る雲丹たちの写真を載せて終わりとしましょう。主には鮨屋や和食屋で楽しむ機会が多い雲丹ですが、洋食でも登場します。
カッペリーニ・フィーチャリング・雲丹。は組み合わせとしては結構好きです。
おまけで。。。
一度、雲丹漁とかに行って、自分で剥いて食べてみたいですね。
個体差もあるため、雲丹はガチャ感がありますが、「信頼できる高級店で食べる」ことや、下手な店で食べないこと。観光客向けの雲丹ビジネスに引っかからないことなどで、雲丹ガチャのリスクをコントロールできます。
赤雲丹を食べたことがない人は、今シーズンはもう終わりそうですが、来シーズンぜひ食べてみてください!私は来年は萩の赤雲丹を食べたい。
夏休みの自由研究的に、雲丹の自由研究でした。
どのレストランで食べる雲丹が美味しかったか?などの情報、お待ちしております!
注記:客観的ファクトもできるだけ散りばめましたが、個人の感想が多いので「こいつ分かってねえな」などの、自称グルメな人からの心無いツッコミはご遠慮ください。
私は普段はnoteでスタートアップや投資関連の記事を書いていますが、趣味記事は下記のまとめの中段以下にまとめているので、ご興味のある方はどうぞ。趣味記事はグルメや旅行関連が多いです。
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