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詩集

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これから追加されるとしたらすべて新作です。
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2019年12月の記事一覧

隠遁と暗闘のフーガ(それは詩を作る営為)

服を着た生殖器より靴下を履いた生殖器の方がより官能的だろうかそれとも猟奇的か マンホールの梯子を降りていくほつれたジーンズの裾 下水の匂いにジャコウの香りが混じる 連結された核シェルターとは上手く名付けたものだ 暗がりに目が慣れても見えるのは虚無 地上は軋んでいる いくつか歪んだ線を直す作業が必要だ 針金のハンガーを開いて丸くして円に近付ける 生産性はまるでないが行為は正しい さようなら大衆 さようなら少数派 言語野の脳細胞をシャーレに開いて あの日の自分の言葉を探すイ

純化

片思いだった初恋の人が夢に出てきて ぼくと何だかいい雰囲気になっている 会話なんかも順調で二人ともずっと笑顔で 未来には恐れるものは何もなくて この瞬間が幸福の絶頂で ぼくは目の前にあるこの恋を 大事に大きく育てていくだけだった 実際には 何一つまともにしゃべることができなくて 寂しそうな目でじゃあと手を振られて それを見送ったのが最後 詩は降りてくる 夢が届けてくれた儚い想いは 成就した幻という罪でぼくを惑わす 二人の背景は芳醇な花に満たされ 光でできた道を繋いだ手に託

愛され過ぎだろ俺

親友のあいつに恋人ができたのはいいのだが 二人でデートをすればいいのに どうして俺を誘うかな どうして三人でなければダメなのかな 親友のあいつに知り合いの女の子を紹介したのはたしかに俺だが 食事は二人ですればいいのに どうして俺をランチに呼ぶかな どうして三人で食わなければならないのかな おまえがいると彼女と話が弾むんだよ とか あなたがいるときの彼が一番リラックスしていて楽しいの とか言うけど 何か間違ってないか 絶対に間違っているよな? だからさ そうやってときどき二