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聴き方・話し方の指導

子どもたちだけで話し合いを進めるには、安心して発言できる教室でなければなりません。子どもたちだけで進める話し合いをしなくても、安心して発言できる教室を作ることは、授業を行う上でも大切です。
私が、安心して発言できる教室にするためにしていることは3つです。
①「わからない」「間違える」はいいことだと言う認識を持たせること
②マイナス発言を許さない雰囲気を作ること
③聴き方・話し方の指導をすること

①②に関しては、こちらの記事で

今回は、③聴き方・話し方の指導についてお伝えします!

1.聴き方の指導

安心して発言できる教室にするためには、発言者が安心して話せるような「あたたかい聴き方」をスキルとして指導する必要があります。
具体的には、
①話す人の方を向く
②最後まで聴く
③頷きながら聴く
④反応言葉を返しながら聴く
などです。他にも身につけさせたいスキルはありますが、とりあえずこの4つを夏休みまで徹底的に指導します。

①話す人の方を向く

まずは、発言者の方を向いて聴くことを指導しましょう。「おへそを向ける」と伝えるとわかりやすいです。また、その時に目を見ることや表情についても指導します。
子どもたちに、「どんな表情で、聴いてもらえると安心できる?怖〜い顔で聴いてていいかな?」と問うと、「笑顔で!」と言う返事が返ってくると思います。人の話をいつでも笑顔で聴く必要はないかと思いますが、安心できる空気が出来上がるまでは、必要なことだと思います。

発言者が立ったら、さっとその方を向けるようにさせたいです。そのために、教師も発言者の後ろに立ち、全員が向いているかを確認します。全員ができていたら、思いっきり褒めましょう。数名できていない子がいても、その子たちを叱るのではなく、できている子たちを褒めましょう。
このやり方は、時間がかかります。なので、算数の式や答えだけを発言する時や新出漢字の熟語を発言する時には行いません。あくまでも、自分の考えを述べる時に発言者の方を向いて聴くよう指導します。
※1・2年生の場合は、練習のために、算数の式や答えだけを発言する時や新出漢字の熟語を発言する時行うこともあります。

②最後まで聴く

人が一生懸命に話している(説明している)のに、それを遮って自分の考えを述べたり、「言ってること訳わからん」と発言内容を否定したりすることは、よくないことです。
なので、「人の話は最後まで聴きましょう。」と指導します。
が、例外はあります。

例えば、
聴き逃してしまったり、発言内容が論点とズレていたりした時には、最後まで聴かなくてもいいと伝えています。

【聴き逃した場合】
「ごめん!初めの方聴き逃したからもう一回初めから言って欲しいです。」

【発言内容が論点とズレていた場合】
「その内容、今話し合っていることとは違うよ。(優しい口調で)」

と言ってあげることは優しさではないかなと思います。これらの例外については、その都度子どもたちには伝えるようにしています。

③頷きながら聴く

人の話を頷きながら聴くことは、大人になってからも大切なことです。
頷くことの良さをまだわかっていない学年の場合は、こんなワークをしてから指導します。

ペアで聴き手、話し手に分れる。
30秒間、自己紹介する。(2回ずつ行う)
聴き手は、(頷かず)真顔で話し手の自己紹介を聞く。
聴き手は、頷きながら話し手の自己紹介を聞く。
聴き手と話し手がチェンジして同じことを行う。

このワークをすれば、頷きながら聴いてもらった方が話しやすいと実感するはずです。

頷くことの大切さが分かったら、発言者の発言内容の句読点のタイミングで頷くように指導します。
普段私たちは、「うん(はい)」と声に出して頷きませんが、安心できる空気が出来上がるまでや低学年の間は、あえて、「うん(はい)」と声に出して頷かせるようにします。

④反応言葉を返しながら聴く

発言者が話し終えたら、反応言葉を返すように指導します。
「いいね」「同じです」「なるほど」など、こちらから型を与えるのでもいいと思いますが、どんな反応言葉があれば嬉しいか、安心できるかを考えさせたいです。
そして、子どもたちにそれらの反応言葉が染みつくまでは、その言葉を掲示しましょう。

〜よくない反応言葉〜

●発言者の意見とは違う時に出る反応言葉・・・
「私とは違う!」「全然違う!」

●発言者の内容がよく分からなかった時に出る反応言葉・・・
「意味わからん」「どう言うこと?」「間違ってるで!!」
など。

初めから否定することはよくないです。このような反応があれば、勇気を出して発言した子も、「もう発言したくない」と思ようになります。

なので子どもたちには、
「自分と違う意見でも、内容がよくわからなくても、まずは受け止めましょう。」と伝えます。

例えば、
◯◯さんの言ってることは理解できたよ。でも、私はこう考えました。〜。」

初めの部分は理解できたんだけど、途中からよくわからなくなりました。もう一回言ってくれる?」

と言うように。

⭐️ここが大事⭐️

①〜④のことを指導したのであれば、教師が意識して(こだわって)指導し続けることがとても大切です。子どもたちに一回言っただけでは身につきません。たまに指導するだけでは、「指導している」にはなりません。
夏休みまではしんどいかもしれませんが、教師が意識して(こだわって)指導し続けることが聴ける集団を育てることにつながります。

2.話し方の指導

聴き方の指導をすると同時に、話し手側にも「分かりやすく伝える話し方」のスキルを指導する必要があります。
具体的には、
①みんなの方を向いて話す
②みんなに聴こえる声で話す
③区切って話す
④反応を確認しながら話す

他にも、「結論→理由の順で話す」「例を挙げて話す」など発達段階に応じて身につけさせたいスキルもありますが、まずはこの4つを夏休みまでは徹底して指導しましょう。

①みんなの方を向いて話す

席が真ん中辺りの子に関しては、「人数が多い方を向く」と指導します。

②みんなに聴こえる声で話す

声が小さい子に関しては、教師が率先して声かけするようにします。話の途中であっても、
「ごめん!もう少し大きい声出せる?端っこまで聞こえないよ。」
とストップをかけるようにします。
初めに「ごめん!」とあえて枕詞をつけます。そうすることで、子どもたちもそれを真似して同じように声かけしてくれるようになります。

どうしても大きい声が出せない子に関しては、聴き手のみんなが近づくように指導します。

③区切って話す

人に分かりやすく伝えるために、「区切って話す」が一番必要なスキルではないかと思います。
上の学年に上がれば上がるほど、賢い子ほど、スラスラと早口で話してしまいます。授業内容が深まるような発言をしても、周りに伝わらなければ意味がありません。
「みんなに分かりやすく伝えるために区切って話そう。」と指導します。
「区切る」と言っても、ロボットみたいに文節ごとに区切る訳ではありません。句読点で、少し間を開けるイメージです。
早口で話している子がいれば、すかさずストップをかけて、「区切って話しましょう。」と声をかけます。教師が見本で言ってあげてもいいと思います。

例えば、

「12ページの5行目を見てください。(間)『ささやいています。』と書いているから、(間)小さい声で読むといいと思います。」

と言うように。

また、同時に、この(間)で頷くことを聴き手に指導します。
「教科書のページを見てください。」の後は、「見ました。」と反応を返す方がいいと思います。

④反応を確認しながら話す

算数の説明など、発言内容が長くなる場合は、一気に全部を話さない方がいいです。要所要所で「ここまで分かりますか?」と確認を取りながら、話すように指導します。
初めのうちは、教師が、発言者に「ここで、確認して。」とストップをかけますが、慣れてくると発言者自身の判断で、聴いている人の表情や反応の言葉聞きながら、
「ここまで分かりますか?」
と言えるようになります。
聴き手の表情をよく見て説明できる子だと
「みんな本当にわかってる?もう一回説明し直した方がいい?」
と言える子も出てきます。

3.なぜこのスキルが必要なのか

なぜ、これらのスキルが必要なのか目的意識を持たせることも大切です。「先生がやれって言うから」とやらされている感では身につきません。特に高学年には、しっかりと何のために必要なスキルなのかを話してから指導することが大切です。

なぜ、これらのスキルが必要なのか?
私は、2つあると思っています。
一つ目は、「安心して発言できる教室を作るため」です。
そして、もう一つは、「将来に役立てるため」です。

職員会議を思い浮かべてみてください。
自分が提案した時に、聴き手にずっと下を向かれていたり、頷きや言葉の反応が返ってこないと、提案内容に対してどう思われているかが分かりません。うまく伝わっているか不安になったことはありませんか?
また、反対意見を述べる場でも、初めから否定的な言葉を使ったり、相手を論破するような言い方をしたりしてしまうと会議が円滑に進みません。
大人でも、頷いて聴いたり、受け止めながら意見を述べることはとても大切です。
これは、きっと他の職業でも言えることだと思います。

その証拠に、書店に行けば大人向けの「聴き方」や「話し方」の本がズラリと並んでいます。大人になってから、そのスキルの大切さに気づく人が多いと言うことです。

そんな自分の経験(職員会議のこと)や思いも子どもたちには話します。
そうすることで、子どもたちは目的意識を持ってくれます。

こんなスライドを使って話すこともあります。

4.最後に

何度も言いますが、これらのスキルが子どもたちに身につくまで、教師が意識して指導し続けることが大切です。根気よく指導し続けることは、とても大変なことです。
ですが、教師がこだわって、指導し続けると話が聴ける集団になること間違いないです。

私が初任の頃、卒業式の練習に参加させてもらったことがありました。その時の6年生は、しっかりと聴ける集団でした。
指導されなくても、校長先生や来賓の方が話すとさっと向きを変え、頷いて話を聴いていました。やらされているのではなく、自然としていることが初任の私にも伝わってきました。その時から、そんな6年生を育てたいと思うようになり、どの学年を受け持っても、「聴き方・話し方」特に「聴き方」の指導はしっかりと行っています。

GW明けからでも遅くはありません。

ぜひ、人の話をしっかりと聴くための、分かりやすく話すためのスキルを伝えてあげてください。

では!🐢

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