見出し画像

「不毛な会話集」人生の意味(1)

「不毛な会話集」人生の意味(1)


人生においてはあらゆる人物との会話は欠かせない。
しかし、各々の言葉の解釈には差異がある。
天性の能力はさておき、当人の経験や著作から得たものにより人の数ほど違うと言っても過言ではない。
日常会話は誰にでも出来る。しかし、対話となると頗る難しい。
誰でもこのような交わることの無い「会話」は日常的に体験していると思う。


A:おれは「人生の意味」などというくだらぬ事など考えるだけ無駄だね。どうせ死んでしまえば終わりなんだから。生きている内に自分の好きな事や楽しい事をやった方が良いに決まっているだろう。

B: ほう、君がそのような考えに至ったのは何故? では、動物のような生き方と同じでも良いと思っているんだ。

A: 実際人間も動物だろう。生きるって事は弱肉強食じゃないか。周りを見ても誰でもそのように生きているだろう。何だかんだ言っても結局は同じだよ。縄張り争いか自分の為にしか生きていないだろう。生きる意味など考えるだけ無駄だよ。

B:確かに君の言う事は君自身にとってはそうかも知れない。誰でも自分自身の想う通りに生きたいからね。しかし、それでは何のために君は存在するんだね。自分の意志に関係なく偶然に生まれてきたって事かな。

A: そりゃそうだろう。おれは自分が生まれたくって生まれてきたわけじゃない。おれの両親が勝手に作ったんだよ。おれは自分の意志で生まれてきたわけじゃない。こんな子供でも分かる下らんことがお前には分からんのか。

B:君にもう一度聞くけど、君は死んだこともないのに「死」が人生の目的、ゴールだと思っているんだ。

A: おい、お前はいかにも偉そうに言うが、そんなことは誰でも知っている。この世界は諸行無常って言うだろう。後はくだらん人間の空想妄想の類にすぎん。

B:ほう、「諸行無常」などということを言い出すとは、君はどこからそんな情報を得たの?

A:おい、お前はおれを馬鹿にしてるのか。おれだって10代、20代の頃は人生の意味はあるのか、無いのかって考えたことはある。色んな本も片っ端に読んだよ。しかしどいつもこいつも屁理屈ばかりで、自分の都合の良い解釈しかしていない。結局は自分の生き方は自分で決めるしかないってね。

B: 確かに自分の人生は自分自身で決めるしかない。しかし、人生を意味も無く生きることは空しくないかな。君が考えた末にそのように結論付けたのは周りの人々を見た結果の影響じゃないの。君の感情や思考はそれで納得しているんだ。

A: しかし、お前もしつこいな。宇宙の成り立ちから見れば人間の一生などほんの瞬きでしかない。だから、生きている内に人生を楽しく生きなければ何のために生きているのか分からない。よく言う「太く短く」がおれの信条だ。感情や思考などというものは人間が好き勝手に作り上げた実体のない下らん想像物にすぎんし、言葉など記号にすぎない。法律や道徳なども人間が勝手に作ったものでしかない。社会動物と称する人間共が。さらには、芸術というものなどくだらぬ空想趣味でしかない。仏や神など弱者が作り上げた「死」に対する恐怖からだ。塵は塵に、という物質界の法則が全てだ。誰でも自分が欲するものしか欲しない。

B:君がそのように考えているのは君自身の「思考」の結果でしかない。つまり「思考」というものを自分自身が作り上げた「もの」と思っているからだよ。君は君自身の存在すら証明する事も出来ない。「思考そのもの」を私物化しているからだ。殆どの人達はそうだろう。そのような環境、状況ではやむを得ぬ事かもしれないが。

A: 本当にお前は何様のつもりだ。何もかも分かったような面をして。おれに説教じみた事を言うな。おれは腹の足しにもならぬ哲学問答などには興味がない。他の人間共に言ってみるがいい。お前の言うことなど誰が聴くものか。ただ、疲れるだけだ。お前は一人で自分の考えに酔っているがいい。


*この手の会話は果てしなく続き、交わることも無い。

この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?