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詩集

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これから追加されるとしたらすべて新作です。
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2018年11月の記事一覧

ファミレス

深夜10時のファミレスでぼくは彼女に 「昨日、線路から猫の声が聞こえてね」 というどうでもいい話をしていた 柵に近付いて見てみたら線路の真ん中に仔猫がいたんだよ 枕木と枕木の間に蹲って鳴いていたんだ 柵を登ろうと足を掛けたよ遮断機が下りる音がしたって構わない 助けてあげようと思ったんだだって俺しかいないから 彼女は辛抱強くぼくの話を聞いていた ぼくが正面から向き合ってくれることをこのときはまだ信じて 深夜11時のファミレスでぼくは彼女に 「この間、国道を亀が横断していてね」

交流

ぼくが放った言葉をあなたが受け止め 嫌な感じがまるでない言葉になってあなたからぼくに戻ってきたら それが「交流」の1サイクル あなたから貰った言葉にぼくが親愛の気持ちを ちょっとだけ込めて返したときあなたに笑顔が生まれたら それが「交流」の2サイクル ぼくはどうしようもなく照れてそれでもあなたの手を握りたくて 勇気を出して握ったらあなたも一瞬強く握り返してくれる それが「交流」の3サイクル 言葉も気持ちも行きっぱなしではだめで一方的でも意味がなくて 行ったらあなたから返

ひつじ雲

空を埋めて走る白い羊の群れ 頭の先に茜色が差しているのを見て胸がいっぱいになった 自転車ごとぼくは転がり落ちたようで 大の字になって眺めていたのは土手の斜面から見えたそんな景色 好きな子に告白して真っ直ぐにはっきりと断られた今日という日に とても似合いのフィナーレだなこれは それから何年かして大人になったぼくはまた恋をして また同じように粉砕されて夕暮れの直線道路を車で走っていた 失恋して泣いているときに空に浮かんでいるのは どうしていつもひつじ雲なんだろう茜色まで差