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物語は勝手に生成される


物語のなんたるかを考えるのに、さいっこうの例をみつけた。


あー、これはすごい。やっぱりやっぱりたらればさん。

時間の流れのなかに、事実を置いているだけなのに。
この3つの出来事は、まったく関係のないことだってわかるのに。
なのになのに、明らかに石原さとみショックで日本経済もアメリカ大統領のダウンしたように見える。
目の錯覚っていうか、頭の錯覚を体験させられた気分だ。トリックはわかっているのに、どうしても矢印の長さが異なって見えるアレ。

はーー。千野帽子さんの『人はなぜ物語を求めるのか』を反芻する。
この事実の羅列、因果関係はないはずなのに、なぜかそこに意味を見出す。事実と事実のあいだを、勝手にストーリーで埋めちゃうという人間の習性。


だってさあ、この文章って10月1日の出来事と、10月2日の出来事並べてるだけなわけだから、石原さとみさん結婚にあたる部分、この日に起きたことならほんとはなんだっていいわけだよね。

たとえば、
「大阪の老婆がカレンダーをめくったその日、東京証券取引所がシステム障害で取引停止となり、翌日アメリカ大統領が新型感染症に罹患した」
「新宿駅に忘れ物の傘が届けられたその日、」
「水族館のイルカが初めて輪くぐりを成功させたその日、」
ほらー、なんか物語が始まった。


人は勝手に、意味をみいだすという話。2020/9/7 ほぼ日糸井重里さんによる今日のダーリンを思い出す。

・たとえば5桁の数字があるとします。
 それは、単純に、00000から99999まで、
 順番にスタンプされたものだとします。

 あなたの受け取った数字が、59875だとしましょう。
 あなたの友人Aさんは、19376でした。
 もうひとりの友人B さんは、77777でした。
 こういうとき、77777がなんだかかっこいいですよね。
 49795だの23900だの、みんなありふれた数字に見える。

 しかし、よく考えてみてください。
 59875 19376 77777 49795 23900
 どれも、ありふれてないというか、
 00000から 99999までの間、
 他にひとつもない数字なんですよね。
 12345だとか、11111だとか、22222だとか、
 なにか意味を訴えかけてくるように思える数字は、
 ありふれては見えないんですね。

 昔からの地名に、おっぱいだとか、天狗だとか、
 なにかに見立てられる山や岩の名がよくあります。
 33333だとか、77777は、それと同じことなんでしょうね。
 人の顔つきやら、姿、個性みたいに言われるものも、
 基本的には、意味を読み取りやすい数字みたいなもので、
 77777を見て「おおっ」って思うのと、
 イケメンや美人さんに「おおっ」と感じるのとは、
 けっこう似たようなことなんじゃないでしょうかね。
 [後略]


石原さとみ結婚も、東証の売買停止も、トランプさんの陽性反応も、ぜんぶが77777だから意味のあるような物語に見えちゃう。

べつに、事実の列挙という点ではさ、「大阪の小市民が靴ずれを起こしたその日、満月が綺麗で、翌日とあるパン屋の解体工事が行われていた」とかでも同じなんだけど、12293 94638 24211くらい意味づけができないから意味がないのだよね。きっと。

うめざわ
*靴ずれ痛い。ほら、トップのヤギの画像。意味ありげに見えるかもしれない。見えるかもしれないが、画像選択画面にていちばん上部に掲載されていたから選んだだけさ。




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