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小学生の頃から白髪があった。 抜くと増えるといわれているが、特に抜かなくても白髪は少しずつ増えていった。二十代のはじめ、私はコツコツとひとりで詞を書くことを趣味にしていたが、言葉数を揃えて作品にするという作業は毛髪の色素幹細胞に過大なストレスを与えたようで、その頃から急速に白髪が激増した。晩年のマリー・アントワネットはこんな気持ちだったのだろうかと鏡を見るたびに思った。 新規で通い始めた理容室で、白髪をカラーで染めることを勧められたのもその頃だった。白髪だけをブルー
テレビを観ていた妻が、突然わっと小さな悲鳴を上げて、キモっ、と呟きながら、すぐ横にいる私に「見て見て!」と、袖をまくって自分の腕を近付けてきた。妻が私に見せようとしているのは、たった今、自分の腕に発生したばかりの鳥肌なのである。 よくあることだった。私は妻が、またテレビで「何か」を見付けてしまったのだなと思った。 「ちょっと、今の何? ゾワゾワする……」 妻は自分の頬を両手で挟み、身震いを抑えながらテレビ画面を凝視していた。私はそんな妻の腕の表面に現れた鳥肌をしげ