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アフリカにおける日本企業の動き(2020年9月)

毎月、アフリカにおける日本企業の動向をまとめています。

9月は、豊田通商、三菱商事、三井物産と商社のニュースが多かったです。また、日本企業によるアフリカ企業の買収でもっともシナジーがあり事業ポートフォリオ上うまくいっているNTTの事例も取り上げています。

今回取り上げたニュースはいずれも、「週刊アフリカビジネス」というニュースレターから抜粋したものです。週刊アフリカビジネスでは、毎週タイムリーにニュースをお伝えしています。

また、週刊アフリカビジネスでは、毎週主要なニュースについて、チャートやグラフ、解説を加えています。今月だと、たとえばヤマハ発動機の出資先である配車アプリMax.ngにからめて、アフリカにおけるモバイルモビリティースタートアップ(配車、物流、宅配、小売宅配、レストランデリバリー、eコマースなど)を分類し、解説しています。NTTのニュースに関係して、アフリカにおけるデータセンターについても解説しています。

週刊アフリカビジネスの詳細や、購読企業のリストについては、以下からご覧ください。

そもそも、日本の企業ってアフリカで何しているの?と思った方は、こちらに600企業弱の情報を一覧にまとめてありますので、みてみてください。

1本目は、たびたび取り上げている、アフリカにおけるトヨタとスズキの協業ですね。

【アフリカ全般】トヨタ自動車がアフリカで小型車の販売を開始。スズキからのOEM車を豊田通商が販売。小型車販売台数を50万台まで増やす(9/1)

アフリカでトヨタ車を販売する豊田通商は、スズキから供給を受け、アフリカにおいて小型車の販売を開始する。

スズキのインド工場から小型車バレーノのOEM供給を得て、トヨタ車スターレットとして、9月中旬よりまずは南アフリカで販売を開始する。その後同社が販売拠点を持つアフリカ47カ国での販売を行う。価格は約130万円とし、個人向けの小型車市場を狙う。トヨタ自動車がアフリカで販売する車種はこれまで政府公用車や商用車などの中大型車が中心だった。

トヨタ車のアフリカにおける2019年の販売台数は約21万台。小型車の販売により年間50万台を目指す。アフリカの自動車市場は、2018年に中大型車88万台、小型車38万台の計126万台だったところ、豊田通商は、中長期的に中大型車120万台、小型車80万台の計200万台規模まで成長するとみているという。

(コメント)トヨタ自動車とスズキは2018年から協業を進めています。アフリカについて、スズキのクジャラート工場で作った小型乗用車をアフリカでトヨタ車として販売することで合意しており、2019年には、OEMの対象となる車種としてバレーノ、ビターラブレッツァ、シアズ、エルティガが指定されました。そしてこのたびバレーノをトヨタ車のスターレットとして、南アフリカを皮切りに販売を開始すると発表しました。

なお、アフリカにおけるトヨタ車の販売は2019年1月に豊田通商に全面移管されていますので、この販売を担うのは豊田通商となります。

アフリカの中古車市場におけるトヨタのシェアは高く、特に東アフリカでは7割以上あるのではと思いますが、アフリカで新車市場が大きくなるのはこれからです。中古車からの乗り換えになることから価格帯が近小型乗用車のラインナップを揃えることは必須です。トヨタの乗用車は今後、スズキの工場で作って豊田通商が売るというスキームで、シェア獲得を目指していくこととなります。


【ガーナ、ナイジェリア、カメルーン】三菱商事が出資するシンガポールの農業商社Olam Internationalが同社開発の卸企業向けアプリをナイジェリアとカメルーンへ展開(9/4)

シンガポールの農業商社Olam Internationalは、ガーナで展開している企業間食品流通モバイルアプリをナイジェリアやカメルーンなど他のアフリカ諸国に展開する。

Olamは、ガーナで子会社を通じて、米や小麦粉、トマトペースト、スナック食品といったパッケージ商品を製造販売している。これら製品を取り扱う現地の卸企業がOlamとの取引において使用するアプリOlam Marketsを開発し、2019年6月より使用を開始した。毎月平均50の卸が使い始め、現在では小売店にOlam製品を卸している卸企業のうち90%がこのアプリを使用している。5日かかっていた取引口座状況の把握が数秒で可能となり、すべてのプロセスで最新の注文の状況を可視化することができる。

(コメント)三菱商事が出資している農業商社Olamは、シンガポールに本拠を置き上場している企業ですが、主要な事業地はアフリカです。アフリカの商品作物であるカカオやコーヒー、コットンやごまやといった農産物を集め、世界に輸出するのが主要事業です。近年は西アフリカを中心に、現地メーカーの買収を重ね、加工食品の製造と販売も事業ポートフォリオに加えています。

このニュースは、そうやって卸を通じて末端小売で販売しているパッケージ商品の販売において、同社が流通管理のために導入している卸向けアプリについてのニュースです。小売の流通管理アプリという領域は、スタートアップの参入も多い領域ですね。Olamのような強いメーカーの場合は、自社発のアプリを提供すれば普及は一気に進むでしょう。配下も自社でコントロールできる企業や国の場合、有効な方法だと思います。


【モロッコ】三井物産が仏EDF Renewablesとモロッコで風力発電所の建設を開始(9/9)

三井物産は、フランス電力(EDF)の子会社EDF Renewableとコンソーシアムを組み、モロッコ北部タザ市に陸上風力発電所の建設を開始した。2020年の操業開始を予定しており、完成時には27基の総発電容量は87.2メガワットとなる。

EDF Renewableが60%、三井物産が40%を出資する。モロッコ国営電力水道公社(ONEE)およびモロッコ持続可能エネルギー庁(MASEN)と20年間の電力購入契約を締結した。この発電により35万人分の年間需要を満たすことができるという。

総工費は1億4,000万ユーロ。国際協力銀行、日本貿易保険、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、モロッコのBank of Africaからの融資を確保している。


【アフリカ全般】アフリカ輸出入銀行が三井物産が出資するアフリカの農業商社ETGへリボルビングクレジットファシリティ供与を承認(9/9)

アフリカ輸出入銀行(Afreximbank)は、アフリカにおける農業生産性向上を目的に、アフリカの農業商社Export Trading Group(ETG)への4億ドルのリボルビングクレジットファシリティを承認した。農家と市場を効果的に結びつけ、生産性向上のために重要な投入材へのアクセスを拡大する。

アフリカ輸出入銀行によると、アフリカには世界の耕作可能な土地の最大60%があるにもかかわらず、食品輸入に2019年で900億ドル以上を費やしているという。国際連合食糧農業機関(FAO)によると、アフリカの農作物は、最適化されていない肥料の使用や収穫後の不適切な貯蔵・加工・輸送設備により、市場に届くまでに毎年最大で50%が失われている。さらに、コロナウイルスの感染拡大がサプライチェーンを混乱させ、価格が上がったことから、家計に影響を与えかねないという。

(コメント)三菱商事がOlamなら、三井物産はETGです。ETGもアフリカで存在感のある農業商社で、商品作物の集荷・輸送や、現地農家への種や肥料などインプットの流通などを行っています。


【カメルーン】豊田通商子会社CFAOが仏大手スーパーマーケットチェーンのカルフールをカメルーンに開店へ。同国3店舗目(9/11)

CFAOがフランスの大手スーパーマーケットチェーンのカルフールを、カメルーンのドゥアラのDouala Grand Mall内に開店する。同国において3店舗目となる。CFAOは、2020年末までにカメルーンにカルフールを5店舗開店させることを目標としている。2020年には、カメルーン初となる同社のディスカウントショップでありキャッシュ&キャリーのSupecoを新設することも発表している。

あわせてCFAOは、2021年の第1四半期には、総額800億CFAフラン(150億円)を投資してヤウンデに大型スーパーマーケットCarrefour PlaYce hypermarketを開店することを予定している。
※1CFAフラン=0.19円(モーニングスター、9/17)


【南アフリカ】NTTグループ傘下南アフリカのディメンションデータが、ヨハネスブルグに新規データセンターの建設を開始(9/28)

NTTグループ傘下の南アフリカIT企業Dimension Dataは、ヨハネスブルグで新たなデータセンターの建設を開始したと発表した。

Johannesburg 1 Data Centreと呼ばれるこのデータセンターは、データセンターの信頼性を実現するためのファシリティ基準であるティアにおいて、全4段階のうちの3段階目にあたるティア3規格に基づき設計されている。2段階に分けて建設され、完工すれば、6,000平方メートルのサーバルーム面積と12メガワットの電力提供が可能な施設となる。第1段階の運用開始は、2022年初めを予定している。

Dimension Dataは、現在、アフリカ全土で最大10メガワットのIT負荷を持つ11のデータセンターを運営している。今回のJohannesburg 1 Data Centreを加えると、NTTのデータセンターがアフリカにおいて提供するIT負荷容量は、あわせて20メガワットを超えることとなる。

(コメント)NTT傘下のディメンションデータが、南アフリカで新たなデータセンターの建築を開始したというニュース。ディメンションデータは、南アフリカ企業であるものの、欧州、アメリカ、アジアと世界各国でデータセンターやSIer事業を展開しており、買収される前はヨハネスブルグ証券取引所とロンドン証券取引所にダブル上場していました(南アフリカ大手企業に多いパターン)。

いまでは、NTTの海外事業・グローバル化における中心的存在です。NTTのはディメンションデータを通じて各地域の企業とアセットを買収しており、ディメンションデータの存在がグローバル化を進めるエンジンにもなっています。

アフリカの現地企業を買収した日本企業としては、コマツや味の素、日本たばこ、電通、関西ペイントなどが上げられます(他にもたくさんあります)。先ほどの三井物産によるETGもそうですね。NTTによるディメンションデータの買収はこれらのなかでも、シナジーの実現や事業ポートフォリオの組み換えへの貢献という意味で、うまくいった買収と言っていいのではないかと思います。

ところで、アフリカの現地にはどのような企業があるのか、買収や提携に適した企業があるのかという問い合わせはよくあります。それら含めて、アフリカで事業を開始されたり新規事業を考えたりする際に生じるあらゆる質問に、スポットで答えるサービスを提供しています。

思い浮かぶ疑問をその場で口にしてなんでも聞いてもらえるような場になっていますので、どうぞご活用ください。答える私の方からすると、いろんな方向から玉が飛んでくる1000本ノックを受けるようですが笑、いまのところ活用された方は驚くほど満足してくださっています。


【ナイジェリア】ヤマハ発動機出資先であるナイジェリアのバイク配車アプリMAX.ngが100億ナイラを目標とする社債発行において初回4億ナイラの売出発行による調達を完了、アフリカにおけるモビリティー企業による初の社債発行(9/28)

ナイジェリアのバイク配車サービスMAX.ngは、100億ナイラ(28億円)を目標とする外貨建て社債発行におけるシリーズ1となる1年満期の4億ナイラ(1億1,000万円)の調達を完了したと発表した。同社にとって初の社債発行となるだけでなく、アフリカにおけるモビリティー企業による初の社債発行となる。
同社は調達した資金を、二輪車や三輪車へのアセットファイナンスに使用する。

今回の初回の社債は売出で発行され、Shall Foundation等が参加した。
※1ナイラ=0.28円(モーニングスター、10/2)

(コメント)スタートアップの調達はエクイティが多いですが、こちらは社債です。10月に豊田通商がウガンダのバイク向けリース・融資を行う企業に出資したので、来月そちらについてコメントする際に、あわせてアフリカのモバイルモビリティーや、バイク事業について、書きたいと思います。

ヤマハ発動機の出資については、こちらで取り上げています。

これまでの「アフリカにおける今月の日本企業の動き」はこちらからご覧ください。

2012年からのバックナンバーはこちらからご覧になれます。

https://abp.co.jp/perspectives/japan/20196.html


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