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再投稿のお知らせと十六年前のカメラ【エッセイ】

 写真が好きである。

 noteで「#写真が好き」というお題の募集があり、二年近く前に自分が書いた小説のことを思い出した。そこに出てくる主人公は、まさに私自身である。一眼レフのカメラを買って、撮るのが楽しくて、常に持ち歩いていた頃の自分である。同じ観光地に何度も出掛けて、同じ写真を何度も撮っていた自分である。

 堀江敏幸の『本の音』という書評集を読んでいたら、その中に(一眼レフという「生首」を手にした者が……)という表現が出てきた。この一文を目にしたとき、ああ、自分が肩から提げたり、手でつかんだり、バッグからごろりと取り出したりしているあれは「生首」だったのだ! と思って納得した。濡れたような光を宿す大きな瞳を持ち、ものこそ言わないが綺麗な画を吐き出すあれは、自分にとっての愛しい生首に違いない。

 私が一眼レフのカメラを買ったのは二〇〇七年の晩秋だった。見ず知らずの人が書いたブログを読んでいて、そのブログ主がニコンのデジタル一眼レフを買ったという報告をしていたのだ。そして、次の投稿から綺麗な写真がアップされるようになった。その写真は、自分が持っているコンパクトデジタルカメラでは到底写すことのできない見事な作品だったのである。

 それ以来、私は一眼レフカメラを夢見るようになった。大きくて重い。それに高価。果たして自分はそれほどまでに写真を撮ることが好きだったか? といろいろな不安要素はあったが、思いきって買う決心をした。ちょうどその頃にテレビで見かけていたキヤノンのCMが、私の気持ちに拍車を掛けたのも大きかった。


■Canon EOS 40D


 私はこのCMの渡辺謙のように、美しい風景を撮ることに憧れたのである。

 実際に買ったのはニコンのD80という機種だった。今から十七年前に発売されたデジタル一眼レフだ。ISO感度が1600までしかないので、手持ちでの夜の撮影はほぼできない。今ならスマホの方が遥かに写りがいい。ただ、ニコンの一眼レフの中ではCCDセンサーを採用しているため、発色の良さや透明感に定評があり、現在もこのカメラを愛好する人がいるようである。

 結局、私も十六年使っている。ときどき表示にエラーが出るなど、動作がおかしいときもあるが、最期まで使ってあげたいと思っている。

 このカメラで撮った写真をふんだんに使った自作の短編小説『二の坂』を、「#写真が好き」の企画が始まったのを機に、タグを付けて再投稿することにした。過去作だが、この作品ほど写真が好きという気持ちが表れているものはないように思う。形式は小説だが、主人公は自分に近いし、実話エピソードも多い作品である。再投稿にあたって、新たな写真を十枚追加した。
(すでに小説をご存知の方は、写真だけでも見て下さると嬉しいです)

 短編小説『二の坂』+写真は、明日投稿します。


〈参考動画〉

■Nikon D80

(木村拓哉がCMをしていることは、カメラを買ってから知ったので驚いた。格好いいと思った)




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