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劇場版「鬼滅の刃」心を燃やせ、煉獄杏寿郎の魅力と絶望について

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劇場版「鬼滅の刃」ネタバレなし。
煉獄杏寿郎の圧倒的なリーダーシップに、みんな惚れ惚れしてしまう。
緞帳が下りると、なぜかラピュタを見た後のあの鬱感を思い出した。
当時まさに中学2年の思春期真っ只中で見たラピュタの冒険活劇は、脳天をかちわり、ありとあらゆる憧れのすべてを満たしてくれた、シータとパズーに対し、その後の夏休みを這って過ごしたあの暑い日々の思い出がよみがえった。

鬼滅の刃の人気は、絶望の中にしか存在できない美しさを体験できること。なんじゃなかろうか。
得にこの劇場版「鬼滅の刃」の煉獄杏寿郎のストーリーは、人間が持つ最強の依存性と麻薬性を併せ持った、廃人養成ストーリーなのだと感じた。その証に、エンドロールが終わってもみんな席を立たず余韻に浸っているようだった。

ラピュタでも、一人孤独に暮らすパズーの、親が死ぬ原因となったラピュタ探索という絶望の中からの話。今思えば、え?それで見つかるの?って思わない?あの変な飛行機作ったりして。

同じく、ラピュタ帝国を担うという絶望をムスカに押し付けられることになる、悲運を背負った少女シータとの出会い。それにまとわりつくもし出会ったら絶望しか感じられないだろうその瞬間をまばゆく生きる海賊ドーラ一家との対峙。彼らの三つ巴の友情は、まさに絶望の中にある美しさの典型。ゆえに私は中学2年にして鬱状態になった。マジでリアルに。

ジブリはことごとく絶望を国民に振りまき圧倒的なシェアを獲得してきた。
地球崩壊という絶望を背負ったテーマの風の谷のナウシカ。
自然を無我夢中で破壊する人間。という絶望的なエゴを背負わされたサンにアシタカ。
千と千尋も、もう二度と元の世界には戻れないという絶望の世界での心葛藤を描いていた。よね?だよね?
ジブリ確信犯。

それにこの映画の食後感は、戦争映画の中での儚い物語も思い出す。アメリカ兵はどんな極限の戦地へ行っても、どんなに怪我をしてもまた戦地のみんなの元に戻りたいと苦しむようだ。アメリカのドラマでは、よくそのようなモチーフが採用されている。

社会現象になった「LOST」の主人公ジャックも、無人島に墜落飛行機の中型生還し、謎の組織に翻弄され命からがら内地に戻るのに、あの島に戻りたいと焦燥感に駆られてしまう。

ブラザーズ&シスターズでも、末弟のジャスティンは、アフガニスタンやイラクと二度戦地に赴き、最後は膝を破壊されて戻ったものの、愛する妻を置いてまた戦地への依存を払拭できず戻って行った。

そしてガンダムもそうなんだよね?
戦争という絶望の中に光る少年たちの絆や心の揺れ動き。そしてアムロのもう戻れないと思ったところでのホワイトベースの乗組員に救護される最終シーン。あれ泣いたでしょ?泣くでしょ?

まさに絶望ビジネス。もう〜絶望だ。

そして鬼滅の刃も「鬼」という圧倒的強さの前に、ただ喰われるしかない人間の、恐怖に包まれた絶望の世界の話。
そこで登場する鬼殺隊という鬼狩り組織。
彼らはまさに、勝ち目のない人間の、ただ逃げるだけの絶望の世界の一縷の光。
鬼殺隊の中でも圧倒的強さを誇り、生きる伝説かのような強さを誇示する「柱」の面々。
これってもはやウルトラマンの世界だよね。
あの怪獣に襲われるという絶望の世界の宇宙からの一縷の光。国民総立ちで依存させたウルトラマンという圧倒感。

煉獄杏寿郎はまさにウルトラマンである。

劇場版「鬼滅の刃」でのシェア率ナンバーワン、もう一人の主人公「煉獄杏寿郎」(映画ではほとんど彼が主役)の炸裂する、炎を纏う剣術。それに、有無を言わさないまさに竹をカチ割ったようなブレない物言い。
そして何としても任務を全うすることだけを考える実直さ。その任務とは、ただただ人が殺されることだけはあってはならないという一本気な目的。
一瞬で心を奪われたのは私だけではないはず。

この映画がこれだけ圧倒的に国民に引き寄せられているのは、今の日本のリーダーシップの渇望感ただその一言だと思う。
みんなあんなリーダーを待っている。強くてまっすぐでブレなくて、そしてみんなを守りたいという熱い思い。

絶対に日本の政治からは現れないような逸材を目の前にし、アニメだろうと国民は狂騒しているのだと思う。

止めは煉獄杏寿郎の代名詞的となっている「心を燃やせ」
信頼できる心優しく強いリーダーにそんなことを言われたりしたら、僕らはきっと人間の底力を一気に吐き出すとともに、自分の人生を明るく可憐に心強く全うできることだろう。

もういいから観に行って。
ストーリーなんかいいから煉獄杏寿郎の戦いと彼の言葉だけで心奪われるから。


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