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詩集

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これから追加されるとしたらすべて新作です。
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#雨

連想遊び

少し遅れるという連絡をもらったので カフェラテのミルクの上澄みを啜ってぼんやりと窓から裏通りを眺めている 雨音は聞こえないのに頭の中ではちゃんと雨音が鳴っていて 人は頭の中で何かを再生して記憶を補強しているのかも知れないと思う 今日は「り」と聞いて「理」の字が思い浮かんだ 昨日は「り」と聞いて「利」の字が思い浮かんだ どちらも同じ自分だけれど何かが違うのかも知れない 「しん」と聞いて「深」と「森」が思い浮かぶ自分は 「しん」と聞いて「真」と「新」が思い浮かぶと言ったあの人

初恋がわからない

いい年をして初恋について考えていた 雨宿りのために入った薄暗い無人の駅舎で 窓ガラスに顔を寄せて通り雨を眺めていたら なぜか昔仲良くしてくれた女の子たちのことが思い浮かんだ けれどもどれが初恋なのかわからない 可愛いと思ったから恋なのか ずっと一緒にいたかったから恋なのか ひと時も忘れられないから恋なのか 嫉妬したから恋なのか 通り雨が蚊柱のような姿で街路を黒く塗り替えるのを見ていた 雨音は記憶にあった彼女たちの声をかき消しただけでなく 音だけでぼくの首筋の体温をさらって