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詩集

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これから追加されるとしたらすべて新作です。
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2019年6月の記事一覧

悪いことを考えよう

悪いことを考えよう 今から悪いことを考えようよ ぼくも考えるから君も ぼくはまず君が死ぬことを考えたよ 次に君と離れ離れになること 君とおしゃべりができなくなることを考えたよ 次に君が悲しんでいることを考えたよ 君がぽろぽろと涙をこぼして ぼくの目の前から去ってしまうことを考えたよ 次にケータイをなくすことを考えたよ 一日中君と連絡がつかなくて 深い孤独に突き落とされることを考えたよ 次にぼくの記憶が全部なくなることを考えたよ 自分が誰なのか分からなくて 誰に会っても

情欲

借りていた本を返したい そんな連絡が君から入っていた そしてぼくは会いに行った 人目を忍ぶような場所を指定して 別れる前にぼくが貸した恋愛小説は 過去の切ない恋愛を二人が乗り越える話だった 悔しさに涙を流す中盤 喜びの涙に変わる終盤 私たちと真逆だったねという君の言葉を このときは軽く受け流したけど ぼくたちは付き合っていた頃のように 本の感想を披露し合った テーブルの上にある弱々しいランプの明かりを挟んで見つめ合った お互いのSNSを見せ合って それぞれ新しい彼氏彼女と

君のすべてを見たい

君は真っ暗闇の中で下着一枚になったことをぼくに告げた 素直に嬉しい気持ちを伝えてはみたけれど 本当は君のすべてを見たい ラブホテルに入れば あらゆる明かりを君が塞ぎ回るのはいつものこと 大画面のテレビを消してスロットマシンの電源プラグを抜く ベッドの操作パネルを毛布で覆い非常口の誘導灯をタオルで隠す ポチっと光る壁のスイッチはその前に洋服まで吊るす念の入れよう わずかな光源も見逃さない君には感心するよ おいでとそばに抱き寄せたのはいいけれど 本当は君のすべてを見たい 君