島田雅彦『彗星の住人』《砂に埋めた書架から》52冊目
島田雅彦が挑む二十世紀の歴史。それは今まで誰も書いたことのない、恋愛小説として立ち現れてきた。
『彗星の住人』は、百年にわたる一族の宿命とも言える恋の物語である。しかも、その恋の仕方は、遺伝子のように代々受け継がれ、いずれもその恋が成就することは、国家レベルの危機を招くことになるという恐ろしいステージにある恋愛なのだ。
このような恋を発明できるのは、島田雅彦しかいないのではないか。
駐留米兵と蝶々夫人の悲恋から始まる一代目。マッカーサーの愛人を寝取った二代目。そし