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2023年10月29日ときじく連句会興行記「包丁の」の巻


金釘流ですみません。

10月29日ギャラリーカフェときじくさんにて2回目の興行。
オーナーの雪子さんと池田一平さんを交えて半歌仙を巻きました。
本来なら順繰りに詠んでいくのですが、句作の機会を増やすためとお二人の色んな句を見たいという私の好奇心もあり、一斉に作りその中からせーので好きな句を指差す多数決でやっております。
以下お二人のサイトです刮目してくださいな。


初折の表
1 包丁の身動きとれぬ南瓜かな    
            菅野潤子 仲秋(南瓜)

2 ふわりと止まる手に赤あきつ     
            一平  三秋(あきつ)

3 山野からひよどり追ひて影追ひて   
           雪子  仲秋(ひよどり)

4 隠家カフェのビール爽やか     
           沙也加  三秋(爽やか)

5 月よりも団子と酔の客集う     
              一平  三秋(月)

6 心も醒めぬ翌朝の頭痛        
                  雪子  雑

初折の裏
1 電源を切って布団へずる休み    
                 沙也加  雑

2 も少し「り」の字のままでいようよ 
               沙也加  雑・恋

3 マイホーム味噌汁あついと笑う君  
                雪子  雑・恋

4 昔のことは隠しうなづく      
                一平  雑・恋

5 座布団を叩いて干せり猫の家    
                  一平  雑

6 鮭かいたずらさてニャンとする   
              雪子  仲秋(鮭)

7 仮装する街見て笑ふカシオペアw  
          雪子  仲秋(カシオペア)

8 杯に映るさかさまの月      
              一平  仲秋(月)

9 エストロゲン減少の故水の中    
                沙也加  雑

10 春海にとどけりオフィーリアの衣  
              一平  三春(春)

11 花のころ石敷の街闊歩して     
             沙也加  晩春(花)

12 初虹の根を探し求める      
            沙也加  晩春(初虹)


解説(というかただのコメント)


いつも(まだ2回目だけど)脇起しで作っているので、例のように発句を『角川俳句大歳時記 秋』入集句から採りました。ハロウィンが近いので雪子さんが「南瓜」を選択。その中でも2つよさげな句があって、私も雪子さんも決めきれなかったので池田さんに最終決断をしてもらいました。

  包丁の身動きとれぬ南瓜かな 
               菅野潤子(桔槹)

かっったい南瓜がむんずとして包丁と格闘している様子が浮かびます。素敵。
池田さんは手の込んだ料理をする方だから、実感の近いお台所の句を選んだのかしらと推測。

加えて本当に偶さかまさかなのですが、発句の作者である菅野さんは私の故郷、須賀川の桔槹吟社にご所属の方でした。びつくり。


初折の表 4・5・6句目


  隠家カフェのビール爽やか 沙也加  
  月よりも団子と酔の客集う 一平
  心も醒めぬ翌朝の頭痛   雪子


この3句どれも付きすぎた感じがあって、「心も醒めぬ」の句が打越と観音開きになっている。と分析してみる。でもいいじゃん、楽しかったんだもの。第三を作ったあたりで、ビールを飲み始めたのでお酒まわりの句が続いたんです。それもまだ午前中。11時50分との記録あり。「え!?」のコメント付きでした(笑) 両親には見せられません。仕送り止められます。
ともあれこれっきっかけに観音開きに気を付けようってことです。そもそも観音開きについて説明していない気がしなくもないような。
あとお酒繋がりでなんですが、頬が赤くなった雪子さんがニコっとすると少女のようでかわいいです。


初折の裏 1・2句目

  電源を切って布団へずる休み     沙也加
  も少し「り」の字のままでいようよ  沙也加

この付合いも付きすぎのような、というか意味は通じているのでしょうかね。初折の裏に入っていたので恋の句を出しましょうと言ったはいいものの、前句が布団ですか。困りました。布団に引っ張られて以下の都々逸を参考に出しました。

川といふ字はそりや後のことせめてりの字に寝て見度みたい

松の屋常磐『芸者虎の巻』(初出かは不明)

国立国会図書館デジタルコレクションにて閲覧可能なので引かせて頂きました。右から5番目です。他にも色んな都々逸が所収されていて、結構面白い。


この都々逸、川の字の前提があるからりの字が効いてくるのだと思うのですがね、こればっかり引いてきてはいかがなものか、それじゃあダメじゃん春風亭昇太ですって感じですか。まあなんでも模倣からはじまるのだし、Google scholarだって「巨人の肩の上に立つ」ってあるじゃない。模倣の練習、そう練習です。
 
解釈について、りの字っていうのがそのまま同衾のことを指しているとも、子どもはまだいいから二人だけの時間をもう少し過ごそうよとも捉えられそうな。どちらも私の句なので解釈というか色々視野が狭まっています。う~ん、意見がほしい。
 
必ず詠み込む句の中で、月花の定座は言ってしまえば「月」「花」の文字を入れればいいのです。でも恋の句はそう簡単にはいきませんね。目に見える形で恋だとわかるような「プロポーズ」とか「キス」とかそれこそ「恋心」のような語句を詠み込めばいいのですが、私自身手持ちが少ないこと少ないこと。毎回同じような言葉を織り込んでいる気がします。

『はなひ草』『毛吹草』など詞寄に記載のある恋の詞や、先達の歌仙の恋の詞を参考にすればいいのでしょうが、現代連句に全て活用できるかってなるとちょっとねえ。私の技量じゃまだ難しい。もちろんこれらの言葉も使えないわけではないし、「宿世」や「後朝」を上手いこと詠み込めたらかっこいいのだけれども、現代の恋に沿った恋の詞寄が欲しいですね。大学のサークルの先生も現代の恋の詞をまとめたいねと言っておられていて、かなり現実にしたいところではある。
と、まあ恋句に文句ですが、他人の恋句を見るのは好きです。


初折の裏 3句目


  マイホーム味噌汁あついと笑う君  雪子

私はこの句にハートで型抜いた人参の句を付けたのですが、その時に話してくださった雪子さんのお台所エピソードが印象的でした。人の作った食事に言いがかりせず黙って食べるのって大事ですね。肝に銘じておきます。


初折の裏 7句目 


  仮装する街見て笑ふカシオペアw  雪子

今回個人的に好きな句の一つ。
打ち込みの際はきちんと半角にしておりますw 
カシオペア座のW字型の星座とネットスラングが掛けてあってこういうのも面白いなあと思いました。ハロウィン感があって当日を思い出す一句。


初折の裏 8・9句目


  エストロゲン減少の故水の中    沙也加
  春海にとどけりオフィーリアの衣  一平

もう一つ、今回好きな付合い。「エストロゲン」の句は説明調になってしまったのが残念ですが、そんなのを忘れさせるくらい付句が好きです。
人名がここまで出てこなかったのをオフィーリアで埋めてくださいました。エストロゲン減少期にナーバスになったのをオフィーリアに見立てて、川から海に衣が流れ着いたとしたところが魅力的。
オフィーリアのといったら、やはりジョン・エヴァレット・ミレイの絵画が想起されますね。衣は朽ちていく主と別れて遂に海までやってきて、川も海も吸ったドレスに以前の美しさはないだろうけど、漂流先の春の海が華やかな雰囲気を持たせているなあと妄想。カタルシスが得られますねえ。


初折の裏 11句目


  花のころ石敷の街闊歩して  沙也加

やってしまった。カシオペアの句に「街」があり、こちらにも「街」。同字三句去りをクリアしている、といっても半歌仙ですから近すぎるきらいがあるような。改めることもできますが、出したのは私なので戒めを込めてこのままで。
 

感想


雪子さんの注いでくださったビールも池田さんの燻製も美味しかったなあ。私は馬刺しチップスなるものをおつまみに持っていきました。久しぶりに会津の馬刺しが食べたい。熊本の馬刺しも食べてみたいなあと言っていたら、どこか旅先で巻くのもいいね、とのご提案が。いいなあ。あちこち観光した後、夕方5時くらいからお酒とおつまみをちびちびしながら句作するの。煮詰まったら卓球したり館内を探検したり…… 
叶えたい夢がまた一つできました。

電子辞書と歳時記を駆使。机の上渋滞中。

その後


11時から始めると大体17時前には巻き終わります。実際の時間経過と体感のちぐはぐが心地いいです。帰り道に四条通りから眺める夕日がこれまた格別。

帰り道今日のことを振り返る。

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