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詩集

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これから追加されるとしたらすべて新作です。
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2021年1月の記事一覧

君に触れたくても

君に触れたくても 手を伸ばすのには勇気がいります 手を差し出しては頭を掻いて これで九回目の溜め息です 怪訝そうな顔の君に少しおののいています あまり遠慮深いのも男らしくないから 思いきって振られに向かいます 君の顔をちらりと伺ったら さっきよりも怖い顔で睨んでいます 君に触れたい もう少し二人の仲を進めたい 手を握りたい 君の柔らかそうなその手を ああ 恋愛とは心の読み合いだなんて いったい誰の言葉だよ マウントの取り合い そんな言葉を君との間で使いたくないん

一人から始まる

灰色の空でも新雪は白くて 躓かないように歩く雪の参道 石灯籠の後ろに散らばる赤い点 あれは南天の実か 着膨れの初詣 黒タイツの脚だけが細い 誰にも気兼ねのいらない格好で いつでも鼻水をグスンとすすれる 一人がいい 一人が一番楽 二礼二拍手一礼 おみくじに良縁ありの文字 気付けば願いを込めて結んでいる この気変わりの早さよ お正月は白と赤でできている 破魔矢を買ったあと 巫女さんの白い着物と 緋色の袴にしばし見惚れる 弾むように歩く帰り道 一人だから雪道でスキップもでき