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詩集

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2019年8月の記事一覧

今朝の雨

雨の音で目覚める朝を幸運に思い 窓を細く開けて寝そべりながら耳を寄せる どんな擬音語も嘘になるが敢えて言うなら今朝の雨はしとしと ひっきりなしに続く柔らかな打音の向こうに静かな広がりを感じるしとしと 心地いい風が顔にあたり素肌をひんやりとさます 雨樋を走る流水は今朝の通奏低音 鳥たち虫たちはどこで雨をやり過ごしているのか すべての雨音を拾いたい 耳を聾さんばかりの激しい土砂降りの雨も まったくの無音で気付けば肩口を濡らす霧雨も 私の心を穏やかにさせる 誰かを思うなら こ

崩壊と進化の前に俺たちは耳を澄まそう

耳に意識を集中させて この街の広い範囲に渡って低く聞こえる音に チューニングを合わせてみろ 拾えたか それが都会の音だ 車の音電車の音地下鉄の音 聞こえるかこの低く唸る音 自動ドアの音エレベーターの音ベルトコンベアの音 聞こえるよなこの機械の音 すべて人間が作った音だ こめかみの両方に指を当てて 遠い昔に出会った最初の音を思い出せ それは声だろ 母親の声だろ 心臓の音が邪魔だな 碁石が転がるように血管を流れていく赤血球の音が聞こえないな こんな風に羊水の中で俺たちは耳を